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令和2年(2020年)2月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース / 日医ニュース

「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」の結果を公表

 松本吉郎常任理事は、「医師でも厳密に副業・兼業の時間を通算することになった場合、地域医療に対する影響は非常に大きく、地域医療が崩れる可能性が高い」と述べた上で、「医師の副業・兼業と地域医療に関する日本医師会緊急調査」の結果を概説した。
 同調査は、医療機関の副業・兼業の現状を把握するとともに、労働時間を通算された場合の地域医療と医療機関経営への影響を検討するために実施したものである。対象は、(1)医療機関調査(施設数:8343)と(2)都道府県医師会調査(依頼数:47)に分けて行われ、回答率はそれぞれ、44・5%、100%であった。

両調査共に「宿日直体制の維持困難」が最多

 医療機関調査では、①「医療機関での勤務形態(派遣・受け入れ)」の項目では、"専ら医師を受け入れている病院である"との回答が83・3%に上る②「勤務医師の副業・兼業(複数医療機関に勤務)に関する取扱い」の項目では、"病院長が許可した場合のみ認めている"(48・9%)、"特段の規定はなく、各医師の自由意志に任せている"(30・8%)であり、副業・兼業をすることが当たり前と言える状況にある―ことなどが明らかとなった。
 今後、地域医療の確保と医師の働き方改革を両立していく必要のある、いわゆるB水準に相当する施設を抽出・集計した分析結果では、「複数医療機関に勤務する医師の労働時間を通算すること」について、"通算に反対"(28%)、"どちらかといえば反対"(23・8%)を合わせると51・8%が反対であり、「複数医療機関に勤務する医師の働き方に対する医療機関の不安」としては、"宿日直体制が維持困難"(79・8%)、"派遣医師の引き上げ"(62・9%)、"病院の経営が悪化する"(52・9%)、"病院勤務医の減少につながる"(41・5%)の順に多かった。
 また、いわゆるC水準に相当する施設である医育機関(大学病院、大学附属病院)を抽出・集計した分析結果では、医師の副業・兼業について、"病院長(理事長・学長を含む)が許可した場合のみ認めている"(74・5%)、"特段の規定はなく、各医師の自由意思に任せている"(5・5%)と、副業・兼業が当たり前ではあるが、施設が派遣機能を担っているため、許可の下に行われている割合が多い結果となった。
 都道府県医師会調査では、「複数医療機関に勤務する医師の労働時間を通算すること」について、"反対"(31・9%)、"どちらかといえば反対"(34%)となった他、通算された場合の不安として、"宿日直体制が維持困難"(97・9%)、"派遣医師の引き上げ"(89・4%)、"病院の経営が悪化する"(78・7%)、"救急医療からの撤退"(74・5%)、"外来の縮小"(70・2%)、"へき地医療からの撤退"(66%)となっており、(1)の結果よりも"へき地医療からの撤退"への懸念が強い結果となった。
 調査結果を踏まえて同常任理事は、「制度を変えた場合の影響が多岐にわたっており、予測が困難なため、何らかのルールが適用された場合、何が起こるか分からない」「研鑽のために副業・兼業することは、医療の質の向上にもつながる」「副業・兼業によって、医療機関での事務負担が増加する懸念がある」「割増賃金の算出は極めて困難」「健康確保は、勤務時間の把握が目的化しないような実効性ある仕組みが必要」「予見を持って対応する必要があり、混乱が起こってからの回復は困難」等の問題が明らかになったと指摘。「医師は、多様性を持った働き方をしており、一般の労働者と同じような副業・兼業への対応を医師の働き方へ単純に当てはめることによって混乱が生ずることを懸念している。医師の副業・兼業については多くの課題を抱えており、これらに対する適切な解決策を考えていかなければならない」と述べた。

四病協とも考えは一致

 また、同常任理事は、四病院団体協議会とは医師の副業・兼業の扱いについて、制度として自己申告による対応が適当であるという考え方で一致していることを説明した他、医師の副業・兼業の問題に関しては、労働基準法41条(労働時間等に関する規定の適用除外)や同法41条の2(高度プロフェッショナル制度)の存在も考慮しながら議論する必要があると指摘した。

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