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令和2年(2020年)6月20日(土) / 日医ニュース

「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」~その1

勤務医のページ

 勤務医委員会(委員長:泉良平富山県医師会副会長)は、諮問「勤務医の医師会入会への動機を喚起するための方策について―特に、若手勤務医を対象に―」に対する答申を取りまとめ、5月22日、城守国斗常任理事を通じて横倉義武会長に提出した。
 本紙では、答申の概要を2回に分けて紹介する。

Ⅰ 若手医師の意識と求められる若手医師参画への取り組み

1.若手医師に対する日本医師会の期待

 日医は、将来にわたり国民の生命と健康を守るためには、若手医師の医師会への参画と活躍が重要であると考えている。
 若手医師の大半は病院勤務医であり、地域の病診連携を進め、医師会の組織力向上を図るためにも、若手医師の医師会参画は不可欠である。医師会の組織力が向上すれば、医師会の発言力は強化され、医師会の主張が国の医療政策により反映されることになる。

2.若手医師からみた医師会の印象や接点

 医師会を通じて、同じ地域の開業医や他の病院の勤務医と知り合うことで、患者の紹介が円滑になることや、医師会が医師年金や医師賠償責任保険を整備していることなどを知っている若手医師は一定程度存在する。
 一方、医師会について、自分に関係ない組織だと思っている若手医師も多い。

3.若手医師が興味を持つ課題

 これまでの医師会の説明は、医師会入会のメリットに重点が置かれてきたが、年金や医賠責保険などを真剣に考えている若手医師は少なく、当事者に興味がなければ心には響かない。
 むしろ、医師会という団体に入ることによって、自分達が抱える問題が解決されるのか、また、どのような経験や成長の機会が得られるのかを語る必要がある。

4.医師会入会の阻害要因と時代に適応したアプローチ

 従来から指摘されている課題としては、医師会の存在意義や医師会の活動が若手医師になかなか伝わらないという点が挙げられる。一方、医師会に入会したとしても、会費や異動手続きの煩雑さなどから、入会の継続が損なわれる傾向がある。
 また、モチベーションの高い医師は、SNSでセミナーや集会などのイベントを探していることが多く、そのような医師にSNSを利用してアプローチすることも有効な手段であると言える。

5.若手医師の活動支援と教訓

 ・若手が抱える課題(若手医師にとって興味ややりがいのある仕事)を医師会が取り上げ、当事者自らが解決策を提案できる環境をつくること。
 ・具体的には若手医師委員会など、若手医師が主体的に医師会活動を行える仕組みを構築すること。
 ・そのためには、ベテラン医師による若手医師の支援や事務局の支援が重要である。

