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中医協基本小委(11月28日) 「お薬手帳」の記載情報把握の義務付けに反対―日医 |
中医協診療報酬基本問題小委員会が、11月29日に厚生労働省で開催された。
当日は、診療報酬改定に向けた検討項目のなかの(1)療養病床から転換した老人保健施設における医療サービスの給付調整、(2)療養病棟入院基本料、(3)後期高齢者医療(薬歴管理、外来医療)について、議論が行われた。
(1)については、「療養病床から転換した介護老人保健施設」において、緊急対応的に医療提供が必要となる場合の医療サービスの診療報酬上の評価について検討が行われた。具体的には、「緊急時に専門的な診断技術が必要となる処置等について、医療機関の医師が行った場合に診療報酬上算定できる項目を見直す」「夜間または休日に施設のオンコール医師が対応できず、医療機関の医師が診療した場合に、併設の医療機関であっても、診療報酬上評価する(緊急時施設治療管理料(仮称)の創設)」が論点として示された。
議論のなかで、鈴木満委員(日本医師会常任理事)は、まず、「このような施設に医療ニーズの高い人たちがいるということは、療養病床の再編計画自体に無理があったのではないか」と述べ、厚労省の考え方を改めて批判。そのうえで、「日医は、医療と介護のすみわけということを常々主張してきたが、今回の措置は、その第一歩と考えている。医療を必要としている人たちに対して、医療提供がしっかり行えるようにすべき」と要請した。
他の委員からは、「転換型だけでなく、従来の老人保健施設にも今回の措置を認めるべき」等の意見も出された。
(2)については、診療報酬調査専門組織慢性期入院医療の包括評価分科会が取りまとめた「平成18年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」報告書の結果を基に、その見直し案が示された。
鈴木委員は、報告書でも大きな矛盾があるとされた医療区分による点数設定の見直しが論点として示されないのはいかがなものかと指摘。竹嶋康弘委員(日本医師会副会長)も、「何度も主張してきたが、区分1の点数設定は余りにも低くコストに見合っていない」とその是正を要請した。これに対して、中医協事務局は、「療養病床全体でコストに見合っている。医療区分1は介護に行くべき患者であり、現に減少してきている。点数を引き上げると移行が止まってしまう」と述べ、結論は出なかった。
また、鈴木委員は、有床診療所は医療区分1の患者さんの受け皿となっていることを指摘し、有床診療所の療養病床の転換はどのように考えているのかと厚労省の考えを質した。これに対して、厚労省からは、「有床診は地域医療のなかで大きな役割を果たしており、今回の転換策は病院だけでなく当然有床診も含まれる。小規模であることも考慮に入れて介護保険による施策を考えている」との回答を得た。
(3)に関しては、薬暦管理について、処方に際して、「お薬手帳」に記載された薬剤の情報を確認するなど、患者の現在の服薬情報および薬剤服用歴を把握することを義務付けることが提案された。
これに対して、竹嶋委員は、お薬手帳を忘れて来る場合が多々あり、義務付けされては、そのような場合に薬を処方できなくなるとし、薬の相互作用や重複投薬の防止を推進するとの方向性には賛成するが、義務付けには断固として反対したいと主張。支払側からも義務付けには反対の意見も出され、実効性があるものに見直しが行われることになった。
また、後期高齢者の初・再診料に関しては、前回の議論が紹介されるのみで新たな論点は示されなかったが、鈴木委員は「前回と意見に変わりはない」と明確に反対の姿勢を示した。
その他、後期高齢者の外来における継続的な医学管理に関連して、対象疾患、年間診療計画(書)、総合的に診る取り組みに包括される診療項目、お薬手帳確認の義務付け、総合的に診る医師の研修、名称などについて具体的な要件のイメージが示され、診療所で担当する想定であるとの説明がなされた。
鈴木委員は「複数の疾患について専門の主治医の存在がある。1人の医師に限定せず工夫が必要である。本日のこれ以上の議論は持ち越しにしてほしい」と述べ、議論を打ち切った。
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