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定例記者会見 「平成23年度病院委員会審議報告」について ―鈴木常任理事 |
本報告書は、会長諮問「超高齢社会における中小病院の機能と役割について」を受け、取りまとめられたもので、内容は、「はじめに」「序:超高齢社会に求められるものと中小病院の特徴」「1章:中小病院に求められる機能」「2章:行政の動きとそれに対する意見」「3章:今後の課題」「おわりに」からなっており、巻末には、委員会で講演した各委員等の資料が添付されている。 同常任理事は、項目に沿って、報告書の概要を説明した。 「はじめに」では、従来は、診療報酬改定を中心とした外部環境への対応が中心であったが、今後の方針(戦略)は、医療機関の持つ「資源」も十分に吟味した上で立てるべきであると指摘。つまり、地域のニーズを再確認した上で自院を分析し、足りないものはよそから補う。そして、もしそれが地域の強い要請に基づくものであれば、改めて自院で行う可能性も考慮すべきであるとしている。また、中小病院は日本における重要な資源と考えられ、病床削減の対象という見方は正しくないのではないか、更に中小病院は、高齢社会においては多疾病をもった方々を総合的に診たり、終末期に関わっているという点で、地域社会とその家庭を支えているのではないか、といった視点の中で、その役割を再定義することが必要ではないかとしている。 「序:超高齢社会に求められるものと中小病院の特徴」では、日本が突入した超高齢社会や高齢者の特徴の他、戦略的に考えることの必要性を挙げ、診療報酬という外部環境だけでなく、医師を始めコ・メディカルも含めた内部資源について考えることが重要としている。 「1章:中小病院に求められる機能」では、中小病院の機能の類型化について説明した上で、各中小病院が地域において必要とされる外部環境と内部資源を見比べ、自院の方向性を決めることは不可能ではないとしながらも、類型化に必ずしも当たらないものとして「救急医療」を挙げ、二次救急の中心的役割を担ってきた中小病院に対する公的補助は必須であると強調している。 また、「在宅医療」は、超高齢社会の日本の医療の進む方向の1つであり、在宅医療への関与は重要だとしている他、5疾病として新たに加わる「精神科医療」についても詳述されている。 「2章:行政の動きとそれに対する意見」では、「地域包括ケア」は介護あるいは介護保険の範囲のみならず、在宅医療あるいは地域医療と密接に関連しているとして、地域包括ケアにおける医療の役割を強調。また政府が、地方等の医療資源が十分でなく、病床機能分化をしっかり行うことが現実的でない所において、高度急性期から亜急性期までの医療を網羅的に提供する病床として提案している「地域に密着した病床」は、全日本病院協会を中心にまとめられた「地域一般病棟」とは、軽度から中等度の急性期を担う点、在宅療養支援を担う点、在宅医療・介護施設と連携する点が異なるとしている。 その他、地域医療支援病院について、原則200床以上の要件があるが、現実に地域医療あるいは地域医療の支援を担っている中小病院があるという実態に即した制度の見直しが必要としている。 「3章:今後の課題」では、医療法そのものを見直すといった抜本的改革案として、病床を持つものを病院、持たないものを診療所とし、入院は病院、診療所は外来診療のみで、人員配置標準も一般病床は患者50人に対して医師3人、看護師8人、薬剤師1人とし、診療機能に応じて増減を行うという考えを提案し、来年度以降の本委員会の課題になり得るとしている。 「おわりに」では、「中小病院は日本の貴重な資源であり、超高齢社会における役割がある」「特に、在宅医療(支援)、高齢者救急、地域包括ケア、肺炎、透析、精神といった分野や疾患、更には高齢患者の生活に近い部分での役割を担うことが出来る」とまとめている。 最後に、同常任理事は、「今回の報告書は、従来と異なり、病院団体や地域の代表の立場で出席されている委員の先生方からの意見を直接記載した形になっている。今後、中小病院に求められる機能として、ケアミックスや専門病院化の他、救急医療や在宅医療、地域包括ケアにおける役割、また精神科医療などについて提言しており、全国の中小病院の今後の方向性を考える上で参考になれば幸いである」と述べ、中小病院や診療所は全て貴重な医療資源であり、これらを活用して超高齢社会を乗り切るという視点・考え方が必要ではないかとの考えを示した。 ◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代) |
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