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定例記者会見 「各都道府県における医療ツーリズムの動向」 ―高杉常任理事 |
日医は、「医療ツーリズム」について、これまでの定例記者会見で、「足下の深刻な医師・看護職員不足からくる医療崩壊を食い止め、地域医療を確保することが最優先の課題である。諸外国の医療ツーリズムの現状も踏まえて、慎重に検討すべきであり、現時点で検討に着手することは認められない」との見解を早々に示し(2010年4月14日)、その後も、混合診療の全面解禁への後押しになり、国民皆保険制度の崩壊につながるとして、医療ツーリズムに対する反対の姿勢を明確に示してきた(6月9日)。 一方で、6月18日に閣議決定された「新成長戦略」では、国際医療交流の一環として2012年から外国人患者を本格的に受け入れることが示され、これを受けて、厚生労働省は、2011年度予算の概算要求に、外国人患者の受け入れに資する医療機関の認証制度の整備を掲げ、各都道府県では、独自の取り組みを検討、実施するなど、「医療ツーリズム」へ向けての動きが急を告げている。 日医では、各地域における医療ツーリズムへの間違った認識から来る期待、そして地域医療の崩壊が現実の問題となっている状況において、医療ツーリズムについての具体的な検討が始まっていることを危惧。そこで、各地域における医療ツーリズムへの取り組みを、改めて把握することを目的とし、昨年11〜12月にかけて、47都道府県医師会を対象に、(1)各都道府県における医療ツーリズムに関する動向[1.検討および実施主体(行政、民間病院グループなど)、2.進捗状況、3.各都道府県医師会との関係、4.目標および実現可能性]、(2)医療ツーリズムに対する都道府県医師会のコメント―について調査を行った。 調査結果「総括版」によれば、医療ツーリズムに関する動向として、「具体的な動きあり」が22、「漠然とした動きあり]が8、[不明・なし」が17。また、医療ツーリズムに対するコメントとして、「明確に反対」は28、「どちらかと言うと反対」が6と、「反対」が合わせて34、[中立]が7、[コメントなし]が6であった。 今回の調査結果からは、日医の見解に賛同して医療ツーリズムに反対するという意見が多く見られ、また日医が率先して国に進言して欲しいという強い要望もあった。主な反対理由としては、「混合診療の全面解禁につながる」「国民皆保険制度の崩壊を招く」「地域医療の崩壊を招く」「医療機関格差、地域間格差、所得格差などが助長される」「医療の営利産業化・市場原理の導入につながる」などが挙げられ、先端医療特区構想がある兵庫県からは、「医療ツーリズムの事業展開は地域医療体制整備の障壁となるばかりか、医療本体への営利企業の参入を契機として混合診療拡大につながり、国民医療の平等性・非営利性を著しく損なう『亡国のシナリオ』である」との回答が寄せられている。 今回の調査結果を受け、高杉常任理事は、「日医として、医療ツーリズムの動向が全国的な広がりを見せていることを改めて認識し、その流れを食い止めるべく、当該資料を政府への提言等、ロビー活動に活用するほか、都道府県医師会においても、地元選出議員との議論に資する資料として提供し、国民医療を守る姿勢を強めていく」との考えを示した。 なお、詳細は、日医ホームページ「定例記者会見」資料「各都道府県における医療ツーリズムの動向 詳細版」(下記関連資料)を参照のこと。 ◆問い合わせ先:総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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