白クマ
日医白クマ通信 No.1827
2014年11月21日(金)


定例記者会見
「消費税率引き上げの延期と衆議院解散を受けて」
―横倉会長

定例記者会見


 安倍晋三首相が、11月18 日に、来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げを1年半先送りし、21日に衆議院解散に踏み切る意向を表明した。これを受けて、横倉会長は、翌19日の定例記者会見で、日医の見解を公表した。

 同会長は、まず、「日医では、これまで、消費税の増収分を社会保障財源に充てることは平成24年6月の『三党合意』での国民との約束であり、その約束は絶対に守らなければならないと主張してきた」と説明。その上で、国と地方の長期債務残高が1,000兆円を超え、今後労働力人口が減少し、少子高齢化が進展していく中、景気の後退により、消費税率の引き上げを延期せざるを得なくなり、政策の変更について国民の判断に委ねることとなったことは、社会保障財源の確保の観点から、残念だとした。そして、わが国はどうしても乗り越えなければいけない苦しい登り坂に差し掛かっており、これは日本にとって避けて通ることができないものであるが、増税の時期が1年半先送りとなる間も3党合意にある社会保障の充実を図り、短期間に激変が起きて地域医療が混乱することがないよう、諸施策に対する十分な配慮をお願いしたいと主張した。

 また、10%への消費増税は1年半先延ばしとなったが、社会保障と税の一体改革は着実に進めていかなければならないとの考えを示す一方、残念ながら、医療・介護には十分な手当がされておらず、消費税収を充てるべき経費が高齢者3経費から社会保障4経費になり、高齢者医療だけでなく難病・小児慢性特定疾患の医療費、少子化対策の財源もますます必要になると指摘。これからは、従来から医療界が主張してきた控除対象外消費税の税制上の解決策として、軽減税率等による課税取引に転換すること等により医療機関等の消費税負担をめぐる問題の抜本的解決を図ることも必要だとして、その解決に向けた意欲を示した。

 更に、デフレ脱却による経済成長によって得られた税収は、国民が住み慣れた地域で質の高い医療を受けられるよう、必ず社会保障の充実に充てるよう引き続き求めていくと強調。特に、かかりつけ医を中心とした「切れ目のない医療・介護」を提供できるよう地域包括ケアを構築していくことが重要だとするとともに、地域の実情を十分に反映した地域医療構想は、地域医療介護総合確保基金と診療報酬の双方の手当てによって実施し、地域医療の再興・強化を図る必要があるとした。

 今年度は904億円が手当てされた地域医療介護総合確保基金については、「来年度は8%引き上げ分の消費税が満額入る」ことから、国民との約束である社会保障を充実させる意味からも、更なる増額が必要であるとの考えを示した。

 あわせて、国民が安心できる持続可能な医療の実現のため、適正化を図り、国民負担の増大を抑制することができるよう、「社会から支えられる側」であった高齢者が、「社会を支える側」になれるように健康寿命の延伸をしていくことも必要になるとして、そのためには生涯保健事業の推進により、健康の維持増進、疾病の予防及び早期発見等を積極的に促進することも重要だとした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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