白クマ
日医白クマ通信 No.1896
2015年7月2日(木)


定例記者会見
「経済財政運営と改革の基本方針2015」等の閣議決定を受けて
―横倉会長

定例記者会見


 横倉義武会長は7月1日、記者会見を行い、6月30日に、1.「経済財政運営と改革の基本方針2015」、いわゆる「骨太の方針2015」、そして、成長戦略である2.「『日本再興戦略』改訂2015」、規制改革の方針である3.「規制改革実施計画」―の3つがそれぞれ閣議決定されたことを受けて日医の見解を説明した。

●社会保障費の機械的削減は行われないとの認識を示す

 まず、1.「骨太の方針2015」で、社会保障費の伸びについて、「安倍内閣のこれまで3年間の経済再生や改革の成果と合わせ、社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていること、経済・物価動向等を踏まえ、その基調を2018年度まで継続していくことを目安とし、効率化、予防等や制度改革に取り組む。この点も含め、2020年度に向けて、社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめることを目指す」と表現され、22日に示された「素案」から、文言中に「目安」という言葉が入ったことには一定の評価を示した。また、かつて年2,200億円の社会保障費の機械的削減がわが国の医療に大きな影響を与えたことを踏まえて、甘利明経済再生担当大臣が4月10日に「従来の物理的に毎年2,200億円ずつ有無を言わさずカットという方法はあまりとりたくない」と発言したこと、及び6月30日の記者会見における麻生太郎財務大臣の「前轍(ぜんてつ)を踏むようなことはしない。機械的な削減額を毎年一律に決めるものではない」との発言に触れ、「その基調で議論が進んでいるものと認識しており、かつて行われたような社会保障費の機械的削減は行われないものと思われる」と述べた。

 その上で、医療費の十分な確保は必要だが、財政危機に直面しているギリシャのようにハードランディングになることなく、国民の求める医療を過不足なく提供できるよう改革を進め、ソフトランディングをしていくことも必要だとしつつ、「主張するところはしっかり主張していく」と述べた。

●「日本国際病院(仮称)」等、商業主義的メディカルツーリズムには慎重な対応を

 2.「『日本再興戦略』改訂2015」で、新たに講ずべき具体的施策に、「医療・介護等分野におけるICT化の徹底」として、「マイナンバー制度のインフラを活用した医療等分野における番号制度の導入」が挙げられていることに関しては、日医の主張が取り入れられたものとして評価。その一方で、「医療の国際展開(アウトバウンド・インバウンド)の促進」の中の「日本国際病院(仮称)」については、「営利目的で組織的に外国人患者を招致すること」には、医療の非営利原則や混合診療の禁止などの視点から問題があるが、一方で、予期せぬ傷病をした外国人を言語や宗教・慣習等に応じて受け入れることができる医療機関の整備は必要だと強調した。

●薬価財源等の活用で技術を充実させ、医療の安全・安心を図るべき

 3.「規制改革実施計画」で示された、医薬分業推進の下での規制の見直しに関しては、財源が厳しい中で、ものと技術を分離し、薬価財源等を活用し、技術を充実させることにより、医療の安全・安心を図ることが必要との考えを示しつつ、医薬分業率は過去20年で著しく上昇したものの、その効果が当初期待したものであったかは疑問であり、しっかりとした検証が必要だと指摘。調剤技術料は、院内処方から院外処方に移転した分以上に増加していることから、「これを端緒に、患者の恩恵・利便性、保険財政上の影響、医療機関や調剤薬局の経営状況等さまざまな観点から掘り下げた議論をして欲しい」と述べた。

 また、定例代議員会で出席した代議員から、次期診療報酬改定について、薬価改定財源が診療報酬本体に充当されないのではないかとの懸念が出されたことに触れ、「薬価差は、制度発足時に十分な技術評価ができなかったことから生じたもので、不足分に相当する潜在的技術料の意味合いがあった。年末の予算編成に向けて、薬価財源等を活用し、技術を充実させ、医療の安全・安心を図ることが必要であることを強く主張していきたい」とした。

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)


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