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定例記者会見 『日本再生戦略』についての日医の見解 ―中川俊男副会長 |
同副会長は、『日本再生戦略』に書かれている「『夢と誇りを持てる国』を実現する」という方向での日本再生には、日医としても「政府、国民と協調して、ライフ成長戦略に貢献したい」との考えを示し、「東日本大震災からの復興に総力を挙げる」ことに対しては、被災地の医療復興、健康支援を全力で支えていくと述べた。しかし、今回の『日本再生戦略』では、2010年「新成長戦略」で述べられていた「市場原理主義への反省」が消失したばかりか、公的医療保険範囲の縮小や公的保険外の民間サービスの拡大が示されたことに対して、「医療の営利産業化を進めようとしている」として、所得によって受けられる医療に格差が生じるような政策は容認出来ないとした。 同副会長は、『日本再生戦略』の内容について各項目の問題点を指摘した。 「I.総論」では、『日本再生戦略』の実行に当たって、「社会保障制度改革推進法」の実行が意味されるが、推進法には「医療保険制度に原則として全ての国民が加入する」と記載されていることに対して、「国民皆保険はすべての国民が加入することが大前提であり、例外を作ることには絶対反対」とした。 さらに、「予算編成との関係」では、「社会保障分野を含め、聖域を設けずに歳出全般を見直す」と記載されていることに対して、「医療再生のために重要な時期であり、小泉内閣による「聖域なき構造改革」の失敗を繰り返すべきではない」とした。 「III.デフレ脱却と中長期的な経済財政運営」では、「重視すべき政策分野」として、「医療、介護等におけるビジネス展開を促進するとともに、サービス産業のビジネス機会拡大のため、公共データの民間開放・利活用を進める」と記載されていることに対して、「経済成長のために、患者情報を商品化しようとしているように読み取れる。患者および個人情報保護を最重要課題とすべきである」とした。 「IV.日本再生のための具体策」では、「ライフ−世界最高水準の医療・福祉の実現プロジェクト」の中で、「公的保険で対応できない分野についても、民間活力を生かし」と記載されていることに対して、「今後、分野によっては公的医療保険で対応しないことを示唆しており、公的医療保険の給付範囲を将来にわたって維持することを強く求める」とした。更に、「医療サービスと医療機器が一体となった海外展開」を図ると記載されていることに対して、「日本国内の医療再生が喫緊の課題である中で、政府が組織的に医師の海外進出を支援する方針であれば問題」とした。また、「医療・介護システムをパッケージとした海外展開」を図ると記載されていることに対して、「『日本再生戦略』は介護とパッケージ化することで、医療の営利産業化も容認しているのではないかと危惧し厳しく注視する」とした。 また、中川副会長は、新たに機関特区を行政区域単位を超えて創設する方針に対し、「特区の創設及び特区における医療の規制緩和が安易に進まないよう、厳しく対処して行きたい」とするとともに、「情報保護等に係る厳重な法整備を最優先すべき」との日医の考えを示し、最後に「日医は、どのような枠組みの政権が誕生したとしても、一貫した政策を提言し、日本の医療を守る行動を強力に進めて行く所存だ」と強調した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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