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令和元年(2019年)11月20日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

経済財政諮問会議を受けて

日医定例記者会見 10月30日

 横倉義武会長は、10月28日に開催された経済財政諮問会議において、社会保障制度改革について議論が行われたことを受け、日医の見解を説明した。
 横倉会長は、「民間病院がまずは地域に必要な医療機能に合わせて医療を提供しており、その機能を制度上の位置づけで補完するのが公立・公的病院の役割である。民間病院は自らの経営責任の下、オウンリスクで経営しており、憲法で定められた財産権もある」と述べた。その上で、「経済財政運営と改革の基本方針2019」において、"地域医療構想調整会議における議論を促す。こうした取り組みによっても病床の機能分化・連携が進まない場合には、2020年度に実効性のある新たな都道府県知事の権限のあり方について検討し、できる限り早期に所要の措置を講ずる"とされていることに対し、これを拙速に前倒しすることのないよう求めるとともに、「あくまでも、地域の人口変動に合わせた医療機能を各病院が考えることが基本であり、病床が稼働しなければ、それに合わせてダウンサイジングをしていき、その部分に補助をすることが必要である」と強調した。
 横倉会長は最後に、安倍晋三内閣総理大臣が「限られた財源を賢く活用し、国民生活の質の向上を図ることが、重要なポイントである」と発言したことに触れ、「地域医療構想の実現に向けて、国主導ではなく、ラグビー日本代表のように地域の関係者が皆で知恵を絞って高齢化に立ち向かっていかなくてはならない」と強調。改めて地域医療構想調整会議の議論の活性化を求めた。
191120d2.jpg  横倉会長の会見に引き続き、厚生労働省の「地域医療構想に関するワーキンググループ」に構成員として参画している中川俊男副会長が、同諮問会議における提言等について日医の見解を解説した。
 中川副会長はまず、民間議員が示した「急性期から回復期への病床転換」「官民合わせて過剰となる約13万床の病床削減」「病床機能転換、病床の整理・合理化を積極的に図る民間病院等については、今後3年程度に限って集中再編期間として、大胆に財政支援をすべき」との提言について、医療法における地域医療構想の理念を示した上で、「同諮問会議はできるだけ前倒しで再編等を進めたいのだと思われるが、拙速な議論を誘発し、地域医療構想の基本コンセプトである自主的な収れんを阻害する」と反論。公立病院等が、再検証を要請されたことを口実に大病院の新築移転を進める可能性や短期集中の検討による地域の混乱に懸念を示した。
 また、急性期から回復期への病床転換については、日医がさまざまな場面で説明してきたにもかかわらず、依然として回復期機能を担う病床が各構想区域で大幅に不足していると誤解されていることに強い不快感を示した。
 更に、2018年度診療報酬改定における入院医療の評価体系の見直しの目的や地域医療介護総合確保基金が創設された経緯を説明するとともに、「地域医療構想は構想区域の実情に応じた医療提供体制の再構築を図るものであり、その趣旨からも診療報酬による誘導は適切ではない」と強調した。
 中川副会長は、同諮問会議の議論にも言及。「再検証対象病院」のリスト化については、「同分析はあえて機械的・限定的な分析となっており、これに紹介・逆紹介等の地域の実情を加味して、調整会議での協議を進めて欲しい」とするとともに、協議のあり方についても、「あくまで再検証の対象であり、再編・統合、ダウンサイジングを決定づけるものではない」と指摘。「現状維持」や「機能拡大」といった結論が出ても問題はなく、十分な議論による結論が既に得られているところはそのままで良いとの見方を示した。
 民間病院の分析及び結果の公表については、調整会議に提出するデータそのものは既に存在しているが、公表は現場の混乱を招くため、慎重な対応が必要と説明。その理由として、①民間医療機関は公立・公的医療機関と同じ土俵にはなく、地域医療構想の理念に沿った需要の縮小に合わせた自主的な収れんを見守るべき②公表データを基にした病院ランキング等が作成された際の風評被害―を挙げた。
 また、民間データの分析が求められる理由については、「再検証を要請された公立・公的医療機関等が、競合している民間医療機関の実態を確認したいというのが、ひとつの理由ではないか」と述べ、その場合には既におおむね公表されている病床機能報告の結果の参照や、当該調整会議に限定して必要なデータを提供することで対応は可能であり、一般に広く公表する必然性はないとした。

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