白クマ
日医白クマ通信 No.383
2006年4月27日(木)


【京都府医師会】森会長 会長就任インタビュー

森会長


◆森会長の経歴◆

 昨年11月30日に締め切られた会長選挙で、森洋一氏が無投票で当選した。
森新会長は、昭和22年京都府の出身。昭和47年に京大医学部を卒業、現在、長岡京市で小児科医院を開設。府医理事・副会長を経て、平成18年現職に就任。58歳。

(1)会長就任にあたっての抱負
社会が猛烈な速度で変化しています。医療制度改革も同様で、一瞬の躊躇が命取りになりかねない状況に置かれています。一方で、常に言われていることですが、恣意的であろうとなかろうと医療への信頼が大きく揺らいでいることも又事実であります。医療への信頼を取り戻し、我々が真に国民にとって最善の医療を提供することが可能となるような日本の医療制度の構築を目指していることを理解してもらうための不断の努力を傾けたいと思っています。そのためには、国民の健康と生命を守る医療学術集団としての研鑽と国民から信頼し尊敬されるに値する品格がもてるよう今まで以上の努力が必要です。また、京都府医師会では、25年以上にわたって多くの会員の理念が一定の方向に向かって医師会活動が継続されてきた。活発な議論の過程を経て、お互いが相手の意見を尊重し導き出された結論に向かって一致団結して活動してきました。今後も京都府医師会では、理事役員一同一つの方向性を持って活動してゆくことになりますが、最近の日本医師会においては、執行部の理念がいかされるような方向性での議論が十分になされていないように思われますし、人材の継続的な育成がなされておらず、弱体化に向かっているのではないかと危惧しております。厳しい医療状況の中、自院の診療を犠牲にしてまで、日医執行部に取り組もうという有能な若い人達が中央に出て活躍し難い状況にあります。また、2年や4年で、権力争いのような会長交代が行われているようでは、一般会員の日医離れを加速しかねません。また、その都度、副会長、常任理事も交代していたのでは、日本医師会の会務に貢献したいというような人材は出てこないでしょう。また、40代50代の優秀な人材の育成もままならないと考えます。「国民の健康と生命を守る日本の医療制度」を維持し、発展させるという目的は同じはずなのに、結果として、全国の医師の力が結集できないという自己矛盾の解決に力になれたらと考えております。医政は、我々の要求を実現するためには必要なものですが、あくまで手段であります。国民に圧力団体であるとか、自分たちの収入しか考えていないと指摘されるようでは逆効果にしかなりません。我々の提言を国民に提示して、了解をえられれば、政治家も取り入れてゆかざるを得ないし、官僚もその方向での施策を検討せざるを得なくなるはずです。経済界のためではなく、政治家のためでもなく、まして医師会のためでもなく、真に国民にとって必要な医療を十分に提供できる、国民の目線にたった日本の医療制度のあり方について京都から発信してゆきたいと考えています。

(2)現状の医療制度をどう評価しているか
我が国の医療制度は、昭和36年の皆保険制度発足以来、低い医療技術評価にもかかわらず医師を始めとする医療従事者の献身的な努力で世界に誇るべき水準にまで到達してきました。ただ、社会状況も大きく変化し、国内の状況も大きく変化してきた結果、地域における医療機関や医師、医療従事者の偏在や、診療科への医師の偏在など、新たな課題も山積しています。議論が苦手な国民ではありますが、終末期医療、在宅医療、小児を始めとする救急医療、大学病院を始めとする先端医療のあり方など、積極的に議論を深め、国民の理解を深めなければ、我が国の医療制度の課題は克服されないと思いますし、医療資源の公平な配分と供給が困難になると思います。今まで以上に、わが国の医療制度の現状と課題を周知し、その将来のあり方を医療受給者の目線を交えて議論してゆくことが必要と考えています。また、WHOの報告書にあるように、我が国の医療制度の成果は認められていますが、パフォーマンスといわれる医療内容を含めた治療の標準化や達成度などについては、まだまだ改善されるべき点もあり、そういう意味での効率化の余地は残されていると考えております。しかしながら、現在、経済財政諮問会議が医療費削減を目的とした医療の効率化には反論してゆかなければなりません。

(3)会員に向けて一言
今や、医療状況は厳しさを増すばかりであり、誰かが何とかしてくれるとか、自分の診療をしてさえいればよいのだという時代ではなくなりました。また、多くの勤務医も、医師会活動には無関心で、月五百円、千円の会費ですらもったいないと考える人が多いようです。しかし、いくら無関心でも、日本にいる限り日本の医療制度下でしか医療を行うことは出来ません。まさに、日本の医療制度の発展のために、誰かがなんとかしてくれる時代は終わりました。何をなすべきかを真剣に考え、一人一人の医師が積極的に医師会活動に取り組まなければならない時期に来たと言えるのではないでしょうか。

(4)座右の銘
特には、ありません。一般の人たちに分かりやすい話をし、医者らしくないと言われて生きてきましたし、何事も、「なせばなる・・・」の精神でやってきました。難しいことは言えません。これからも、変わらぬ姿勢でやってゆくと思います。

◆問い合わせ先:京都府医師会 TEL:075-312-3671(代)


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