白クマ
日医白クマ通信 No.953
2008年7月10日(木)


定例記者会見
規制改革会議「中間とりまとめ−医療分野」に対する日医の考え示す
―中川常任理事

中川俊男常任理事


 中川俊男常任理事は、7月9日の定例記者会見で、7月2日に規制改革会議が示した「中間とりまとめ−医療分野−」に対する日医の見解を説明した。

 同常任理事は、規制改革会議の「中間とりまとめ」は、十分議論がつくされていないと思われる項目も見受けられ、現状認識についても、不適切な部分があると指摘した。

 まず「現在の医療提供体制は完全に制度疲労を起こしている」に対して、「医療崩壊の要因は制度にあるのではなく、長年にわたる医療費抑制にある。いたずらに制度に手を出すのではなく、まず財源の手当てが必要である。」と主張した。

 さらに「医師の就労環境の悪化に起因する医師不足」には、「医師が不足しているから、就労環境が悪化し、さらに救急や産科医療などから医師が立ち去る。財源の手当てと医師不足の解消が最優先課題である。」と述べた。

 また、「株式会社による医療参入の解禁により、医療機関間の競争が促進され、消費者(患者)を重視した、医療サービスの質の向上につながる。」には、「株式会社は株主への配当を至上命令としており、患者の安心・安全確保よりも、利益の確保が優先する。そのため、不採算事業、不採算地域等から撤退することも考えられ、介護保険の現場では現実に起きている」と指摘した。また「公的保険の枠組みの中では、株主を満足させる配当を確保することは難しい。そこで、混合診療解禁による保険給付外の市場拡大を狙うことになるが、これは保険給付範囲を縮小させ、公的医療保険の崩壊につながる」と強く批判した。

 さらに、「治療成績の良好な医師・医療機関を診療報酬において優遇するといった、質に基づく支払(Pay For Performance、P4P)導入の検討」については、「P4Pは、米国の民間保険業界の効率重視の手法で、効率的な結果をもたらさない患者が阻害され、フリーアクセスが制限されるおそれがある。また診療報酬が高い医療機関にかかろうとすると、公的保険下でも、患者一部負担分が比例して(定率の場合)増える。従来の診療報酬を超える分は全額自己負担、すなわち混合診療になるおそれもある。P4Pには反対である」と述べた。

 「混合診療禁止措置の撤廃」については、「混合診療については、これまでも何度も問題点を指摘し*、反対してきた。また、規制改革会議の主張は、患者の声すら無視していると言わざるを得ない」と批判した。

*2007年11月21日 定例記者会見資料「混合診療についての日医の見解」参照(PDF)>>>

◆問い合わせ先:日本医師会総合医療政策課 TEL:03-3946-2121(代)

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