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第8回医療政策会議 公的医療のあり方―国立病院機構の現状から― |
冒頭、あいさつに立った横倉義武会長は、政府の産業競争力会議において、国家戦略特区で実施する規制改革として医学部の新設が提案されていることを取り上げ、「さまざまな提案がなされているが、今回の特区構想には経済再生やオリンピックを控えての様々な経済活動など、非常に強力な力が働いている。その中で、国民医療を守るため、医療の安全を守るためにどのような政策が望ましいか、しっかり主張しなくてはいけない」と述べた。 当日は、桐野明委員(独立行政法人国立病院機構理事長)が、「公的医療のあり方―国立病院機構の現状から―」と題する講演と質疑応答を行った。 同委員は、まず国立病院機構について、旧陸海軍病院を基に発足し、現在143施設あることを紹介するとともに、財務状況に関して、徹底した経営改善努力により法人全体で収支の黒字化を達成し、診療事業は診療報酬等の自己収入で運営していることを報告した。 桐野委員は、病院の設置形態が私的であっても、公的役割を担いながら周辺地域を担当するため、公的病院と私的病院の役割は類似したものにならざるを得ないとした上で、基幹的な急性期病院は集約化・集中化の方向にあり、異種間の統合、自治体病院の地方独法化の動きも進んでいることを説明。その上で、小規模病院の医師不足は、都市部と地方との奪い合いよりも、大規模急性期病院の急速な拡大による面が大きいことを指摘し、「これからの医療は急性期医療の充実に加えて、医療と介護をシームレスにつなげる『地域包括ケア』の充実が喫緊の課題であり、人材の確保が重要である」と述べた。特に、総合診療医とチーム医療を担当出来る医師の養成が急務であるとして、総合診療医の担当する領域は他の診療科と同じ専門性の高い専門領域であるとの共通認識が必須であるとした。 また、公的病院に対しては医薬品や医療機器の開発のための研究や、医学的エビデンスを確立するための研究の推進が期待されているとして、「やたらと医薬品の貿易赤字をあおるのは問題だ。正面から『産業としての医療』に向き合うのであれば、新薬や医療機器の開発に本気で取り組むほかはない。新薬や医療機器の開発と言うと、合理的なアメリカのシステムを取り入れようという動きが出てくるが、医薬品価格の自由化や株式会社の病院経営、混合診療の解禁などというやり方では保険医療制度が壊れるので、国民にとって広く受け入れられる開発方式を工夫することが必要である」と強調した。 この他、「公的病院が恒常的に多額の資金援助を受け取る時代は終わったと思う」との見方を示し、公的資金援助を受ける場合には説明責任を十分に果たすべきだとした。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代) |
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