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定例記者会見 財政審報告書「財政健全化に向けた基本的考え方」に対する日医の見解を表明 ―横倉会長 |
同会長は、「日医も、将来世代に過大な負担を残さないために、財政健全化は必要であり、改革を進めていかねばならないと考えている」と述べ、報告書に国民健康保険における保険者の都道府県移行など、日医もたびたび提言してきた内容が織り込まれていることを評価する一方、地域ごとに医療費の「支出目標」を設定する提案がなされたことに対しては、「医療費の支出目標を設定すると、適切な地域医療を提供する阻害要因となる恐れがある」と指摘。まずは、地域の実情を的確に把握し、都道府県行政と地域医師会が一体となってしっかりとした地域医療ビジョンを策定すべきであり、支出目標という制約の中で地域医療ビジョンを策定することがあってはならないとした。 また、薬価の毎年改定が求められていることに対しては、「診療報酬改定と薬価改定はセットで行うことを前提に薬価算定ルールが設定されているため、薬価の毎年改定は、診療報酬とのバランスを欠く」とし、健康保険法において薬剤は診察等と不可分一体であり、その財源を切り分けることは不適当であると強調。薬価改定を毎年行うことになれば、医療機関および調剤薬局のレセコン等や、保険者のマスタ更新に毎年膨大な費用が発生する他、医療従事者の請求事務の研修などによって大きな負担を強いることになると指摘した。 受診時定額負担の導入が求められていることに対しては、「2011年に行われた『社会保障・税一体改革』の議論の際にも受診時定額負担の導入が議論され、患者や医療関係者の強い反対によって導入が見送りとなったことから、受診時定額負担は既に解決済みであると認識している」とした上で、「受診時定額負担」は、受診回数の多い高齢者には大きな負担になるため、高齢者や低所得者の受診差し控えが生じると懸念した。 湿布、漢方薬など市販類似薬品の更なる保険適用除外を進めることが求められていることに対しては、公的な医療給付範囲の縮小を招く突破口となる恐れがあるとして、「安易に市販類似薬品を保険適用除外とするのではなく、現場の実態を考慮すべき」との考えを示した。 一旦保険適用とされた医療技術等について、費用対効果が低いものは保険適用から外し、保険外併用療養の対象とする検討が求められていることに対しては、「保険適用の可否については中医協で議論がなされており、保険適用から外されているものある。一つ一つの医療行為については、本来中医協で議論すべき内容であり、財政審が踏み込むべきではない」と述べた。 報告書で、出来高払いが問題視されていることに対しては、日本の対GDP総医療費に触れ、「日本の医療は、平等で、患者にとっても自由であるだけでなく、質が高く、しかもそれを既に世界一の高齢化率であるにもかかわらず、先進諸国の中でも低コストで提供している。従って、出来高払いは、過剰なサービス供給がもたらされやすいものとは言えない」と強調。出来高払いであるからこそ、保険審査として、第3者である保険者のチェック機能が働いているとした。 このほか、「国民健康保険の保険者が都道府県に移行することの意義は大きい」との記述については、日医も同様の見解であり、公的医療保険制度を将来的に全国一本化すること、その過程で、市町村国保を都道府県単位で統合することを提案してきたことを説明。広域化によって財源が安定化するとの見方を示す一方、市民の健康増進については引き続き市町村が担うべきであるとした。 横倉会長は、日医の医療提供体制改革への取り組みについて説明するとともに、「医療は地域のまちづくりである。2025年、更には2050年を見据え、今般創設された『新たな財政支援制度』を活用し、地域包括ケアを推進することにより、住み慣れた地域で住民が自立して日常生活を営むことが出来るよう、改革を進めなくてはならない」として、今後も、国民誰もが必要な医療を過不足なく受けられるよう、あるべき医療の姿の実現のために努力していく姿勢を示した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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