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第2回医療政策会議 「『産業化』の意味を考える」と題して田中議長が講演 |
冒頭、原中勝征会長が、「先般、内閣改造が行われたが、新しい大臣と副大臣が就任のあいさつに来ることになっている。医師会は地域医療を守るために努力してきたが、医療費削減のために病院と診療所が対立させられたことの誤解を解く努力をしなくてはいけない。医学部新設の動きにも慎重な対応を求める」と述べた。 当日は、田中滋議長(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)により、「『産業化』の意味を考える:会長諮問を討議するにあたっての共通基盤を築くために」と題する講演、及び質疑応答が行われた。 田中議長は、会長諮問「医療を産業化していいのか」における“産業化”について、「ここでは“営利産業化”という意味で使われているが、そうすると、『医療の営利産業化』は拒否すべきであるということで、簡単に政策会議の意見統一が出来てしまう。しかし、社会科学で“産業”は中立の用語であり、働くとか経済活動を正当に行うという意味の“産業”もあることを知っておかないと、無用な軋轢を生みかねない」と述べ、産業分類を用いて、価値判断を伴わない“産業”の概念を説明した。 次に、経済における「生産」「分配」「支出」という3つの側面を示し、税金、社会保険料という形での「再分配」によって医療は成り立っていることの重要性を強調した。効率性については、技術的効率性、資源配分の効率性を追求するための産業であれば納得出来るが、経済的効率性は医療にはそぐわないと指摘した。 また、資源配分については、「何を」「どれだけ」「誰のために」「どのように」分けるかを4要素とし、市場経済に基づく資源配分、公助と共助による再分配などの論点から医療についての考えを述べた。 さらに、議論に混同を招きやすい用語として「営利組織」と「非営利組織」を挙げ、定義について、営利組織とは、出資者の利得最大化を存在目的にするのに対し、非営利組織とは、目的が多様であるため営利組織以外としか言いようがないとした。 非営利組織については、同窓会やテニスクラブなど仲間の福利を目的とするものと、大学、医療機関、国際援助団体のように外部に貢献することを目的としたものとに大別。ただし、医療・教育・保育などは、財サービスの提供に比例して収入が上がるため、「“公益性が高い”と言えるが、まさに産業性がある」とし、位置付けの難しさに言及した。 最後に同議長は、「諮問の意味の“産業化”(営利産業化)は、需要者間の敗者が生まれ、患者さんが差別されるので、資源配分上好ましくない。社会の成り立ちにとって公正でないと考えられるので、拒否すべきである」と強調し、医療は、産業的な側面を持つなかで、経営戦略や管理技法等の効率化を図りつつ、より公益性の高い非営利の姿勢を保つべきであるとした。 このほか、「医療ツーリズム」について川島龍一委員(兵庫県医師会長)、「『新成長戦略』と『医療産業研究会報告書』」について二木立委員(日本福祉大学教授・副学長)、「経済財政の中長期的試算」について権丈善一委員(慶大商学部教授)が、資料を基に概況を述べた。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代) |
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