白クマ
日医白クマ通信 No.884
2008年3月28日(金)


定例記者会見
救急災害医療対策委員会答申
「わが国における救急災害医療のあり方について」―石井正三常任理事

石井正三常任理事


 石井正三常任理事は、3月26日、日医会館で、記者会見を行い、日医救急災害医療対策委員会から提出された報告書の概要を説明した。

 それによると、救急災害医療対策委員会が、今期(平成18・19年度)の会長諮問「わが国における救急災害医療のあり方について」に対し、「地域格差の拡大」と「医療資源の集約化」を主題に据えて取りまとめたもので、2月25日、小林國男委員長(帝京大学医学部名誉教授、帝京平成大学教授)から竹嶋康弘会長代行に答申された。

 報告書は、I.救急医療のあり方、II.災害医療のあり方―の2部構成となっている。

 I.の<総論>では、近年の救急医療の地域格差の拡大と集約化は、相互に作用し合って進行。結果として、従前の「初期、二次、三次」の救急医療体制の概念をも根本的に改めるものだとの認識を示した。そのうえで、国の医療費抑制策が根源となり、「地域格差の拡大」と「医療資源の集約化」にかかわるさまざまな課題が発生していると指摘。具体的には、(1) 医師の不足・偏在、(2) 救急医療機関の対応能力の低下、(3) 救急搬送体制やメディカルコントロール(MC)体制整備、(4) 救急医療資源の集約化、(5) 4疾病5事業ごとの医療連携体制、(6) 国公立病院等の再編・統廃合―などを挙げ、それぞれの関係や影響について述べている。

 特に、平成19年8月の奈良県下の妊婦死産例を始めとする救急患者の搬送受け入れ不能問題の主たる要因は、医師の不足・偏在による救急医療機関の対応能力の低下等であり、その結果として地域格差が拡大し、わが国の医療全体を崩壊に至らしめつつあるとしている。

 <各論>では、「初期、二次及び三次救急医療体制の今後」として、以下の3点を取り上げ、見解や提言を述べている。

(1) 救急医療資源の集約化の考え方:「集約」と合わせて「分散」を前提とするべきであり、救命処置後の入院患者受け入れや、外来機能の地域全体への分散と連携を担保する仕組みが必要。さらに、集約化による患者の集中に対し、地域を面でつなぐコーディネーター機能が重要。

(2) 三次救急医療における後方医療機関の整備・充実:救急医療資源の集約化の前提条件。救命処置後の患者を受け入れ、診療やリハビリテーション、介護を提供する体制が不十分な状態では安易な集約化をするべきではない。

(3) 二次救急医療体制の今後:主に地域の一般病院が担ってきたが、医師等の確保や医業経営問題に直面しているなかで、今後のあり方として専門特化や24時間365日運用する通年制、各地域において必要な役割・機能等のスタンダードを明示する必要がある。

 そのほか、電話相談、ドクターカー、ドクターヘリ、転院搬送やトリアージを含む救急搬送体制とMC、ACLS(二次救命処置)研修、一般市民への救急蘇生法の普及・啓発等の項目ごとに、問題点を指摘し、提言を述べている。

 さらに、II.では、わが国の災害医療救護活動において大きな役割を担うこととなったDMAT(災害派遣医療チーム;Disaster Medical Assistance Team)に焦点を当て、日医および都道府県医師会のDMATに対するかかわりのあり方(指揮命令系統の構築や、DMATと医師会救護チームとの役割分担・連携など)を中心に検討し、提言を行うとともに、中央防災会議への日医の参画を改めて要請している。

 最後に、石井常任理事は、最近の救急搬送問題の報道に関連して、「問い合わせの回数・件数の多寡のみによって、“たらい回し”という言葉で括って表現するのは、適切ではないのではないか」との苦言を呈した。同常任理事は、救急医療の高度化、集約化等が進み、既往症や合併症などがある高齢者の増加に伴い、二次病院で受け切れない事例も増えてきているとした。一方では、日本の医療は元々「フリーアクセス」を基本とする社会的背景があり、患者の要望・考えを聞きながら、適切な搬送先を探す必要もあると指摘。したがって、事例ごとにこれらを検証したうえで、いろいろな問題を総合的に考えていく必要があるのではないかとの考えを強調した。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代)

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