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三師会合同記者会見 医療等IDに係る法制度整備等に関する三師会声明を公表 |
横倉会長は、まず、医療に係る個人情報の保護について、医療のICT化を推進する上で最も重視すべきものであるとの認識を示した上で、個人情報保護法制定時になされた付帯決議に反して、医療分野における同法の個別法は策定されておらず、平成27年10月のマイナンバー制度開始に備え、全体法の改正が行われようとしている現状を危惧。 「こうした状況を踏まえて、今回、国民の医療、尊厳を守る立場から、医療等分野で必要とされる番号に関連した法制度、その他関係制度のあり方等について、三師会の意見統一を行い、声明として公表するに至った」と説明した。 続いて、三塚日歯副会長が、「われわれは患者の高度な秘密である医療情報が漏洩することを非常に危惧している。自分の病歴を他者に知られたくないという患者の当然の権利と国民の健康を守るために、国でしっかりと議論して個別法で対応すべき」との見解を述べた。 また、山本日薬会長は、「国民、患者が不利益を被らないことを大前提に、健康で安全な生活を守るために医療分野に番号制度を導入するのであれば賛成できるが、十分な議論もなく、マイナンバー等が導入されることに危惧を抱いており、今後も検討を進めたい」との考えを示した。 引き続き、声明の10項目の詳細について、石川広己常任理事が次のように説明した。 1.マイナンバーとは異なる医療等IDの必要性 医療情報を公益目的で集積、活用するためには個人を識別する番号が必要であり、共通の患者番号があれば地域医療・介護連携も効率的に行えることから、機微性の高い医療情報を扱うための、他分野とはリンクしない医療等分野専用の番号(医療等ID)が必要である。この医療等IDは、マイナンバーのような悉皆性、唯一無二性を原則とせず、「忘れられる権利」、「病歴の消去」、「管理番号の変更」、「複数管理番号の使い分け」等が担保されるべきであり、そのための議論が必要である。 2.医療情報そのものを保護対象とした法整備が必要 現在の法制度には、守秘義務のある医療従事者とそれ以外の者とでは、罰則の有無、程度が大きく異なる矛盾がある。医療情報そのものを保護対象とし、同じ医療情報を取り扱う限り、それに触れる者全般に対して有効な罰則を含めた法整備が必要である。 3.医療情報の二次利用・突合は厳しく制限するべきである 医療情報と他の情報を照合することで、個人が特定できる可能性がある。二次利用は厳しく制限し、突合は原則禁止とすべき。二次利用の際には、可能な限り説明し、個人の承諾を得るべき。 4.個人番号を医療の現場で利用するべきではない マイナンバー法では個人番号の安易な利用は禁止されているが、個人番号カードの券面に個人番号が記載される以上、確実に阻止することは難しく、仮に法改正により民間活用可能となった場合、名寄せを行いやすいデータベースが各所で構築される恐れがある。医療現場で個人番号カードを利用する環境を安易に構築することは、医療等の情報と個人番号が結びつく危険性が高い。 5.個人番号カードへの健康保険証(被保険者証)機能の取込には反対 個人番号カードを被保険者証として利用する案については、患者のプライバシー保護や安心の観点、また、カードの保全等の観点から反対である。 6.死者や遺族の尊厳について 個人情報保護法では死者に関する情報は対象外だが、死者や遺族の尊厳を守るため、法改正を要請する。 7.遺伝子情報の集積・利用について 遺伝子情報の収集・解析に取り組み始めている異業種企業もある。個人情報保護法の改正により、集積や二次利用について制限を加えるべき。 8.救命活動等について 救命活動等の際には、患者本人の同意がなくとも医療等IDを用いて的確な情報が迅速に得られることが望ましい。医療現場の治療行為を萎縮させてはならない。 9.医療分野には「個人情報を守る立場」の監視機関が必要 医療情報の機微性を鑑み、個人情報を守るための第三者機関(プライバシー・コミッショナー)が必要である。 10.医療従事者や保険医療機関等のプライバシーについて ナショナルデータベースに集積されるレセプトデータには、保険医・保険薬剤師の行った医療情報が記載されている。医師・歯科医師・薬剤師並びに保険医療機関等のプライバシーも考慮した法改正を行うべき。 最後に、同常任理事は、「声明の中の意見は、国民の安心や人権を守ることを第一義に考えたものである。医療を含めた番号制度については、日本は先進国の中では遅れている状況だが、各国での事例を参考に優れた制度となるように進めるべき」として、三師会声明への理解を求めた。 ◆問い合わせ先:日本医師会広報・情報課 TEL:03-3946-2121(代)
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