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第5回第XII次生命倫理懇談会 「移植経験者から移植の現状などについてヒアリング」 |
原中勝征会長のあいさつの後、“臓器移植における倫理「移植者の立場から」”と題し、27年前に自身の妹から腎臓提供を受けた大久保通方 社団法人日本臓器移植ネットワーク専務理事が、移植者の気持ちを踏まえて、臓器移植の現状などについて報告した。 同氏は、医療における倫理性とは、患者が安心して医療を受けられることだとし、臓器移植医療においても、希望する時に希望の臓器移植が受けられることが理想であり、臓器提供や臓器移植への社会の理解の深まりが求められるとした。費用に関しては、「現在、生体小腸、膵臓移植以外は健康保険が適用されている。この7月に脳死下提供の小腸移植が保険適用となり、患者の負担が約1/8に減ったが、やはり患者の負担は大きい。移植後も保険適用外薬の服用が必要な場合もあり、厚労省に働きかけ、ようやく昨年から心臓・肺・肝臓・腎臓の移植者は、免疫療法を受けている限り内部障害者1級として認定され、医療費の補助が受けられるようになってきた」と説明した。 また、臓器移植の社会性の高さとして、日本臓器移植ネットワークという準公的機関が介在し、情報公開と検証が徹底され、公平・公正・公明の原則が保たれていることを強調。検証については、同ネットワークに設置された外部委員による「地方評価委員会」と「中央評価委員会」、さらに厚生労働省の「検証委員会」において検証するなど、厳重な体制が整っているとした。 ドナーに関しては、臓器移植における真のヒーローだとし、生体の場合はドナーの自由意思の尊重、死後の場合はドナーの家族の気持ちをどのように受け止めるかが大切だと述べ、日本移植者協議会ではドナー家族に感謝する集いや、ドナーの慰霊祭を行っていることを紹介。「臓器は物ではない。臓器とともに命と心をいただく医療であり、移植者はいただいた命を大切に、感謝して生きている」と結んだ。 質疑応答では、臓器移植の需要と供給の状況について質問が出され、「心臓では、同ネットワークの登録者は約150人だが、実際に移植を必要としている患者は年間400人程度いるとみられ、今年、実際に移植に至るのは50例程度である」と回答。腎臓では、12,000人が希望しているものの、移植に至るのは年間200例程度、生体を含めても1,000例程度に過ぎず、日本は世界一の透析国になる可能性があるとした。 メディアへの情報提供が詳細過ぎるのではないかとの指摘に対しては、情報公開の要請に応えつつ匿名性を担保する難しさを指摘。移植後のドナー家族と移植者の関係については、コーディーネーターを介して手紙をやり取りしたり、日本移植者スポーツ協会が開催する全国移植者スポーツ大会にドナーの家族を招くなど、匿名性を担保した交流を図っているとした。 ヒアリングの後、答申案の骨子が示され、項目の構成や執筆の方向性などについて協議した。 ◆問い合わせ先:日本医師会企画課 TEL:03-3946-2121(代) |
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