|
診療報酬本体の5.7%引き上げを要求−日医 |
要望書では、はじめに、(1)民間医療機関については、「TKC医業経営指標」を用いた分析で、経営の安定性を示す損益分岐点比率は、病院で95.2%、診療所で94.3%と、危険水域と言われる90%台に突入していること、(2)同様に、病院、診療所とも、法人、個人それぞれのカテゴリで、前年度(平成17年度)に比べて減収、減益になっていること、(3)中医協医療経済実態調査結果から分析すると、国公立病院を含め病院全体では100%を超え、赤字となっていること−など、医療経営が危機的状況にあることを説明。そのうえで、地域医療の崩壊を食い止めるためにも、診療報酬本体の5.7%(医療費ベース1兆4,500億円)の引き上げが必要だとしている。 その内訳は、(1)地域医療を支えるためのコストとして3.8%(医療費ベースで9,600億円)、(2)国民の安心を守るためのコスト(医療安全対策)として0.9%(同2,200億円)、(3)医療の質を確保するためのコストとして1.1%(同2,700億円)が、それぞれ必要になると明記。(1)に関しては、赤字を解消し、最低限の収入変動には耐えられるよう、国公立病院を含めた全体で損益分岐点比率を最低98%にするための額であると説明。また、(2)については厚労省の「平成18年度医療安全に関するコスト調査業務報告書」に示された患者1人1日当たりコストを基に、少なくとも現在かかっているコストをカバーできること、(3)については賃金上昇率、物価上昇率−を考慮に入れて、それぞれ試算した数値となっている。 なお、「医師不足対策、医師の就労環境改善対策」「レセプトオンライン請求に向けての環境整備」「医療事務軽減等のためのコ・メディカル要員増」「環境対策コスト」などの重要な課題については、一般財源で措置するもののほかは、今後、引き続き精査し、次回以降の改定で要望するとした。 要望書提出後、厚生労働省で記者会見した唐澤会長は、「日本各地の医療機関は疲弊しており、医療崩壊寸前の状況にある。診療報酬の引き上げを要望することは、患者や保険者にも影響が出ることではあるが、医療崩壊を食い止めるためには新たな財源が必要と考え、今回の要望を行った」と要望書提出に至った経緯を説明した。 一方、要望書の内容を説明した中川俊男常任理事は、5.7%という数値について、「小泉政権時代に合計8兆円の医療費が削減されている。次回の改定では少なくとも損益分岐点比率を98%に戻してほしいと要望しているわけで、決して無理な要求であるとは思っていない」と主張。また、診療所医師の取り分を削って、病院勤務医に回すという考え方については、「診療所も減益・減収となっており、決して余裕があるわけではない。病院勤務医の待遇が低いことが問題であり、それを解消するためにも、新たな財源が必要になる」と反論した。 ◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代) ◇定例記者会見資料はこちらから
|
日本医師会ホームページ http://www.med.or.jp/ Copyright (C) Japan Medical Association. All rights reserved. |