白クマ
日医白クマ通信 No.1361
2010年12月10日(金)


医療政策会議
「医療の産業化について委員が講演」

定例記者会見


 第3回医療政策会議が11月26日、日医会館で開催された。

 冒頭、原中勝征会長があいさつに立ち、「経済状態が悪いなか、医療を取り巻く環境も非常に悪化している。このようなとき、本来のあるべき医療を崩壊させるような事案が続出している。日本医師会は、声なき国民の代表として国民のための医療を守っていくことを基本的な姿勢としている。そうしたなか、医療費の問題、財源の問題について日医として提言をしていかなければいけないということで、この度、公的医療保険制度の全国一本化を段階的に進めようという提案を行ったところである。資料は、全国会議員を始め、関係各方面に送付したところであり、様々な意見を検証して、日医としての活動につなげていきたい」と述べた。

 当日は、桐野高明委員(国立国際医療研究センター総長・理事長)の講演「医療を産業化させていいのか」と質疑応答が行われた。

 同委員は、政府の「新成長戦略『元気な日本』復活のシナリオ」を取り上げ、医療・介護・健康関連産業が成長牽引産業に位置付けられていることに対し、「正面から『産業としての医療』に向き合うのであれば、新薬の開発・医療機器の開発に本気で取り組む。それも、保険医療制度を破壊せずに、国民にとって広く受け入れられる開発方式を工夫するしかほかはない」とした。

 また「医療産業研究会報告書」について、「社会の需要は、医療でも介護でもない周辺サービス(第三の分野)に対する期待が高まると分析されているが、民間事業者やコミュニティビジネスが医療の周辺の部分を担いながら、拡大をしていくということは、医療・介護機関の収益が他へ流れることになる。医療費全体を抑制することは出来ず、医療サービスの負担の一部を民間部門に付け替えるということであり、結局のところ、平等性を犠牲として自由と快適さを選択するということになる」と述べ、先端医療ではない、生活に密接に関わる医療サービスを、最も医療に近い医療機関そのものが提供できるような仕組みが必要であると強調した。

 メディカル・ツーリズムについては、「医療の国際化が進むことを否定する理由はまったくないが、それが国の基幹的な産業の一つになり、経済が潤うというのは幻想ではないか。それは、それぞれの医療機関が自分の判断に基づいてリスクを負って行うべきことで、国が責任を負うべきことは他にあるはずだ」との見解を示した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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