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合同記者会見 「東京圏国家戦略特区における医学部新設に3団体合同で反対を表明」 |
同会長は、まず、医師不足の問題は、医師の絶対数の不足と偏在からなる問題であるとして、2008年に政府が医師養成数増加の方針を打ち出して以降、2008〜2015年度の入学定員累計増員数は1,509人となっており、その数は新設医学部の定員数を従来の100人とすると、約15医学部分の増加に相当すると指摘。これにより、医師数の絶対数確保には一定の目途がつきつつあり、今後の環境変化や、勤務医の負担軽減にも対応できるとの考えを示した。 更に同会長は、平成22年以降毎年1000人を超える地域枠が増加されてきたことから、2016年以降は毎年、1000人以上の医師が地域枠として全国の現場に出ていくことになるとし、これらの医師たちの就業状況を見た上で、医学部養成定員の議論をすべきであると強調。 また、同年齢のうち医師になる割合について、分子を医師国家試験合格者数、分母を25歳人口として算出した場合、1976年には437人に1人が医師であったが、2014年には162人に1人、このまま推移すれば、2030年には132人に1人が医師になり、2013年度における医師1人当たりの養成費用は医学部6年間で約1億円にもなると説明。「医学部新設には実習設備設置等の費用がかかることからもその影響は極めて大きく、若年層をはじめとした人口が減少する中においては、養成費用も含めた議論も必要である」とした。 その上で、同会長は、成田市と国際医療福祉大学が提案する「国際医療学園都市構想」についても言及。医学生が最低限履修すべき教育内容である「医学教育モデル・コア・カリキュラム−教育内容ガイドライン−」を満たすことができるのか疑問であるとするとともに、医学部新設については、全国医学部長病院長会議からも反対声明(平成26年4月)が出される等、地域医療の現場でも反対の声があるとして、特区における医学部新設については、慎重な対応を求めた。 久日本医学会長は、当日開催された日本医学会監事会の場において、東京圏国家戦略特区会議における医学部新設について議論した結果、全員が反対とするとの意見であったことを報告。急激な医学部定員増により医学生の質が低下しているというデータが医学部長病院長会議の方から出ているが、「質の悪い医師が増えることは国民にとっても幸せなことではない」として、これ以上の医師養成数の増員には強く反対であるとした。 甲能直幸全国医学部長病院長会議副会長は、全国医学部長病院長会議としても国家戦略特区における医学部新設には反対であるとの考えを示した上で、その問題点として、(1)特区に求められる「既存の医学部とは次元の異なる、際立った特徴を有すること」を満たす要件(@国際的な医療人材の育成Aグローバルスタンダードに対応した医学部の新設)の意義が理解できない、(2)医学部新設には膨大な費用がかかり、われわれも含め国民の負担が非常に大きい、(3)医療現場に混乱を及ぼすことが予想される―の3つがあると指摘。特区において医学部を新設する目的とされているものは、既存の医学部・医科大学でも十分対応可能であるとした。 その他、当日は会見に同席した、寺野彰全国医学部長病院長会議相談役、河野洋一同相談役、小川彰同顧問からも反対意見が述べられた。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)
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