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中央社会保険医療協議会 「産科医療・がん対策の推進に関する評価見直し」 |
「産科医療」については、産科・産婦人科の医師、分娩取り扱い施設がともに減少する一方で、低出生体重児や高齢出産等の危険性の高い症例が増えている現状がある。また、前回改定で新設した“ハイリスク分娩管理加算”の対象疾患には、前置胎盤や心臓疾患等の合併妊娠が入っておらず、膠原病や腎疾患の合併妊娠など、妊娠管理が難しい症例もある。さらに、周産期ネットワークが整備されていても、搬送の受け入れ先の決定に相当な時間を要するケースなどが指摘されている。 そこで、(1)ハイリスク分娩管理加算の対象の拡大、(2)緊急の母胎搬送の受け入れ評価、(3)ハイリスク分娩管理加算の対象患者と、分娩監視装置による諸検査やノンストレステスト等の対象患者の整合を図る―の3点を論点に協議した。 竹嶋康弘副会長は「分娩がどこでも受け入れられるような体制が必要だ」と主張し、中核となる総合周産期母子医療センター等が周辺施設の分娩取り扱いの減少により、正常分娩を受け入れざるを得ないため、限界以上の分娩件数をこなしている事例を紹介し、さらに「20〜40歳代の産婦人科医の6割を超える女性医師に対する支援等の評価も必要」と述べた。 鈴木満常任理事は、産科医療は訴訟リスクも高いなど、診療報酬上の評価だけでは対応し切れない問題があることを共通認識として持つことが必要であると強調した。 議論の結果、安心できる産科医療の実現が求められており、拡充していく方向で検討を進めることになった。 「がん対策の推進」については、がん対策基本法の成立を受けて本年6月に閣議決定した「がん対策推進基本計画」で重点的に取り組むべき事項とされている「放射線療法・化学療法の推進、これらを専門的に行う医師等の育成」「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」「がん登録の推進」などに関連し、(1)放射線療法・化学療法、(2)緩和ケア、(3)がん診療連携拠点病院の機能強化、(4)リンパ浮腫の治療―の4点に対する評価のあり方について検討した。 (1)の放射線療法については、a.放射線療法の質の向上を図るため、治療計画策定や精度管理体制を評価 b.外来で放射線療法を受けられる体制を評価 c.新規技術の評価や既存技術の評価の見直しは、医療技術評価分科会および先進医療専門家会議での検討を踏まえて対応―などが、また化学療法については、質の高い外来化学療法の推進のために必要な人材を配置している医療機関を適切に評価すること―などが論点とされた。 鈴木常任理事は、例えば認定看護師を評価するような新たな外来化学療法は不要であり、まずは実施施設を増やしていくなど、確かなところから対応すべきと主張した。 (2)では、a.がん性疼痛の緩和目的の医療用麻薬を投与している患者に対し、計画的な医学管理や療養上必要な指導を評価することで、がん患者が質の高い療養生活を送れる体制を整備していく b.緩和ケアチームの充実と地域の担当医への支援を通じ、入院から外来、在宅への患者の円滑な移行を進める c.在宅での緩和ケアを推進するために、薬剤師の行う麻薬管理等の支援をさらに進める d.緩和ケア病棟が終末期ケア以外の機能を果たせるよう役割を見直す―などの論点を中心に検討した。 (3)では、286ヵ所あるがん診療連携拠点病院の相談支援センターの充実や集学的治療の実施といった機能強化に併せた適切な評価・見直しについて議論された。竹嶋副会長が、指定要件そのものの見直しが必要であるが、地域間格差を念頭に置いて、はざまの部分が出ないよう、地域医療機関との連携をキーワードに対応して欲しいと要望した。 (4)では、リンパ浮腫の発症防止のため、患者へのリンパドレナージ等防止策の指導を評価することになった。 ◆問い合わせ先:日本医師会広報課 TEL:03-3946-2121(代) |
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