白クマ
日医白クマ通信 No.346
2006年3月10日(金)


2005年日本国際博覧会(愛・地球博)における救急・災害医療体制について

―はじめに―

 今回の万国博覧会では国内外から約1500万人の来場者を見込みましたが、実際の来場者は予想を遙かに上廻る22,049,544人となり、大成功のうちに博覧会を閉じることができました。傷病者も予想を上廻るものでしたが、過去に開催された博覧会における傷病者の比率(0.1% )とは大きな差異は認められませんでした。これも国際博なるが故に施された国際レベルの医療安全対策が充分に機能した成果であると愛知県医師会では考えています。

 医師会活動しては、日本医師会の救急・災害医療対策委員会に常に活動内容を委員会内で報告・協議させて頂きながら、愛知県内の3次・ 2次・1次の救急医療の基盤体制を核として、県内外を問わない救急・災害医療に携わる全ての職種の方々に関わっていただき、ご協力をいただけたことが、非常に貴重で有り難たかったことと考え、感謝しています。

 今後に向かっては、日本国内にて同様規模の国際イベントを催す際には、多くの参考となる貴重なデーターが残せた2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の救急・災害医療体制であったと確信しています。

1)診療所・応急手当所
 長久手会場には北ゲート診療所と西ゲート診療所の2カ所と瀬戸会場には1カ所に診療所を設置し、それぞれ医師、看護師、事務員が配置される。医師、看護師は主に愛知県医師会員、県立病院、四大学附属病院、日本赤十字社およびその他の基幹病院から派遣される。また 、看護師・事務のみで編成され、常に診療所の医師と映像にてコンサルト可能な応急手当所が5カ所設置された。熱中症患者313人を始め、総患者数は21,121人、そのうち重症患者は6人、中等症患者は533人、場外搬送は324人であった。

2)救急専門医の常駐
 開催期間中、愛知医科大学の野口教授を指導者として、愛知県内279人の救急専門医が中心となり、他地域からの応援を含め、博覧会開催時間内(9:00〜22:00)を待機し、消防機関と会場内での重症傷病者発生時、集団災害発生時の初期トリアージ業務などを担い、更に会場内にてボランティア救急救命士に対するメディカルコントロールドクターとしての役も担う体制が有効に機能した。

3)万博消防署とメディカルコントロール体制
 会期中、博覧会会場内に設けられた万博消防署に所属する救急救命士と1,071人のボランティア救急救命士に対し、メディカルコントロール協議会が設置され、その業務内容は協議会を介して常に指示、検証された。その結果、AEDを使用した患者は5例あり、そのうち4例 (80%)は社会復帰することが出来た。

 また、集団災害等が発生した場合には、博覧会開催直前に愛知県が作成した「大規模災害時医療救護マニュアル(愛知万博に備えて)」に明記される災害拠点病院を中心に編成される愛知県災害派遣チーム(愛知DMAT)を要請し実施可能な基本体制が確立された。

◆問い合わせ先:愛知県医師会業務第1課 TEL:052−241−4138

(文責:愛知県医師会理事 稲坂博)


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