白クマ
日医白クマ通信 No.1588
2012年9月6日(木)


定例記者会見
厚労省「社会保障に関する国民意識調査」の問題点を指摘
―石川常任理事

定例記者会見


 石川広己常任理事は9月5日の定例記者会見で、厚生労働省が行った「社会保障に関する国民意識調査」と、その結果を引用している厚生労働白書の問題点を指摘した。

 今回の意識調査は、8月28日に白書と共に公表されたもので、白書の中には、その結果を基に、「所得の高い人は、所得の低い人よりも、医療費を多く払って、より良い医療を受けられる」という考え方を正しいとする国民が、日本では49.6%と半数近くに達し、その数値は先進諸国よりも多いことが示されている。

 同常任理事は、まず、白書が、同調査には医療に関して直接的に質問した項目がほとんどないにも関わらず、国民が所得の違いによって、医療に格差が生じることを容認しているという結果を強調している点を批判。調査の手法に関しても、民間会社に登録しているネットモニタを対象としており、その抽出に当たっては、対象者(20歳以上)を「居住地(全国8ブロック)、年齢、性別による構成比に応じてサンプル割付」を行ったとしているが、そもそも、このようなサイトの登録者が、国民を代表していると言えるのか、はなはだ疑問であるとした。

 先進諸国との比較や意識調査の本報告書に掲載されている経年比較により、「所得の高い人は、所得の低い人よりも、医療費を多く支払って、よりよい医療を受けられる」という考え方を「正しい」とする国民が年々増加しているとしている点についても、先進諸国及び日本の過去データは、国際比較調査グループISSP( International Social Survey Programme)調査の各国共通テーマとして実施されたもので、今回の調査とは手法が異なっていること等を挙げ、その内容には初歩的な課題があるとした。

 更に、同常任理事は、厚労省が、日本で所得によって受けられる医療に格差があることを容認している意見が多い理由を、「先進諸国、特にヨーロッパ諸国においては、所得の多寡にかかわらず誰もが等しく医療や教育を受ける権利が保障されるべきであるという、『平等性』に関する規範的な意識が、国民全体に定着していることが背景にある」と説明していることについても、規範的な意識の定着に努めるべき厚労省が責任回避的な分析を行っていると批判。あえて、厚労省がこの結果を白書に盛り込んだことについては、「先般成立した社会保障制度改革推進法や閣議決定された日本再生戦略など複合的に判断すれば、公的医療保険の給付の範囲縮小に向けて、調査結果が恣意的に活用されたものと考えざるを得ない」とした。

 その上で、同常任理事は、日医総研の「日本の医療に関する意識調査」によれば、「所得の高い低いによって、受けられる医療の中身(治療薬や治療法)が異なることはやむを得ない」という考え方に賛成の国民は1割強にとどまっており、増加傾向もみられないことを紹介。「日本人は、所得によって受けられる医療に格差のない社会を望んでいることは明らかである」として、日医としても、引き続きその実現に向けて努力していく意向を示した。

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