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令和元年(2019年)12月5日(木) / 「日医君」だより / 日医ニュース

全世代型社会保障検討会議で医療界を代表して日医の考えを説明

 横倉義武会長は11月8日、総理官邸で開催された政府の「全世代型社会保障検討会議」のヒアリングに招かれ、全世代型社会保障に関する日医の考えを説明した。

 同検討会議は、少子高齢化と同時にライフスタイルが多様となる中で、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うために設置されたもので、議長は安倍晋三内閣総理大臣が務めている。
 今回のヒアリングには、医療界から、横倉会長の他、堀憲郎日本歯科医師会長、山本信夫日本薬剤師会長が出席した。
 医療界を代表して意見を述べた横倉会長は、まず、三師会で取りまとめた合同提言(別掲)として、三つの事項(①人生100年時代の患者・国民の安心につながる丁寧な議論②疾病予防、健康づくりの推進③国民皆保険の理念の堅持)を求めることを提示。「医療分野については、人生100年時代の患者・国民の安心につながる丁寧な議論を行うとともに、短い期間に拙速に結論を出すことのないようお願いしたい」と述べた。

受診時定額負担導入に明確に反対姿勢を示す

 また、「大きなリスクは共助、小さなリスクは自助」という議論があることについては、「公的医療保険には、既に、小さなリスクは『定率負担』をお願いし、大きなリスクは『高額療養費』で対応するという基本的な考え方が組み込まれている」と指摘。特に「受診時定額負担」に関しては、①将来にわたり、患者の療養給付を最大でも3割までしか負担を求めないとしてきた、これまでの原則を破って、患者に負担を求めていくものである②社会保障としての国民皆保険の理念に反する―ことなどを挙げ、その導入には明確に反対する意向を伝えた。
 続いて、日医の考えを、(1)予防の推進、(2)地域に根ざした医療提供体制の確立、(3)全世代型の社会保障に向けて―を中心に説明した。
 (1)では、社会保障改革の主眼が「国による医療・介護に対する支出の抑制」になり、結果として医療の質の低下を及ぼすようでは、以前、後期高齢者医療制度導入の際に見られたように、国民の理解は得られないと断言。「健康寿命を延伸することにより、支え手も増やせるだけでなく、74歳まで社会参加でき、働くことができるようになれば、この先もこれまでとほぼ同じ労働人口比率が維持できる」と述べるとともに、医療の側でも、従来の診断・治療だけでなく、病を防ぐことにしっかり取り組んでいく姿勢を示した。
 (2)に関しては、①国民に対し、医療のかかり方について社会保障や健康に関する教育・啓発などを行って、意識改革を促すことも大切である②わが国には地域密着型の中小病院や有床診療所があり、かかりつけ医機能と入院機能を持ち、地域包括ケアシステムの一翼を担っている―こと等を説明。地域の住民が住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、三師会で力を合わせて進めていくとした。
 また、(3)については、社会保障と経済は相互作用の関係にあると述べた上で、「患者負担を増やすことばかりでなく、社会保障は自助・共助・公助で成り立っていることを踏まえ、それぞれのバランスを取りながら、時代に対応できる給付と負担のあり方という視点に立って議論することも重要である」と指摘。具体的な改革案として、共助に関しては被用者保険の保険料率を協会けんぽの水準に合わせること、公助については消費税以外の新たな税財源の確保等を挙げ、「それらによって持続可能な社会保障を目指すべきである」と述べるとともに、「人生100年時代に向けては、社会保障を充実させ、経済の好循環を生み出し、国民不安を解消することが重要だ」として、理解を求めた。

高齢者への負担は低所得者に配慮を

 その後に行われた委員との質疑応答の中で、大病院を受診した場合の選定療養と受診時定額負担の関係を問われた横倉会長は、「選定療養は療養の給付と直接関係ないアメニティに課す負担で、必ずしも大病院に掛かる必要のない患者に対して、フリーアクセスの乱用を防ぐためのものであるが、受診時定額負担は医療のアクセスを制限し、受診抑制を招くものである」と指摘。また、負担能力のある高齢者に、負担を求めることに関して考えを問われたことについては、「低所得者に十分配慮した上で、社会保障の理念に基づき、所得だけではなく、金融資産の多寡に応じた応能負担を行うことも考える必要がある」と回答。更に、亡くなられた後、生前に社会保障の恩恵を受けた分を、国に還元するような仕組みも検討するよう要望した。
 その他、地域医療構想の加速化に協力を求める要望に対しては、民間病院は自らの経営責任の下、オウンリスクで経営しているなど、公立・公的病院との違いを説明した上で、「公立・公的病院と民間病院の役割分担について、各地域でしっかりと議論することが重要となる。かかりつけ医機能が定着すれば、より良い医療提供体制を構築することができる」と述べた。
 ヒアリング後、当日の議論を踏まえてあいさつを行った安倍総理は、「少子高齢化と同時に、ライフスタイルが多様となる中で、子どもからお年寄りまで全ての世代が安心できる社会保障制度へと改革していく必要がある」との考えを示した上で、「社会保障制度の重要な一翼を担う日本医師会始め医療関係者から頂いた意見をしっかりと踏まえ、年末の中間報告に向けて更に検討を進めて欲しい」と述べた。
 同検討会議では、今後も有識者からのヒアリングなどを行いながら、議論を続け、年末には中間報告を取りまとめる予定となっている。

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