白クマ
日医白クマ通信 No.200
2005年8月22日(月)


平成17年度第1回感染症危機管理対策委員会
スマトラ沖地震・インド洋津波災害後の6カ月の現況が報告される

平成17年度第1回感染症危機管理対策委員会


 感染症危機管理対策委員会では、大利昌久委員が、スマトラ沖地震・インド洋津波災害後の6カ月の現況について、スリランカの状況を 報告した。

 スリランカの医療サービスは、一般医療、救急医療ともよく整備されており、幸いにも感染症の集団発生はないが、今後は、長引く仮設住宅の環境、雨季の始まりにより、引き続き感染症対策が必要と話した。(全文は下記参照)

 平成17年度第1回感染症危機管理対策委員会が、8月18日、日医会館で開催された。

 雪下國雄常任理事はあいさつのあと、(1)日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて、(2)予防接種法施行令の一部を改正する政令等における麻しん風しん混合ワクチンの導入について、(3)結核性髄膜炎と粟粒結核の月齢・年齢別推移、年次別推移を踏まえて6カ月までのBCGダイレクト接種について、説明を行った。その後、意見交換を行った。

 つづいて、2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震・インド洋津波災害後の6カ月の現況について、現地調査を行った大利昌久委員より報告がなされた。

 この調査の目的は、(1)感染症流行リスクに関する研究実施のための基礎調査、(2)地震、津波後の健康被害の現状把握とその対応(含むメンタルへルス)、(3)地震、津波災害などの危機管理対応把握−などである。

 調査地域は、インドネシアに次いで死者、被災者の多かったスリランカ。

 調査期間は、2005年6月16日から6月24日。

 大利委員の説明は、以下の通り。

 (1)医療サービスは、一般医療、救急医療ともよく整備されている。

 (2)被災状況は、スリランカ国内の連絡が行き届かず、沿岸すべてで被災し、43,000人が死亡、5,600人あまりが行方不明。

 (3)感染症の状況は、幸いにも集団発生はない。理由は、a.あらゆる感染源が津波で一掃されたb.緊急支援が早かったc.識字率も高く、市民の知的レベルも高かったd.もともと医療制度がしっかりしていた−などが考えられる。今後は、下水道の不備、水たまりが多いので、デング熱・マラリアの発生、野犬、予防接種をしていない飼い犬が多いので、狂犬病が問題になる可能性がある。

 (4)生存した人たちが、救助活動を行い、遺体の収容も手伝った。宗教団体、特に仏僧が遺体収容に活躍し、寺院、学校など公共建物に収容した。多額の支援金、50〜60億ドルが集まり、政府はどのように配布するか混乱し、民間、NGOの支援が早かったとされている。当初は、援助漬けの傾向があったが、時が経つにつれて援助物資は先細り。支援には統一性がなかったという反省はあるが、被災者ニーズをすべて満たそうとすると支援は際限がなくなる。

 (5)避難所には飲料水タンクは設置されているが、トイレは絶対的に不足している。

 (6)医療状況については、現在のところ感染症対策は功を奏しているが、今後は、長引く仮設住宅の環境、雨季の始まりにより、引き続き感染症対策が必要。

 最後に、大利委員は、感染症研究のシステム化、現地医療スタッフの教育などが求められていると述べた。

 なお、詳細については、11月初旬に開催予定の感染症危機管理対策協議会(公開)で報告されることとなっている。


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