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令和2年(2020年)7月5日(日) / 南から北から / 日医ニュース

心の雑草を取る

 わが家には狭いながらも庭と花壇がある。緑の庭や花を愛でるのは幸せなことだが、困ったことに、春になると至る所に雑草が生える。抜いても抜いても生える。年に2回庭師に入ってもらって、樹木の剪定(せんてい)と、ついでに雑草処理をお願いしているが、春から夏の終わり頃までは1~2週間空けるとすぐに生えてくる。多分、一夏放置していると庭は荒れ放題になるだろう。
 除草剤を数種類試したが、芝生に優しい除草剤は効き目がいまいちで、根から枯らす強力なグリホサート系除草剤は芝も枯らすし、発がん性があることが分かって使用を止めた。
 最も有効な方法は、こまめに雑草を抜くことである。ただ、長い時間、しゃがんで作業をしていると、腰は痛いし、足は疲れるし、汗だくになる。下手をすると熱中症の危険もある。
 でも、不思議なことに雑草を取っていると心が洗われるような気持ちになる。雑草の根を掘り起こした時の土の匂いは、なぜか懐かしい。雑草の陰や地面にいる虫達がたくましく生きている姿を見て愛おしくなるし、そもそも雑草が、抜かれても抜かれても生えてくるそのたくましさに、敬意を表したくなる。自分自身と比べて、何と自然界のたくましいことか。
 私もまだまだ人間として未熟なので、心に雑念という雑草が生える。一心不乱に無心で雑草を取った後で、奇麗になった庭を眺めながら晴れやかな気持ちで冷たいお茶でのどを潤す。至福の時だ。実は雑草を取りながら自分自身の心の雑草を取っているのかも知れない。

宮崎県 日州医事 第841号より

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