白クマ
日医白クマ通信 No.1341
2010年10月21日(木)


定例記者会見
「日本脂質栄養学会のガイドラインに異議」
―原中会長

定例記者会見


 原中勝征会長は10月20日、久史麿日本医学会長、寺本民生日本動脈硬化学 会副理事長とともに記者会見を行い、日本脂質栄養学会が発表した『長寿のた めのコレステロールガイドライン2010年版』に対する日医の見解を明らかにし た。

 同ガイドラインは、日本脂質栄養学会が9月1日に発表したもので、そのな かには「コレステロール値が高い方が長生きする」との記述があったことから、 医療現場に混乱が生じ、日本動脈硬化学会からは、北徹理事長名による「科学 的根拠がなく、必要な患者の治療を否定するもので容認出来ない」旨の声明が 10月14日に出されていた。

 当日の会見では、まず、原中会長が、「今回の内容をめぐる一部メディアの 報道により、一般国民のみならず、患者、家族に大きな混乱が生じ、高いリス クをもつ家族性高コレステロール血症の患者のなかには服薬を中止している例 もあると聞いている」として、今回の事態に憂慮を示し、国民に正しい理解を してもらうため、本日は記者会見を開催させてもらったと述べた。

 そのうえで、原中会長は、ガイドラインの内容に関して、「あくまでも治療 は学問的な根拠に基づいて行われなければならないが、このガイドラインには 問題も多く、健康社会の実現を目指す日医としては看過することは出来なかっ た」として、その内容に異議を唱えるとともに、マスコミ各社に対しては、健 康・医療に関する報道についての配慮を求めた。

 一方、久日本医学会長は、血清コレステロール値のみを取り上げて総死亡 率を論じている今回のガイドラインの内容に疑問を投げかけたうえで、日本医 学会臨床部会運営委員会の委員に本件に関する意見を聞いたことを明らかにし、 「日本医学会として、今回のガイドラインは明らかに間違いであると指摘した い」と強調した。

 また、寺本副理事長は、日本動脈硬化学会の声明を基に、今回のガイドライ ンの問題点(1)科学的根拠に乏しいものをガイドラインと呼んでいる、(2)観察 研究であるコホート研究において、血清コレステロールと総死亡との関係を論 じている、(3)コホート研究と臨床介入試験との違いを混同している―を改めて 指摘し、学会の主張への理解を求めた。

◆問い合わせ先:日本医学会 TEL:03-3946-2121(代)
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