白クマ
日医白クマ通信 No.1368
2010年12月20日(月)


定例記者会見
「消費税についての問題提起」
―中川副会長、今村(聡)常任理事

定例記者会見


 中川俊男副会長と今村聡常任理事は、民主党が6日に取りまとめた「税と社 会保障の抜本改革調査会『中間整理』」を受けて、12月15日の定例記者会見 で、消費税の目的税化に慎重な姿勢を示すとともに問題提起を行った。

 中川副会長は、『中間整理』における「消費税を社会保障の目的税とするこ とを法律上も、会計上も明確にする」との文言を注視。まず、消費税収(国 分)は、国の一般会計予算総則で、後期高齢者医療、介護、年金の国庫負担分 に充てられることが決められているため、財務省が「福祉目的化」と呼ぶ現在 の消費税のあり方と、税法で使途を定める「目的税」の違いを説明した。

 消費税を目的税化しても、法律上は使途を決めるに過ぎず、不足分は他の税 収や公債で埋めることが可能だとしたうえで、運用上のメリットとして、(1) 世代間格差が是正出来る、(2)景気に左右されにくい安定的な社会保障財源に なる―との点を挙げた。

 一方、デメリットとしては、(1)社会保障が既得権益化し、財源に合わせて 新規事業を起こし支出をしてしまう、(2)消費税が不足した場合には、消費税 率を必ず引き上げるというルールが組み込まれる恐れがある、(3)消費税率を 引き上げる環境にないという理由で、社会保障費が抑制されかねない―との点 を挙げるとともに、すでに、消費税率を引き上げて、雇用や少子化対策に充て てはどうかとの声があるとして、新たな事業の立ち上げを懸念した。

 同副会長は、「当面は、消費税率をかなり引き上げても、社会保障費の方が 消費税収より大きいので、既得権益化するような心配はない。そうであれば、 あえて目的税化せず、現在の福祉目的化という緩い仕組みで良いはずである。 仮に、消費税の目的税化が、将来の社会保障費抑制を企図したものであるとす れば、日医はその方向性に反対せざるを得ない」と指摘し、国と地方の消費税 収の配分、社会保障の役割分担にまで踏み込んで議論することを求めた。

 続いて、今村(聡)常任理事が、医療機関のいわゆる“損税”の問題につい て、「従来、日医は税制改正で、軽減税率あるいはゼロ税率という複数税率を 要望していたが、平成23年度の税制要望では、課税制度にして控除出来る仕組 みとし、かつ患者負担を増やさないよう要望している」と説明。

 『中間整理』では、「逆進性」(高所得者層より低所得者層の方が所得に比 例した消費税の負担が高くなる)の対策が必要となった場合について、「制度 が複雑となり、また政治的な要因が働きやすい『複数税率』よりも、制度が簡 素で、透明性の高い『還付制度』を優先的に検討する」と記されていることを 取り上げ、「日医の提案は、民主党の調査会の方向性と同じであると考えてい る。したがって、消費税率を上げていくということであれば、この方向で早急 に解決を図っていただきたい」と要請した。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
◇関連資料はこちら⇒PDF(33KB)参考(内閣官房HP)


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