白クマ
日医白クマ通信 No.1653
2013年4月3日(水)


第5回医療政策会議
「医療の『見える化』」をテーマに講演

第5回医療政策会議


 第5回医療政策会議が3月28日、日医会館で開催された。

 この日は、近藤克則日本福祉大学大学院医療・福祉マネジメント研究科長が、「医療の『見える化』で国民的合意形成を―医療崩壊からの再生途上にある英国に学ぶ」と題して講演した。

 同氏は、まず、日本以上の医療費抑制政策により医療荒廃を招いたイギリスでは、(1)入院待機者が130万人、(2)患者による暴力事件(言葉によるものを含む)が15%増え年間95,000件超、(3)医師の自殺率が他の職業の2倍―などの状況となったことを説明。しかし、その後の医療制度改革でイギリスの国民医療費は2000年には日本を上回り、更に大きな伸び率で推移しているとし、その改革を進めるに当たり行った「マネジメント」と「見える化」を日本でも適用すべきだと強調した。

 「見える化」については、入院待機患者数、院内感染件数、冠動脈疾患死亡率、患者の医療経験調査、職員の職務満足度など、さまざまな観点からデータを視覚化することで病院間格差や健康格差があることを浮き彫りにするものであると解説。その格差を縮小させるために医療費の拡大を訴えたとし、「お金に見合う価値を生み出すことを国や医療者側が説明し、国民に増税や医療費の拡大を受け入れてもらうことにつながった」との見方を示した。

 一方、日本の医療制度改革では、費用のデータばかり取り上げられるため抑制が主要な論点になりやすいとして、医療の質や健康格差の問題を明らかにしていくことで合意形成の基盤をつくるべきだと強調。「見えない物はマネジメント出来ないが、見えれば、どうすればよいか検討し、マネジメントサイクルが整う」とし、どの側面を見てもらいたいかを考えた上で「見える化」に取り組むべきだとした。

 「見える化」の自身の実例としては、高齢者医療制度改革会議に提出した「過去1年に必要な受診を控えた高齢者の割合」の調査を取り上げ、所得が低くなるほど、受診を控えた理由に「費用」を挙げる割合が高くなっていることを明らかにして、二割負担を実施すると低所得層の受診抑制を招き、健康格差が広がると警鐘を鳴らしたと述べた。

 質疑応答では、イギリスの「見える化」は国が主導したことを指摘する発言があったが、近藤氏は、「財政学者には財政問題しか見えず、医療の質が見えていない」として、的外れな指標が持ち出されないためにも、日本における「見える化」は医療の専門職である医師会の使命であると力説。医療崩壊からの脱出には、どんな医療を目指すのかという目標とそこに至る戦略(ストーリー)が重要だとした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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