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定例記者会見 「文部科学省原子力損害賠償紛争審査会」 調査報告書取りまとめた際の課題を指摘 ―今村聡常任理事 |
同審査会は、東日本大震災に伴う、福島原子力発電所等の事故に対する損害 賠償について、文部科学省に臨時的に設置された機関である。 調査報告書は、「極めて限られた時間の中で作成したものであり、今後更な る調査、検討が求められる。また、本件事故による周辺地域への放射線の拡散 や被ばくの実態等については、今後、詳細な調査を行い、その結果を原子力損 害賠償紛争審査会の指針に反映していくべきである」との文言を記したうえで、 (1)政府による避難等の対象地域に係る損害関係(1.対象地域内の医療機関の 営業損害、2.対象地域内の医療機関からの入院患者の搬送に伴う医療機関・患 者等の損害、3.医師会の損害など)、 (2)政府指示等の対象地域外に係る損害 関係(1.対象地域外の医療機関の営業損害、2.福島県への医師等の派遣をした 医療機関の営業損害など)(3)共通項目等(1.損害の終期の考え方、2.仮払い補 償)―などの項目で構成されている。 この調査報告書等の提出を受けて、7月29日に原子力損害賠償紛争審査会は 中間指針(案)を示した。報告書は膨大な量であるため、報告書の意見がどの 程度反映されているかの詳細については、日医に「福島県原子力災害からの復 興に関するプロジェクト委員会」を設置し、その中で検討することとなってい る。 同常任理事は、以下の問題点を指摘した。 (1)審査会メンバーが法務の専門家を中心に構成されているため、専門委員 の意見や、現場や被災地の状況を知る住民や国民の感覚を反映し、これらに理 解されることが重要で、最終的に指針の決定に関しては、専門委員や現地の人 たちが参加できる仕組みが必要。 (2)原子力事故の加害行為は現在も進行中であり、周辺地域への放射線の拡 散、被ばくの実態については、不明なところが多く、早急に詳細な実態調査と 国民への情報開示を行い、その結果を踏まえて、最終的な指針を策定するべき。 (3)損害の終期は慎重に検討すべきであり、民法724条「不法行為による損害 賠償請求権の期間の制限」での時効消滅期間の延長や、20年間を超えて発生す る可能性がある小児等のがん等の除斥期間の延長についても立法措置が必要。 (4)東京電力に対する損害賠償請求に関して、「原子力損害の賠償に関する 法律」第三条の但し書きにより、東電が免責を主張する場合考えられ、これら に対処できる立法措置が必要。さらに、民法709条により請求する場合は、事 故の性格から、被害者が事故の因果関係を証明することが難しく、推定による 立法措置も取られるべき。 最後に同常任理事は、「どのような経過で、最終指針が作られるかは不明で あるが、指摘した問題点を留意して、被害者が補償されるべきと考える」と述 べた。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合政策研究機構 TEL:03-3946-2121(代) |
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