白クマ
日医白クマ通信 No.771
2007年11月6日(火)


中央社会保険医療協議会
「医療経済実態調査の問題点と医業経営の実態について」主張

 中医協の総会および診療報酬基本問題小委員会が、10月31日、厚生労働省で開催された。

 総会では、医療機器の保険適用(44件)、臨床検査の保険適用(2件)、先進医療専門家会議の報告(2件)について審議を行い、中医協としてこれらを承認した。

 次に、「第16回医療経済実態調査結果速報(報告)」についての説明があった。これに関連し、日本医師会から「医療経済実態調査の問題点と医業経営の実態について」を提出し、1.中医協・医療経済実態調査の問題点、2.医業経営の実態[(1)「TKC医業経営指標」にみる医業経営の分析 (2)機能別分析―中医協・医療経済実態調査より―]について、中川俊男委員(日医常任理事)が説明した。

 それによると、1.では、a.定点調査でない弊害として、調査年によって規模が違い、医業収入の増減に影響、定点調査によるものも調査施設数が少なく、定点・非定点で結果が異なる b.結果の示し方としては、個人と法人では意味が違うにもかかわらず、一般診療所の費用や収支差額を合算して示している c.有床診療所(個人)の特殊なケース(外れ値)が全体を底上げしている d.6月単月調査のため、小規模診療所等では当該月に発生しない年間発生額の推計・記入が困難で、費用が小さく計上され、収支差額は大きく出やすい―など、実調の問題点を指摘。

 2.では、日医が、TKC全国会(会員数約9,500名の税理士、公認会計士のネットワーク)から提供を受け分析している「TKC医業経営指標」を基に分析した病院、診療所における経営分析(ともに減収・減益)や損益分岐点比率(90%以上は危険)等のデータを示しつつ、「病院・診療所とも“危険水域”に突入しており、早急な手当てが必要」と結論付けた。さらに、「TKC医業経営指標」で採取していないデータについては、実調データを基に機能別分析を行い、(1)医業収支差率が、特定機能病院、DPC病院は、それぞれ▲9.8%、▲1.3%の赤字であり、一般病院(医療法人)で+2.5%と黒字であるのは、収入減(▲8.0%)をカバーする費用削減(▲9.1%)で対応したこと、(2)「7対1」入院基本料算定病院は給与費率が高く赤字であり、特定機能病院では、医業原価率も高く赤字幅が大きいこと―を示した。

 支払側からも全体の統計のとり方について共通認識でいること、TKC分析を急いで提出したことについて感謝の意が表明されるとともに、支払側として11月中旬までに意見を出すと述べた。

 今後は、調査結果を踏まえての意見を双方より提出して議論を行い、診療報酬の改定率について中医協としての意見をとりまとめ、厚生労働大臣へ進言することとなった。

 基本小委では、診療報酬改定に向けた検討項目についての議論が行われており、当日は、(1)画像診断の評価、(2)処置、(3)地域医療―について検討した。

 (1)では、画像のデジタル化率が平成18年度には医科診療で70%を超えているが、フィルム費用が減っていないので、「デジタル映像化加算を廃止してフィルムレスによる画像管理技術を評価すること」、画像診断の普及・高度化により1件当たりのデータ量が飛躍的に増大していることが画像診断医の過重負担となっていることから、「臨床診断の基礎となる画像診断報告の質を確保する体制の見直し」などが論点として挙げられた。これに対し、鈴木満委員(日医常任理事)は、70%の普及率は、病院に限定した場合ではないかと指摘。プライマリの現場(診療所)の実態とは乖離しており、医療の質の保証は、全体的に配慮すべきだと強調した。さらに、病院志向が進み、格差につながることが懸念され慎重に検討すべきと述べた。なお、フィルムの費用が減らない理由については事務局も分析できていない。

 (2)では、「医師による診断と適切な指導があれば患者本人もしくは家人でも行うことが可能な6つの処置について、診療報酬上の評価は行わず、基本診療料に含まれるものと考えてはどうか」が論点とされた。竹嶋康弘委員(日医副会長)は、改定財源を捻出するための項目であろうが、これまで何度も主張してきたが“財源中立”で考えることは問題であると指摘した。

 (3)については、地域連携クリティカルパスが平成18年度改定で大腿骨頸部骨折に限り評価されているが、今回は脳卒中を医療計画に記載のある病院・診療所に限定して追加してはどうかとの提案がなされた。平成20年4月から実施される新たな医療計画では、4疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病)の医療連携体制が構築されることになっている。

 鈴木委員は前回、大腿骨頸部骨折にパスを導入したことで有意差は出ているのか確認するとともに、平均在院日数の短縮だけでなく患者によいものとなるような検証が必要であると指摘した。その他、他の委員から医療計画は進んでいないという話があり現状報告について要請がなされた。

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