白クマ
日医白クマ通信 No.885
2008年3月28日(金)


定例記者会見
「医師会と救急医療に関する調査」の結果を公表―石井正三常任理事

石井正三常任理事


 石井正三常任理事は、3月26日の記者会見で、日医が平成19年4月に実施した「医師会と救急医療に関する調査」の結果がまとまったとして公表した。

 同調査は、かかりつけ医機能を推進し、地域医療の機能分化と連携を図るうえで、救急医療体制の充実は不可欠の課題との観点から、地域医師会による救急医療へのかかわりに着眼して実施[有効回答数は、都道府県医師会:44/47(93.6%)、郡市区医師会:762/819(93.O%)]。郡市区医師会の、選択肢による回答を集計した暫定結果は、すでに昨年7月25日に公表しており、今回は、都道府県医師会からの自由記入回答を中心にまとめたものとなっている。

 「救急医療体制への関与」を聞いた設問では、救急医療対策協議会やMC(メディカルコントロール)協議会等に座長などの主要構成メンバーとして参画するほか、救命救急センターに対する評価への参加、輪番制の集束・実態調査、24時間の二次救急医療体制の整備(東京都「休日・全夜間診療事業」)、医療連携の推進など、都道府県医師会が地域の救急医療体制の再編成にも重要な役割を果たしていることが判明。その他、遠隔医療システムの構築、ドクターヘリ等の導入・事業の充実、救急救命士の養成研修・追加講習への講師派遣、#8000(小児救急電話相談)の受託、ACLS(二次救命処置)研修会の開催や補助の実施、AED(自動体外式除細動器)の普及・啓発などにもかかわっている。

 また救急医療の重要課題である「医療機能の集約化」と「医師等の確保」への対応策や問題点として、「集約化・重点化」に関しては、(1) 都市部と地方の格差助長、(2) 「医療過疎」の進行、(3) 集約先の病院のオーバーワーク、(4) 地域住民の反対、(5) 費用の応分負担―などが、また、「医師の確保」については、(1) 医療対策協議会等への参画、(2) 医学部定員や地元枠の増加要請、(3) 地元高校生への働き掛けによる医学部入学の推進、(4) ドクターバンク事業、(5) 医師不足地域へ赴く医師への支援―などの取り組みと、(6) 勤務医と開業医の協力体制構築、(7) かかりつけ医機能の推進―などの必要性が挙げられた。

 「小児を含む初期救急医療体制」については、医師の不足・偏在の影響が深刻であり、一方で、患者の大病院志向、患者・保護者の受療行動の変化(いわゆるコンビニ化)などが多く、問題視されていた。特に、開業医を対象とした小児の初期救急医療研修事業の実施例が、都道府県医師会による取り組みとして注目された。

 「都道府県医師会の行政へのかかわり」については、コミュニケーションのあり方やその問題点が示され、他方で、行政の救急医療問題に対する関心度の地域差や、行政担当者の人事異動なども問題点として挙げられている。

 日医に対しては、医師等の不足・偏在や、医療財源確保等の医療政策全般に関し、国に強い主張をするようにとの意見が多く出された。

 同常任理事は、郡市区医師会では、休日夜間急患センターや在宅当番医制の運営に積極的にかかわり、地域の初期救急医療体制の構築に尽力していることを紹介。最近では、地域拠点病院に医師会が急患センターを設置、会員が出務するケースも増えているが、国の医療費抑制策の結果、救急患者搬送受け入れ不能問題が起こるなど、地域の救急医療への対応能力が低下していると指摘した。

 そのうえで、今回の調査結果から、各地域の医師会が、救急医療の再生や、かかりつけ医機能の充実・推進のため、初期救急医療を充実させ、二次・三次救急医療体制が機能を十分に発揮できるよう、さまざまな取り組みを実施していることが改めて分かったとして、「今後、各地域における問題や医師会活動等の調査・検討の際の貴重な基礎データとして、また、予算要望などの際の根拠として活用したい」との考えを示した。

◆問い合わせ先:日本医師会地域医療第一課 TEL:03-3946-2121(代)

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