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定例記者会見 「社会保障費の伸びをあらかじめ設定する素案の内容を批判」 ―横倉会長 |
同会長は「現在、わが国の債務が1,000兆円を超える中で、政府が財政再建を進め、2020年度までにプライマリー・バランスの黒字化を実現するという方針は理解できる」とする一方、「医療は社会的共通資本であり、社会保障は税よりも貧富の差を縮める所得再分配機能が大きくなっている。医療政策は財政主導で行うのではなく、社会保障が社会の安定に寄与していることを念頭に置いて実行されなければならない」と強調。「今後も、高齢社会に向けて、社会保障を充実させて国民の不安を取り除き、より一層安定した社会をつくっていく必要がある」とした。 「過去3年間の社会保障関係費の実質的な増加が、高齢化による増加分に相当する伸びである1.5兆円程度になっている」とされている点に関しては、「医療提供側も医療費の適正化に協力した結果である」と指摘。「医療費は高齢化以外にも、年々進歩する医療技術の高度化などでも増加するため、あらかじめ伸びを設定することは、国民が求める必要な医療を提供できなくなる懸念がある」とするとともに、「その基調を2018年まで継続する」としていることに対しても、「まずは来年度の予算編成を行った上で検討すべきものである」と反論した。 また、同会長は、素案がまとまる議論の過程の中で、自民党の「財政再建に関する特命委員会」が財政健全化を意識するあまり、過度の歳出抑制を図り、国民負担を増加させる内容を提案したことについても触れ、「国民の健康を守る観点からふさわしくない」とするとともに、「実質的に社会保障費にキャップをはめていることと同じであり、かつて、小泉政権下では社会保障費が機械的に毎年2,200億円削減され、わが国を医療崩壊へと導く深刻な影響をもたらした反省がまったく見られない」とその内容を強く批判。「我々医療側も、人口が減少していくなかで国民皆保険を堅持していくため、財政主導ではなく、例えば学会が策定する診療ガイドラインにも症状に応じてコスト意識をもった処方を掲載する等、過不足ない医療提供ができる適切な医療を提言してかなければならない」とした。 素案の中で評価できる点については、「負担能力に応じた公平な負担を求める方針が示されたこと」等を挙げ、「医療費の財源は保険料でしっかりとまかなっていくことが大切であり、負担能力に応じた公平な負担を求める方策として、日医は以前から被用者保険の保険料率の公平化を主張している。国民の間にも不公平感が根強くあり、速やかに実行していくことが望まれる」とした。 更に、(1)外来時の定額負担、(2)国民健康保険料に対する医療費の地域差の一層の反映、(3)保険制度における後発医薬品使用の原則化―の3点については、特に問題があるとして、日医の所感を改めて説明。その上で、同会長は、「社会保障と経済は相互作用の関係にあり、老後に不安を感じている国民に安心を示すことは、経済成長を取り戻すための出発点となると考えている。わが国は、国の借金が1,000兆円を超え、労働力も減少するという極めて厳しい局面に直面しているが、今後も国民皆保険を堅持し、国民が必要な医療を過不足なく提供できる社会をつくっていく」と述べ、日医の考えに対する理解を求めた。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代) |
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