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栃木県医師会「第47回栃木県総合医学会を開催」 |
栃木県の実態として、福田勤務医部会長から、中核病院(13病院)の勤務医数について過去10年間の推移が報告された。常勤医総数は2000年〜2004年まで微減かほぼ横ばいだが、新臨床研修制度スタート直後の2005年は、前年比44人の急減がみられた。診療科別では、小児科が2001年のピーク時に比べ7人減の36人、産婦人科は10人減の35人、内科も2000年のピーク時から40人減の183人となり、県内複数の地域で小児救急体制が厳しい状況にあるほか、産婦人科を休止し、分娩対応を縮小するなど深刻な影響がでている。これらは新制度導入に伴う大学医学部の派遣医師引き揚げに加え、勤務医減がもたらす過重労働、医療行為をめぐる訴訟のリスクなどが原因と指摘した。 また、大学の対応として島田自治医大病院長は、「新規入院患者数が1998年度に比べ、2006年度は約9,000人の増、救急患者数(休日・夜間)も約1万2千人の増となり、医師の宿日直は最高で月13回に上った」と報告し、「医師や看護師の確保が望めない今、県民が医療の実態を正しく認識し、診察を受ける行動を適正化する必要がある。また、一次救急や時間外診療には開業医の参加を」と呼びかけた。 続いて、「尾道方式」として注目される、山脇尾道市立市民病院副院長は、「病院で亡くなる患者が八割を超える中、特に脳血管障害や神経難病の患者は在宅療養を基本に考えるべきで、患者の望む地域に復帰させることを医師会と連携をはかりながら進めていくことが重要」と訴えた。 最後に、鈴木川崎市立井田病院地域医療部長は、「患者の生命に直結する医療現場の混乱を政府やマスコミは医療費の論議を医療機関の儲け話に、そして医療事故を医師や看護師の資質の問題にすりかえてきた結果、日本の医療危機が国民生活を直撃した。その原因は新臨床研修制度と医療費抑制政策である。医療費抑制政策推進=医療に質の向上と安全性を求めない宣言であり、「老人殺し」、「病院つぶし」、「地方つぶし」、「医療難民促進」、「医療従事者過労死促進」を目指したものである。この諸悪の根源である医療費抑制政策を変え、安全保障というべき医療を何よりも重視すべきである。また、医師不足を招いている新臨床研修制度を即廃止すること」と問題点を指摘し、その改善策を示した。 続いて、宇沢東京大学名誉教授による「日本の医療と市場原理主義」と題した特別講演が行われた。 宇沢先生は、日本の医療そして国民皆保険制度の素晴らしさを述べたあと、医療費抑制政策による日本の医療が崩壊の危機にあると訴えた。最高水準の医療を提供していた病院の多くが経営難に陥っており、特に地方の中核病院は深刻である。この事態を招来させたのは、儲けることを人生最大の目的とした「市場原理主義(倫理的、社会的、人間的な営為を軽んずる生きざまを良しとする考え方)」とよばれる経済学の思想である。医療の分野で、規制緩和、効率化の名のもとに、実質的には官僚的管理を極端な形に推し進めてきた結果、日本は戦後最大の危機を迎えていると述べた。 当日は、153名の参加者があり、会場は大きな拍手につつまれ、盛会のうちに幕を閉じた。 (文責:情報担当理事 前原 操) ◆問い合わせ先:栃木県医師会 TEL:028-622-2655 |
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