白クマ
日医白クマ通信 No.773
2007年11月6日(火)


中医協基本小委(11月2日)
「勤務医の負担軽減策等について議論」

中医協診療報酬基本問題小委員会


 中医協診療報酬基本問題小委員会が、11月2日、厚生労働省で開催された。

 当日は、診療報酬改定の検討項目のなかの「勤務医の負担軽減策」「外来管理加算」「後期高齢者医療(外来医療)」について議論が行われた。

 「勤務医の負担軽減策」については、中医協事務局から、勤務医の苛酷な労働状況の現状について医政局作成資料を基に説明があり、その改善策として、(1)地域の急性期医療を担う病院に限定して、医師の事務作業を支援する事務職員(メディカルクラーク等)の人員配置について診療報酬上評価してはどうか、(2)診療所における開業時間の夜間への延長など、時間外診療に対する評価を重視してはどうか、(3)十分な人員配置および設備等を備え、産科、小児科、精神科等を含む総合的かつ専門的な医療をいつでも提供できる入院機能について、診療報酬上で高い評価をしてはどうか、(4)(3)のような機能を持つ病院については、地域の他の医療機関との連携体制に基づく外来の縮小等、勤務医の負担軽減策を行うことを診療報酬の評価の要件としてはどうか―との提案が示された。

 まず、医政局作成資料について、鈴木満委員(日医常任理事)は、特に診療所の常勤医師の平均勤務時間が週40時間を下回っているとの説明があったことについて、日医が7月に実施した「診療所の診療時間および時間外活動に関する調査」では、診療所医師の勤務時間は週46.4時間であり、勤務医と変わりはなかったことを説明。決して診療所医師が楽をしているわけではないと反論した。

 (1)について、鈴木委員は、「医師の仕事を補助するためには守秘義務や豊富なキャリアが要求されるので、安易な配置は返って現場に混乱を招く」と指摘。さらに日医調査では、文書代行に加え、他の医師との連携、福祉との連絡、手術室の予約、患者への説明は午後5時以降に行うことが多いなど医師は忙しく、これらの体制を整えるために新規財源を充てることが必要であると述べた。この件に関しては、今後、その要件等について、さらに検討していくこととなった。

 (2)については、鈴木委員が、今回の提案が初・再診料の引き下げが前提となっているのであれば「大反対である」と明確な姿勢を示した。さらに、開業時間は地域差が大きいこと、各県で医師数が違うことを強調し、安易な組み換えは反対であると述べた。また、自院での夜間診療のインセンティブが高まると休日夜間急患センターや在宅当番医などの医師の確保が難しくなり、地域の休日夜間急患システムが崩壊しかねないと指摘した。

 さらに、(3)、(4)についても、「このことによって、他の医療機関の勤務医が過重労働になるのではないか。医師の引き抜きなど、7対1入院基本料問題が再燃する心配がある」と危惧。この件には賛成しかねると述べた。他の委員からも、病院では外来は入院の予備軍になっているので、外来収入が減ることで入院収入も減り、勤務環境も低下するとの指摘がなされた。

 「外来管理加算」については、処置を実施した場合より、処置を行わず外来管理加算を算定した方が高い点数になり分かりにくいとの指摘があることから、分かりやすい診療報酬体系とするために、患者への懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等に要する時間の目安を設けてはどうかとの考えが示された。

 鈴木委員は、「計画的な医学管理を評価する“唯一無二の無形な技術料”が医療機関の経営を支えていることも事実だ」と説明。非常に大きな影響を持つ点数であるため、早急な結論は現場の疲弊を加速させるだけであり、慎重なうえにも慎重な審議をお願いしたいと述べた。また、時間ではなく、別の指標を使って評価することはできないかとの考えも示した。

 「後期高齢者医療(外来医療)」については、(1)初診に係る診療報酬上の評価を引き上げる一方、再診料については引き下げを行う、(2)骨子に記された後期高齢者を総合的に診る主治医の取り組みに対して、年間の診療計画を作成させ必要な検査を包括した1カ月当たりの点数を新設する―との考えが示された。

 これに対して、竹嶋委員(日医副会長)は、「日医は、かねてから75歳を境にして、受けられる医療の内容が変わることはあってはならないと主張しており、この提案には賛成できない」と主張。後期高齢者を診る際には、本人に説明するだけでなく、その家族に対して病状を説明しなければならない場合もあることを示して、むしろ再診料は引き上げるべきとの考えを示した。

 さらに、(2)についても、「総合的に診る医師の評価は不要であり、主治医は医師が手を挙げるものではなく患者さんが決めるものである。主治医がどういうものかを検討せずに、この議論を前に進めることはできない」と強調した。

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