白クマ
日医白クマ通信 No.1682
2013年8月9日(金)


定例記者会見
「社会保障制度改革国民会議報告書をうけて」
―横倉会長

定例記者会見


 社会保障制度改革国民会議が報告書を取りまとめたことを受け、日医は8月5日にプレスリリースとして見解を公表していたが、8月7日の定例記者会見で、横倉義武会長は、報告書の各論にも触れつつ、改めて見解を述べた。

 横倉会長はまず、同会議の委員として、医療界を代表する日医が参加出来なかったことに遺憾の意を示した上で、報告書について、「弱者に配慮がなされているものの、70歳から74歳の医療費窓口負担の特例の廃止や、入院時の食事自己負担の増加といった提言がされており、国民にさらなる負担を強いるものである」と強調。医療提供体制の過度な機能分化や、医療法人制度の過度な見直しを全国一律に行えば、地域医療の混乱を招きかねず、また、要支援者に対する介護予防給付を市町村事業へ移行すれば、重度化を予防する観点からサービスの質の低下が懸念されるなどの問題点があるとした。

 一方、日医が求めてきた国保保険者の広域化や、所得に応じた負担、2次医療圏ごとの医療ニーズに応じた医療・介護サービス提供体制の構築などが進められていくことについては高く評価するとともに、「国民皆保険を形骸化させる、混合診療の全面解禁、保険外併用療養の拡張、セルフメディケーションについての記載がなく、新自由主義的な発想から脱却したことは特筆すべき点である」と述べた。

 報告書は、(1)社会保障制度改革の全体像、(2)社会保障4分野の改革(I少子化対策分野の改革、II医療・介護分野の改革、III年金分野の改革)―を柱に構成されているが、同会長は、「II医療・介護分野の改革」から各論に言及した。

 改革の方向性の項目における、看護配置基準などの在り方が提供体制を歪める一因にもなっているとの記述に関しては、「『7対1』はあくまでも看護配置基準であり、これを満たすことだけで急性期医療を提供する医療機関と見なすことは問題である」と強調。公的医療保険の給付範囲の堅持を掲げる日医として、総論的に大きな方向性の相違はないとする一方、医療ニーズと提供体制の間に大きなミスマッチがあるとの認識には、現在の医療・介護の提供体制は地域の医療機関、医療従事者の献身的努力により保たれてきたものであることから違和感があるとした。

 医療保険制度における保険料の負担に関して、「負担能力に応じて応分の負担を求めることを通じて保険料負担の格差是正に取り組むべき」と明記されたことについては、社会保障政策の実行においては効率性だけでなく公平性の観点も必要であることを強調した上で、日医が従来、負担の公平性の観点から求めてきたことであるとして評価した。

 医療給付の重点化・効率化の観点から、紹介状のない患者の大病院の外来受診に一定の自己負担の導入が盛り込まれていることについては、「患者にとって受診が1日がかりになるのは望ましくなく、大病院で多数の外来を受けることは、病院側、特に勤務医にとって相当の負担になる」として、患者、病院双方にとって、まずはかかりつけ医を受診することが望ましいとした。

 また、70〜74歳の医療費自己負担の特例措置をやめ、法律上の2割負担にすべきとの主張に対しては、「年金の少ない方の受診抑制が起きないよう配慮する必要がある」と慎重な姿勢を示し、収入に応じた段階的負担の在り方を求めるとした。

 このほか、横倉会長は、「病床機能報告制度の導入と地域医療ビジョンの策定」「都道府県の役割強化と国民健康保険の保険者の都道府県移行」「医療法人制度・社会福祉法人制度の見直し」「医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築」「医療・介護サービスの提供体制改革の推進のための財政支援」など多岐の項目にわたって見解を述べた。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
◇関連資料はこちら⇒PDF(91KB)※8/5プレスリリースと同一


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