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平成28年(2016年)3月5日(土) / プレスリリース / 日医ニュース

平成28年度診療報酬改定に関する答申まとまる かかりつけ医の更なる評価、在宅医療の推進、医療機能分化等を評価

平成28年度診療報酬改定に関する答申まとまる かかりつけ医の更なる評価、在宅医療の推進、医療機能分化等を評価

平成28年度診療報酬改定に関する答申まとまる かかりつけ医の更なる評価、在宅医療の推進、医療機能分化等を評価

 中医協総会が2月10日、厚生労働省で開催され、平成28年度診療報酬改定に関する答申がまとまり、田辺国昭中医協会長(東京大学大学院法学政治学研究科教授)から塩崎恭久厚労大臣(代理:竹内譲厚労副大臣)に提出された。
 これを受けて日医では、同日、日本歯科医師会、日本薬剤師会及び四病院団体協議会と共に、相次いで記者会見を行い、横倉義武会長が今回の改定に対する日医の考えを説明した。

 中医協総会では、厚労省事務局からこれまでの議論を踏まえて作成された短冊に具体的な点数を盛り込んだ答申案が示され、診療・支払両側がこれを了承。答申書には、「急性期、回復期、慢性期等の入院医療の機能分化・連携の推進等について、影響を調査・検証し、引き続き検討すること」等、18項目からなる附帯意見が付けられることになった。
 答申取りまとめを受けて、診療側を代表して意見を述べた松本純一常任理事は、「当初の議論から、診療・支払両側には大きな隔たりがあり、いまだに認識の差が埋められていないところもあるが、双方が歩み寄り、答申できたことは良かった」と感想を述べた。
 なお、日医では、今回の答申取りまとめを受けて、改定の内容を伝達することを目的とした、都道府県医師会社会保険担当理事連絡協議会を3月5日に開催することにしている(本紙4月5日号にて詳報予定)

三師会合同記者会見

地域包括ケアの推進に向け少ない改定財源の中でそれなりの評価ができた─横倉会長

 三師会合同記者会見には、横倉会長、山科透日歯会長、山本信夫日薬会長始め、中医協委員である、中川俊男・松原謙二両副会長、松本常任理事、遠藤秀樹日歯常務理事、安部好弘日薬常務理事が出席した。
 横倉会長は、「限られた財源の中でも、超高齢社会に対応する上での最重要課題である地域包括ケアの推進に向けて、地域における医療資源を有効活用しながら、必要な財源配分をすることが重要になる。今回の改定では、前回改定に引き続き少ない改定財源の中ではあったが、それなりの評価ができた」との考えを示した。
 また、「財政を緊縮しようとする立場から、成長戦略や規制緩和の名の下に、保険給付範囲を狭める圧力が続いていくことが予想される。世界に冠たるわが国の国民皆保険が崩壊する一番の要因は、『財源抑制による給付範囲の縮小』によりもたらされる可能性が高い」として、「財政主導ではなく、時代に即した『改革』を進めながら、過不足ない適切な医療が提供できるよう、我々医療者側から提言していかなければならない。平成30年度の医療と介護の同時改定に向け、早々に検討を開始すべきであり、医療を支える三師会は、相互に連携し、国民誰もが必要な医療を過不足なく受けられるよう邁進(まいしん)していく」とした。
 山科日歯会長は、「いくつかの点で特色があり、期待できる」と評価するとともに、かかりつけ歯科医機能については、「地域包括ケアシステムの中で多職種連携を図りながら、地域完結型の医療を推進する足掛かりとなる」との考えを示した。
 山本日薬会長は、「規制改革会議等で調剤に対する厳しい指摘があった中で、医科:歯科:調剤の比率をこれまでどおり維持できたことは評価する」とした上で、かかりつけ薬剤師の推進が盛り込まれたことについては、「評価の新しい基軸が出されたと受け止めており、地域包括ケアシステムの中で、地域医療提供体制を支える一員としての役割を果たしたい」と述べた。

