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令和2年(2020年)3月20日(金) / 日医ニュース

「全世代型社会保障の構築のために」をテーマに開催

「全世代型社会保障の構築のために」をテーマに開催

「全世代型社会保障の構築のために」をテーマに開催

 「医療政策シンポジウム2020」が2月19日、「全世代型社会保障の構築のために」をテーマとして日医会館大講堂で開催された。
 新型コロナウイルスの感染の段階が"国内感染の早期"に進んだとの認識に変わったことから、本シンポジウムは急きょ、聴衆なしのテレビ会議システムで配信する形に変更されたが、壇上では、社会保障の今後の方向性について活発な意見交換が行われた。

 当日は、石川広己常任理事の司会で開会。
 冒頭あいさつした横倉義武会長は、まず新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、「国内各地に患者が発生することを前提とした対応にかじが切られている。本シンポジウムには、約400名の申し込みがあったが、講堂内への聴衆の来館は断腸の思いでお断りした」と変則的な開催となった経緯を説明。
 その上で、同会長は超高齢・人口減少社会に入り、ライフスタイルが多様化する中で、誰もが安心できる社会保障制度に関わる検討を行うため、政府が開催している「全世代型社会保障検討会議」において、疾病予防・健康づくりの推進や国民皆保険の理念の堅持などを、日医、日本歯科医師会、日本薬剤師会との合同提言として要望したことを紹介した。
 昨年12月の同検討会議の「中間報告」では、医療に関して「後期高齢者の自己負担割合のあり方」や「外来受診時の定額負担のあり方」などが主な論点となっていたとし、「6月の最終報告に向けて、苦しい財政状況を背景に社会保障に対する歳出圧力が強まるが、自助・共助・公助のバランスを取りながら、時代に対応できる給付と負担のあり方を議論することが重要である」との考えを述べた。
 続いて、中川俊男副会長と石川常任理事が座長となり、3名の演者による講演が行われた。

講演1「全世代型社会保障改革―持続可能な社会に向けて―」

 翁百合日本総合研究所理事長は、グラフを用いてわが国の人口動態の変化を説明した上で、団塊の世代が後期高齢者入りする2022年からの数年間は一時的に75歳以上人口の増加率が急激に高まると指摘。生産年齢人口が減少する中においては、高齢者や女性の就労、海外からの人材を増やすことに加え、生産性(就業者1人当たりの実質GDP)の伸び率を上げていくことが課題になるとした。
 また、社会保障の持続のためには、増加する社会保障関係費の抑制と介護現場を始めとする人材不足への対応が求められるとし、政府の「未来投資会議」において、健康管理に資するデータの利活用による健康寿命延伸や、AI・ロボット等、技術革新を用いた介護現場や医師の働き方改革の推進など、次世代ヘルスケアシステムの構築を提言したことを紹介。
 更に、自身が有識者として参画している「全世代型社会保障検討会議」では、医療・介護だけでなく、年金と労働についても一体で議論を進めており、支えられる側であった高齢者も働ける社会を目指しているとした。

講演2「"積極的・全世代支援型・参加型"社会保障へ」

 古賀伸明連合総合生活開発研究所理事長/連合前会長は、わが国の社会保障が「雇用システム」「家族形態」「地域社会」と一体となって形成されてきたため、非正規雇用の増大や単独世帯の増加、社会への帰属意識・連帯感の希薄化など、土台の変化が社会保障の仕組みに大きな影響を与えているとした。
 その上で、超少子高齢社会の社会保障は、貧困、病気、けが、加齢等へのセーフティーネットとしての対処療法型から、就労を軸に積極的社会保障へ転換することが重要であるとし、「一度、労働市場から排除されると復帰が困難であり、社会保険機能の弱体化にもつながる。教育や労働と社会保障を一体的に捉え、再教育、人材育成、能力開発も含めた、積極的雇用政策も重要である」と強調。加えて高齢者中心から全世代支援型の社会保障へと再構築を進め、労使の拠出者及び制度の受給者が、制度の設計や運営に参加できるようにすることを提案した。

講演3「全世代型社会保障の将来」

 吉川洋立正大学長は、一般会計の歳出と税収のギャップを国債で補塡しているため、構造的な財政赤字となっている日本の財政状況を概説するとともに、社会保障関係費の占める割合の大きさや伸び率を図示。「日本は消費税率を10%に上げたが、まだ足りない。EUのメンバーになるには、消費税率は最低15%必要であり、イギリス、ドイツ、フランスなどは20%程度、福祉に手厚いスウェーデン、ノルウェーは25%である」と述べ、国民全体として負担を考えていく必要があるとした。
 また、医療保険の設計に関しては、大きなリスクを皆で支え合うのが保険の基本であり、医療保険制度の柱は高額療養費制度であるとの見解を示し、「かぜや指を切った等の軽傷での受診には、もう少し自己負担を増やしてもよいのではないか」と主張。
 医療提供体制に関しては、地域医療構想に基づき、地域ごとに解決していくべきだとし、医師会がリーダーシップを発揮するよう期待を寄せた。

パネルディスカッション「全世代型社会保障改革に向けて」

 その後、武田俊彦前厚生労働省医政局長が座長を務め、3名の演者に横倉会長が加わった4名によるパネルディスカッションが行われた。
 その中で、社会保険料の負担については、「年齢ではなく、能力に応じた負担としていくべき。医療保険制度の持続可能性が大切であり、適正な受診のためにも一定の自己負担が重要である」(翁氏)、「多くの人は社会保障の充実のためには消費税増税がやむを得ないと思っている。社会保険料については事業主負担をどうするのか、税については金融所得も含めた総合課税化も含めつつ、消費税を始めとした負担のあり方を正面から議論すべき」(古賀氏)、「社会保険の仕組みは複雑だが、原点は保険であり、民間保険に入る際によくその給付と負担を検討するように、望ましいあり方を皆で考えていくべき」(吉川氏)などの意見が出された。
 これに対し横倉会長は、「給付と負担のあり方については、基本的には年代別でなく、能力別にすべきだと思う。社会保障としての国民皆保険と、財政論に基づくリスクに応じた保険理論とは違うものであるが、社会保障としての国民皆保険の財源は国民全体で負担していくことが必要である」との見解を述べた。
 なお、当初、本シンポジウムでは、パネルディスカッションの後に、厚労省の「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」構成員を務め、現在「上手な医療のかかり方大使」であるデーモン閣下氏の講演を予定していたが、聴衆なしの状況となったことで中止された。
 最後に中川副会長が、テレビ会議では200名以上の視聴があったことを報告。「実り多いディスカッションとすることができ、地域医療構想においても医師会が主導すべきだとのエールまで頂き、深く感謝申し上げる」と総括した。
 なお、本シンポジウムの模様については、記録集を電子書籍(日医Lib)及び日医ホームページ上で、6月頃を目途に公表する予定であり、それまで動画を日医ホームページに掲載している。

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