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第3回第XII次生命倫理懇談会 「人体の不思議展」や「遺伝子検査」の問題点などについてヒアリング |
冒頭、原中勝征会長があいさつに立ち、「科学の発達とともに、新たな倫理的問題も生まれている。遺伝子検査は、病気の予防や治療などの面での活用は大変ありがたいものだが、生命そのものの原点も見直さないといけない。『人体の不思議展』に関しても、生命倫理の観点からもう一度考え直さないといけない時期に来ている」と述べ、有識者からの意見に期待を寄せた。 議事では、末永恵子福島県立医科大学医学部人間科学講座講師が、「『人体の不思議展』の問題点について」と題し、同展の概要を紹介。「人体の不思議展」では、プラストミック加工され、ホルマリン臭がなく、常温保存可能で手で触れることが出来る標本となった人体を、日本全国を巡回して一般公開している。 末永氏は、倫理的な問題として、(1)弓を引くポーズを取らせたりするなど死体の尊厳を冒している、(2)医学的知識の啓発を謳っているが、教育的効果が不明確である、(3)標本は献体であるとしているが、プラストミック標本として展示することの同意まで行われているのか。胎児や、胎児を宿した妊婦も含まれるなど、献体者の自己決定が疑われる―等の点を挙げ、献体の商業的利用や死体標本の売買に警鐘を鳴らした。 また、同氏は2006年には仙台で「『人体の不思議展』に疑問をもつ会」を発足させ、主催者や後援団体への公開質問状の送付、反対の署名活動を行ってきたことを紹介。医科系大学や特定の病院以外で死体を保存する場合、遺族の承諾を得て、都道府県知事や市長、区長の許可を受けなければならないとする「死体解剖保存法第19条」に抵触するとして、主催者を開催県の警察に刑事告発し、この法令の見解について、厚生労働省と意見交換する場を設けたことも報告し、「死体、生体を含め、人体を利用するためのルール作りを根本的に行う必要性がある」と主張した。 質疑応答のなかでも、人体の尊厳という基本的姿勢に立って、わが国の人体に関する法整備について十分議論し、日本医師会、日本医学会が見識を示すべきとの意見があった。 つづいて、福島義光日本人類遺伝学会倫理審査委員会委員長が、「一般市民を対象とした遺伝子検査に関する見解」と題して講演した。同氏は、まず、さまざまな遺伝子検査のうち、感染症の診断や体細胞遺伝子の後天的な変異の解析を「遺伝子関連検査」、生涯不変で血縁者で共有されるような遺伝子情報の解析を「遺伝学的検査」とする定義を説明したうえで、近年は遺伝学的検査が、単一遺伝子疾患の診断、染色体異常症などの治療だけでなく、肥満や運動能力、生活習慣に関する“体質診断ビジネス(DTC遺伝学的検査)”や、子どもの才能診断など、医療以外のサービスとして行われていることを報告。DNAは、採血等の医療行為によらずとも、毛髪、爪、頬粘膜等の採取で得られることから、医療機関を通さず、直接消費者に遺伝学的検査サービスを提供する企業が現れるなど、有用性が明らかでないことや、個人情報の保護の面での問題を指摘。医師や歯科医師を対象に、唾液や頬粘膜で体質を診断し、病気に対する啓発をする専門家として“ゲノムドクター”が養成されていることにも疑問を呈した。 福島氏は、安易な遺伝子検査を大統領令により禁止している韓国の例を挙げるとともに、日本人類遺伝学会が、差別や偏見を生み出しかねない遺伝子検査について、監視・監督する体制の確立を求めた提言をまとめたことを紹介し、日医の対応も求めた。 質疑応答では、科学的根拠に基づいた遺伝子検査は有用とする一方、遺伝子診断ビジネスに対しては規制するべきだとの発言が多く出されたほか、オブザーバーの澤倫太郎氏が、日本における人体研究及び人体臨床応用の規制について、組織・臓器や目的ごとに細分化された指針や法律が定められている現状を明した。 ◆問い合わせ先:日本医師会企画課 TEL:03-3946-2121(代) |
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