日医・四病協合同記者会見

7対1入院基本料の見直しの影響を早急に検証すべき

 引き続き行われた日医・四病協合同記者会見には、日医から横倉会長、中川・松原両副会長、松本常任理事が、日本病院会から堺常雄会長、万代恭嗣常任理事が、全日本病院協会から西澤寛俊会長、猪口雄二副会長が、日本医療法人協会から伊藤伸一会長代行が、日本精神科病院協会からは山崎學会長が、それぞれ出席した。
 横倉会長は、医科部分の改定のポイントを、(1)患者に身近な診療所や中小病院のかかりつけ医の更なる評価、(2)在宅医療の推進、(3)入院の機能分化、(4)医療技術の適正評価、(5)医薬品の適正使用─の五つに分けて、それぞれ説明した。
 (1)では、地域包括診療加算や地域包括診療料の要件が緩和されたこと、また、認知症や小児において新たにかかりつけ医機能の評価がなされたことを評価するとともに、特定機能病院及び一般病床500床以上の地域医療支援病院において、紹介状なしで受診した場合の定額負担が導入されたことに関しては、「こうした外来機能分化の動きの中で、かかりつけ医機能を強化し、今後の改定で更なる評価を求めていきたい」とした。
 (2)では、「同一建物居住者の場合」の定義見直しや、同一建物での診療人数による評価の細分化が実施されたことを評価するとともに、今回一定の要件の下に認められた在宅医療を専門に行う医療機関については、「在宅医療を担うかかりつけ医をバックアップするために、地域包括ケアシステム推進の中で、積極的に地域医師会と協力して、地域医療を守って欲しい」と述べた。
 (3)では、7対1入院基本料の要件が厳格化されたことについて、「急激な見直しにより医療現場に混乱が起きれば、最終的に不利益を受けるのは患者であり国民である」とした上で、該当患者割合が引き上げられたことなどについては、「医療現場の影響をしっかり検証した上で、必要であれば早急に対応を行うべきだ」とした。
 (4)では、「手術報酬に関する外保連試案」の改訂に基づき、手術料の見直しが行われたことは評価するとした他、(5)では、長期処方が残薬の原因の一つとなる場合もあることから、薬剤師との連携を通じて、処方の見直しや、より適切な服薬指導・薬剤管理が行われることを期待しているとした。
 続いて、四病協の各団体から今回の改定に対する考えが示された。
 堺日病会長は、病棟群単位での届出が可能になったことについて、病床機能報告制度の実態と併せて、診療報酬の手当として必要かどうか適切な検証が必要とした。
 西澤全日病会長は、7対1入院基本料の要件が厳格化されたことについて、「7対1をどれぐらいの医療機関が算定できなくなるか懸念している」と述べるとともに、人件費を上げられない中での医療の質の担保が課題になるとした。
 山崎日精協会長は、「看護職員の月平均夜勤時間数の要件の緩和」や「入院中の他医療機関受診時における減算規定の緩和」を評価。
 伊藤日本医療法人協会会長代行は、二次救急医療機関における夜間休日救急搬送医学管理料の拡大について、「評価するが、人件費を賄うという意味からすると十分ではない」と述べた。
 その後の質疑応答では、中川副会長が、「7対1入院基本料の要件である『重症度、医療・看護必要度』は、2年前に見直したばかりであり、朝令暮改の診療報酬改定は、現場の混乱をもたらすのみで、慎重にしなければならないと考えていた」と説明するとともに、長期投薬を見直す方向性が示されたことについては、「画期的であり、評価している」とした。
 松原副会長は、紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入について、「適切な場所で適切な医療を受けることに実効性を保てるように、医療資源を分配する形が大事」とし、ニコチン依存症管理料については、「若年者への要件が緩和され、支払側にも理解された」と述べ、今回の改定を高く評価した。
 松本常任理事は、在宅医療について、「前回改定では、同一建物での不適切事例を意識するあまり、無茶な改定が行われた。それが是正されたことは評価する」としながらも、「同一建物においても、一人ひとりを診察することは変わらず、減額されるべきではない」とした。
 更に、万代日病常任理事は、病棟単位での届出が導入されたことを評価する一方、「運用するには厳しい要件となっており、次回の改定に向けて中医協で議論していきたい」と語った。
 猪口全日病副会長は、回復期リハビリテーションへのアウトカム評価の導入について、「平成30年度に向けて、療養病床の再編にどのような影響が出るのか検証しなければいけない」と述べた。

平成28年度診療報酬改定の概要

I 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
◯医療機能に応じた入院医療の評価
 ・一般病棟の「重症度、医療・看護必要度」の見直し
 ・病棟群単位による届出の導入
 ・有床診療所における在宅復帰機能強化加算の新設
 ・入院中の他医療機関受診時減算規定の緩和
◯チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取り組み等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保
 ・医師事務作業補助体制加算1の評価引き上げ
◯地域包括ケアシステム推進のための取り組みの強化
 ・退院支援に関する評価の充実
◯質の高い在宅医療・訪問看護の確保
 ・要件を満たした在宅医療を専門に実施する診療所の開設を認める
 ・小児在宅医療に係る評価の推進
 ・休日の往診に対する評価の充実
◯医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化
 ・紹介状なしの大病院受診時の定額負担の導入
II 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点
◯かかりつけ医の評価
 ・認知症地域包括診療料、認知症地域包括診療加算の新設
 ・小児かかりつけ診療料の新設 
◯情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進
 ・保険医療機関間で、診療情報提供書を提供する際に、併せて画像情報や検査結果等を電子的に提供し、活用している場合の評価の新設
◯質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進
 ・初期加算、早期加算の算定要件等の見直し
 ・回復期リハビリテーション病棟におけるアウトカム評価の導入
 ・要介護保険者に対する維持期のリハビリテーションについて、評価の適正化を図るとともに、介護保険への移行を図る
 ・要介護保険者に対するリハビリテーションについて、その目標設定支援等にかかる評価を新設
◯明細書無料発行の推進
III 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
◯緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
 ・がん診療連携拠点病院について評価している項目において、地域がん診療病院及び小児がん拠点病院についても評価を行う
◯「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
 ・身体疾患を有する認知症患者に対するケアの評価の導入
◯地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
 ・地域移行を重点的に進める精神病棟の評価の導入
 ・専門的な児童・思春期精神科外来医療の評価の導入
 ・一般病棟において、身体合併症を有する精神疾患患者の受け入れや、精神症状を併せ持つ救急搬送患者に対し、精神科医が診断・治療を行った場合の評価の新設
◯難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
◯小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
 ・小児入院医療を担う保険医療機関のうち、重症児の受け入れ体制が充実している医療機関に対する評価の新設
 ・夜間休日救急搬送医学管理料の評価の充実
◯医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価
◯DPCに基づく急性期医療の適切な評価
IV 効率化・適正化を通じて精度の持続可能性を高める視点
◯後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討
 ・院内処方を行っていて、後発医薬品の使用割合の高い診療所について、その使用体制に係る評価の新設
 ・後発医薬品が存在する全ての医薬品を一般名で処方している場合の評価の新設
◯残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすための取り組みなど医薬品の適正使用の推進
 ・多種類の服薬を行っている患者の処方薬剤を総合的に調整する取り組みを行い、処方薬剤数が減少した場合の評価の新設
◯重症化予防の取り組みの推進
 ・ニコチン依存症管理料の対象患者の拡大
◯医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
 ・入院時の経腸栄養用製品の使用に係る給付の見直し

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