Ⅱ 都道府県医師会における先進的な取り組みから

1.北海道医師会の取り組み
―若手医師の次世代育成と医師会活動への参画―

 北海道医師会では、人材育成には活躍の場を与えることが必須であり、若手医師の参画を実現するには医師会活動に活躍の場を創設することが重要であると考え、10年前から取り組んできた。
(1)第1期:2006年〜2012年
 女子医学生や女性医師との懇談会を定期的に開催。更に、2012年に開設された日医主催の「『2020.30』推進懇話会」については、自身で医師会活動への参画に手を挙げた意識の高い女性医師達を公募で選出した。
 この頃に女子医学生、若手女性医師達が北海道医師会の活動の一部を担うための基盤づくりがスタートした。
(2)第2期:2013年〜2016年
 次世代の医療は、男女にかかわらず担っていかなければならないため、女性だけでなく、全ての医学生、研修医を対象にした支援へと方向転換し、活動テーマも女性医師のワークライフバランスを達成することから、北海道の地域医療を守るために何ができるかを模索することとした。
 そして、女子医学生や女性医師との懇談会で発信される研修医や医学生の新鮮な意見を形にしていくべきであると考え、「北海道の地域医療を考える若手医師ワーキンググループ(以下、WG)」を結成した。
 WGは、医学部入学以降、医療問題を考え活動してきた「IFMSA-Japan」や「North Powers」などの医学生団体を中心に構成し、医師会と連携した具体的な活動を引き出す話し合いとした。
 また、地域医師会の医師からも学ぶ機会を提供し、医師会活動を通して北海道で活躍できるよう支援し、医師会への理解を深めてもらう活動の基盤とした。
(3)第3期:2016年~
 第2期での活動を更に具体的に進めるために、2016年8月に「勤務医部会若手医師専門委員会」を設置した。
 若手医師専門委員会の活動方針は、当面の検討事項として、①若手医師の意見が医療政策及び地域医療の推進等に反映される体制づくり②若い世代の医師会活動への積極的な働き掛けの具体的な方策③若手医師への情報発信の強化と活動場所の確保―を具体化することとした。
 北海道医師会は、医師会活動への若手医師参画が重要であることを認識し、次世代育成を支援する方向性を明確にしている。
 北海道医師会常任理事が本来担っていた日医会内委員会のポストを若手医師に委譲し、各地の理事で構成される勤務医部会運営委員会に若手医師専門委員会を組み入れた。これらの医師会の姿勢の中で、若手医師達は着実に育ってきた。
 経験を積んだものは後輩に譲り、医師会におけるその文化を継承していくことにより、医師会組織はSustainableに運営されているように見える。

2.京都府医師会の取り組み
―研修医のスキルアップ、レベルアップ、ネットワークづくりに向けて―

 次代の良医を先輩医師が養成するという「里親精神」を持ち、研修医・若手医師に寄り添う取り組みを展開してきていることが特色の一つである。
 京都府地域医療支援センターと連携を取り、京都府医師会の常任委員会である「研修サポート委員会」のタスクフォースとして設置された「若手医師WG」が中心となって運営されている。
 (1)「新研修医総合オリエンテーション」は、京都府医師会の京都府医療トレーニングセンターでのシミュレーション体験を始め、新研修医としての心構えの周知や研修医が身につけるべき知識の均一化、レベルアップ、スキルアップ、病院の枠を超えたヨコのつながりの構築を目的としている。
 (2)「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」は、全国からの参加もあり、さまざまな立場の臨床研修医がロールプレイやシミュレーションゲームを体験できる取り組みである。
 「教わる側が経験を重ね、いずれ教える側に回り、瓦を積み重ねていくように、ずっとつながっていく」ことが最大の特徴である。スキルアップ・レベルアップのみならず、ネットワークづくりに主眼が置かれている。
 (3)「研修医ワークショップ in KYOTO」は、異なる地域や病院から参加している研修医同士、グループで学び、刺激し合うことでレベルアップにつなげることを目的としている。
 災害発生時のシミュレーションでは、限られた情報を頼りに、いかに迅速に的確な判断を下して行動できるかが競われ、災害医療に触れる貴重な機会となっている。
 (4)「若手医師交流事業」は、他の都道府県医師会と連携しながら、研修の質を高め合い、更には行政・医師会・研修機関とも交流を深めることで、それぞれの地域で良医を育てることを目的としている。
 これまで「臨床研修屋根瓦塾KYOTO」方式の取り組みを静岡県医師会主管で「屋根瓦塾 in SHIZUOKA」として開催されている他、各都道府県医師会等との更なる交流を目指している。
 (5)研修医向けの広報活動については、平成29年4月、若手医師WGの協力を得て、「研修医同士のつながりを強化」や「研修医の先生方の"日常診療"や"今後の進路"の一助」を目的に、研修医・若手医師のための情報誌『Arzt』が創刊された。医学生にも読んでもらえるよう、京都大学、京都府立医科大学にも送付されている。
 今後は、若手医師から中堅指導医に至るまで、卒後教育という切り口で医師会が関わることで、「勤務医と共に歩む医師会」を、これまで以上に実現していくことが強く望まれる。

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