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定例記者会見 「精神科医療に対する参議院予算委員会における質問・答弁について」 ―三上常任理事 |
同常任理事は、議員からの、「統合失調症という疾患に関して、日本は圧倒 的に薬剤を多く使う」との指摘に対する大臣の、「自殺をされた方のかなりの 部分が向精神薬を過剰に摂取されておられたと、こういうデータもある」との 発言に触れ、当該データとは、「平成21年度厚生労働科学研究費補助金(こ ころの健康科学研究事業)『心理学的剖検データベースを活用した自殺の原因 分析に関する研究』」における研究結果、ならびに、「自殺予防と遺族支援の ための基礎調査」における調査結果を指していると思われるが、本研究は限ら れた76名の自殺既遂者を対象とした調査に基づくものであり、また、同調査 研究報告書では、「過量服薬」について、「死亡時に向精神薬を医師の指示よ り多く服用していた者」と定義しているが、向精神薬の種類や具体的な分量等、 詳細な定義はなされていないと述べ、これらのデータのみを根拠に発言される ことは適当でないと指摘した。 また、平素より、大多数の医療機関において、向精神薬の適切な処方、なら びに自殺対策への適切な対応がなされているのにも関わらず、大臣の、「うつ 病についての薬漬けの問題」、「認知行動療法という薬漬けによらないような 方法」など、「薬漬け」との発言は、精神科医療に対する不安を助長し、医療 機関への信頼を失わせることになりかねないと述べた。 さらに、議員からの、「カウンセリングをやっても本当に収入にならない。 勢いどうなるかというと、薬を使わざるを得ないという現状がある」との指摘 に対する大臣の、「薬からやはりそういう薬を使わない療法というのにも注力 をしていくということで、一定程度その流れを4月の診療報酬改定で変えた」 との発言について、「軽度、中等度のうつ病、あるいは一定の症状に対しては、 認知行動療法は有効であるが、これが重度のうつ病になると、向精神薬での治 療が不可避である。うつ病への対応としては、個々の患者の特性に応じた、精 神科医の判断による最善の治療が行われるべきであり、いたずらに認知行動療 法へ誘導することは、現場の混乱を招きかねない」としたうえで、「内科等の かかりつけ医による早期の発見と専門医との連携が重要であり、このことを主 張されるべき」とした。 そして、同常任理事は、社会問題化している「うつ・自殺」への対策にあた っては、広く精神科医療の現場の声に真摯に耳を傾け、適切な対応をとられる ことを強く望むと結んだ。 ◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第三課 TEL:03-3946-2121(代)
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