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平成29年(2017年)7月5日(水) / 日医ニュース

医師の引き際

 最近、日本の誇るアスリートの引退が世間を賑わせている。フィギュアスケートの浅田真央、女子ゴルフの宮里藍である。二人とも全盛期を少し過ぎたとはいえまだ若く、惜しまれての引退である。
 一方、三浦知良やイチローのように、盛りを過ぎてもプレーを続け、我々を楽しませてくれているアスリートもいる。
 さて、身近な医師達はどうだろうか? 勤務医には定年があり、一応退職となるが、その後も何らかの形で仕事を続けている方が圧倒的に多い。開業医でも、米寿を迎えてもお元気で毎日外来や往診をなさっている先生もいらっしゃって、医師会の会合で「開業医には定年がないからね」と、にっこりされていた。
 一方、65歳を迎えてスパッと盛業であった耳鼻科医院を閉院してしまった先輩もいて、先日ゴルフにお誘いしたら「毎日目覚ましをかけない生活だからね」と、ゆったり趣味を楽しんでおられる様子。どちらも幸せそうなのである。
 さて、私のところは来年には長男が大学病院を辞し、田舎に戻ってくる予定。当診療所を任せられると喜んでいるのであるが、未練や不安もないわけではない。同世代の友人達は、無責任に「まだ若いじゃないか。元気じゃないか」と継続を勧めるし、患者さんは「先生じゃなきゃだめだよ」とお世辞を言ってくれる。しかし最近、モチベーションが落ち、学会や研究会への出席も減り、毎朝階下の診療所へ向かう足取りも重くなっている自分を自覚している。
 幸い引退について、糟糠(そうこう)の妻は「あなたのお好きなように」と言ってくれているが、引き際は山口百恵のようにと思っていた私にとって悩ましい1年になりそうである。

(がんこ親父)

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