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定例記者会見 厚生労働省「社会保障制度改革の方向性と具体策」に対する日本医師会の見解(第一報) ―中川俊男副会長 |
同会議では、厚労省案を踏まえ、財源の問題も併せて検討し、6月末にも社会保障と税に関する基本方針を取りまとめることとしているが、厚労省案について中川副会長は、「厚生労働省案は『議論のたたき台』に過ぎないが、それを考慮しても、内容の多くはこれまで日本医師会が問題点の指摘を行ってきた過去の提案の繰り返しであり、失望している。さらに、東日本大震災からの再建に乗じて、国家として責任を負うべき社会保障を後退させようとする姿勢が垣間見えることに憤りを禁じ得ない」と批判。 厚労省案では、被災地の復興に関し、民間資本や総合特区の活用が示されていることから、「東日本大震災の復興に乗じて、民間市場の拡大を通じた社会保障費の抑制を、今度こそ実現しようとするものであり、はなはだ遺憾である」と危機感を示した。また、「社会保障費用の後世代・次世代への負担の先送りはもはや許されない」との文言が消費税の引き上げを示唆しているとして、「東日本大震災の復興財源は切り離して考えるべき。被災地が地元経済を含めて元気になることが最優先であり、そのための財源について、被災者を巻き込む消費税ありきではなく、幅広く検討すべきである」と述べた。 社会保障制度改革に取り組む際の留意点では、社会保障制度の運営・運用の主体に、医療・介護の提供者が欠落していることを指摘し、医療介護提供者が重要な役割を果たしていることを認識し、運営・運用主体として明示すべきであることを強調した。 社会保障・税に関わる番号制度の導入が盛り込まれたことについては、公平な負担と給付のために所得や保険料を捕捉するシステムは必要だとする一方、個人情報保護への配慮、セキュリティの確保に関する記載がないことから、このままでは容認できないとした。 「急性期医療に対するリソースの集中投入」については、ここ数年、急性期医療にかなりのリソースが集中投入された結果、急性期医療の受け皿となるべき医療から人材、財源等が引き抜かれ、地域の医療が崩壊し、患者の行き先が失われ、入院期間の短縮ももはや限界として、「機能分化は必要ではあるが、リソースを集中投入すれば機能分化を図ることが出来るわけではない。機能分化のためには、十分な医療費を全体的かつ適切に配分する必要がある」と述べた。 また、「医療保険の担うべき機能の重点化・集中化」との文言に保険免責制の考えが含まれているとすれば反対であるとし、「公的医療保険である以上、必要な財源は、広く公費や保険料に求めるべきであり、日本医師会は、どのような形であれ、これ以上の患者負担増には反対である」と主張した。 「医療・介護分野における各種イノベーションの推進」に関しては、医療ツーリズムなど、医療を市場として開放することは医療の営利産業化と同義であることから、断固として反対するとの従来の姿勢を強調。 このほか、厚労省案が診療・介護報酬改定にも言及していることについて、「診療報酬改定、介護報酬改定は、社会保障審議会や中医協での議論を踏まえて行なわれるべきものである。これらの審議会等を主管する厚労省自体が、頭越しに広範な提案をしていることについて、まったく容認できない」と述べ、審議会等の尊重を求めた。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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