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令和2年(2020年)7月20日(月) / 日医ニュース

医師会病院、健診・検査センターの医業経営実態調査結果を公表

日医定例記者会見 6月24日・7月1日

医師会病院、健診・検査センターの医業経営実態調査結果を公表

医師会病院、健診・検査センターの医業経営実態調査結果を公表

 松本吉郎常任理事は、新型コロナウイルス感染症の拡大が、医師会病院、健診・検査センターの経営に与えた影響について調査した結果を報告。「総じて前年から一転して大幅な悪化傾向が続いていることで、事業運営に悪影響を及ぼしている」として、国にその支援を求めた。
 各調査結果の主な内容は、以下のとおりとなっている。

医師会病院

 日医による「医師会共同利用施設設立状況等調査結果(2019年4月1日現在)」を基に73病院に対して、日医ホームページから調査票をダウンロードし、メールで回答する方式にて実施され、調査期間は6月5日から6月22日、回答数は52病院、回答率は71・2%。そのうち、新型コロナウイルス感染症入院患者数「あり」は13病院(25・0%)、新型コロナウイルス感染症患者のための病床数「あり」は26病院(50・0%)であった。
 「総件数・総日数・総点数」については、入院、入院外ともに、3月、4月、5月と月を追うごとに対前年比のマイナス幅が拡大しており、入院では総件数の減少幅が大きく、5月の総件数は対前年比で20・5%減、総点数でも対前年比14・7%減となっていた。また、入院外では、入院以上に総件数が減少していた。
 なお、新型コロナウイルス感染症入院患者ありの病院が総点数等の減少が大きいという傾向は見られなかった。
 「初診料、再診料、電話等再診」についても、3月、4月、5月と月を追ってマイナス幅が拡大し、5月の初診料算定回数は対前年比47・2%減。再診料または外来診療料の5月の算定回数は対前年比31・8%減。また、新型コロナウイルス感染症入院患者「あり」の病院の全てで、5月の初診料算定回数が対前年比でマイナスとなっていた。電話等再診は2019年にはほとんど算定がなかったが、2020年4月以降急増し、再診料または外来診療料の2%前後が電話等再診であった。
 「医業収入・費用・利益」については、調査締め切りの時点で5月分が未確定の病院があったため、3月、4月分の回答があった病院と、3月から5月分の回答があった病院に分けて、集計・分析を行った。
 3月、4月の医業収入は対前年比で、4月は全体で11・8%減で、前年の黒字から一転して医業利益率は11・8%減となり、医業利益は前年比で許可病床1床当たり16万2000円悪化している。
 3月から5月では、医業収入の5月の落ち込みがもっとも大きく、医業利益率は前年の黒字から一転して大幅に悪化した。
 また、新型コロナウイルス感染症入院患者ありの病院(3月、4月)では、4月の医業収入対前年比が大幅なマイナス、医業利益率が大幅な赤字となっていた。
 医業・介護費用が対前年で増加した主な要因は給与費となっており、新型コロナウイルス感染症入院患者がない病院でも、同様に給与費の上昇が見られ、医業利益は前年に比べて許可病床1床当たり31万1000円悪化していた。

医師会健診センター、検査センター、健診・検査センター複合体

 医師会健診センター67施設、検査センター49施設、健診・検査センター複合体48施設に対して、日医ホームページから調査票をダウンロードして、メールで回答する方式に加えて、FAX、郵送による回答で実施。複合体で登録されている施設については、健診センター、検査センターそれぞれの調査票への記入と回答を求めた。
 健診センターと検査センターの両方を回答した複合体は23施設で、健診センターのみの回答は3施設、検査センターのみの回答は2施設であり、本調査の集計では、健診センターの集計を61施設、検査センターの集計を48施設として行い、調査期間は6月5日から6月19日、健診センターの回答率は52・2%、検査センターの回答率は46・9%、複合体の回答率は58・3%で、合計52・4%。
 「健診センターの集計・分析結果」については、健診センター調査で回答した61施設のうち、医師会直営による施設は50施設であり、その他・未回答には、医師会が直営していた施設が公益法人化された後、役員を兼ねている施設等が含まれる。
 現在、新型コロナウイルス感染症対応として、行政検査として実施されるPCR検査センターを設置している施設は5施設であった。
 本調査では、2019年及び2020年の3月から5月までの各健診・検診の実施件数を調査し、結果は1施設あたりの実施件数として示している。
 2020年3月時点で前年に比べて2割以上減少した健診・検診は、特定健康診査(36・3%減)、75歳以上健康診査(29・8%減)、ウイルス肝炎検診(27・3%減)、肺がん検診(20・5%減)であり、同年5月には全ての健診・検診の実施件数が前年と比べて半減や8割減、更には9割減となっている。
 緊急事態宣言対象区域における健診・検診の実施状況については、対象区域の特定健康診査は、2020年3月から5月にかけて、いずれの月においても実施件数は対前年比で対象区域外の施設よりも下回り、対象区域で運営されている健診センターでは、同年4月の定期健診における実施件数が前年比で60・1%減、5月には90・1%減で、健診の中止状態に陥っていた。
 「事業収入・費用・利益」については、本調査の締め切り時点では、2020年5月の健診実施件数に関して、収入及び費用が未確定な施設も多かったことから、同年3月、4月分と3月から5月分に分けて集計・分析が行われ、3月、4月の事業収入は対前年比で4月には36・8%減、事業利益率は新型コロナウイルス感染症の影響により対前年度比で大幅に減少し、利益率は大きく悪化している。
 また、5月の事業収入の対前年比は56・2%減、事業利益率は対前年比で4月には26・7%減、5月には44・6%減となっている。
 「検査センターの集計・分析結果」については、検査センターのうち、新型コロナウイルス感染症対応としてPCR検査のための咽頭スワブ採取を実施している施設は10施設、PCR検査の測定を実施している施設は5施設。検査の実施状況は、2019年及び2020年3月から5月までの臨床検査の実施件数を調査し、結果は1施設あたりの実施件数として示し、2020年3月、4月、5月にわたり前年の実施件数に対して減少し、厳しい状況が続いている。
 「事業収入・費用・利益」については、本調査の締め切り時点では、2020年5月の収入及び費用については未確定な施設も多かったことから、同年3月、4月分と3月から5月分に分けて集計・分析され、3月、4月では、事業収入は対前年比で4月には19・3%減、事業利益率は新型コロナウイルス感染症の影響により大幅に減少し、利益率は14・3%減となった。
 また、3月から5月までの収入及び費用を回答した施設は22施設で、医師会検査センターは、民間による大手臨床検査センターとは異なり、所在する地域の健診・検診に大きな影響を受けることから、5月の事業収入は対前年比で33・4%減、事業利益率では、3月の12・5%減から4月には若干赤字が圧縮されたものの、5月には12・2%減と、悪化傾向が続き、事業運営に影響を及ぼしていることが明らかとなった。

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