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令和2年(2020年)8月20日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

医師によるALS患者嘱託殺人に関する日医の見解

 中川俊男会長は、全身の筋肉が動かなくなっていく神経難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の依頼に応じた医師2名が、薬物を投与して死に至らしめた嘱託殺人の疑いで逮捕されたとの報道を受け、「たとえ患者さんからの要請があったとしても、生命を終わらせるような行為は、医療ではない」と指摘。このような事件が二度と起きることのないよう、患者に寄り添い、尊厳ある生き方を実現していくことができる社会を目指すとした。
 同会長は、「亡くなられた患者さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げる」と述べた上で、医療の目的は、患者の治療と人々の健康を維持・増進していくことであり、患者から「死なせて欲しい」という要請があったとしても、生命を終わらせる行為は医療ではないことを強調。もしそのような要請が患者からあった場合には、患者がなぜそのような思いに至ってしまったのか、苦痛に寄り添い、共に考えることこそが医師の役割だとした。
 更に、患者と医師がソーシャルネットワーキングサービスで知り合い、事前に医師へ金銭が支払われていたとの報道がなされていることにも触れ、「医療の本質は、人類愛に基づく行為であり、自らの利益のために行うものではない。ましてや、容疑に問われている医師は、亡くなられた患者の主治医ではなく、診療の事実もなく、医の倫理に照らす以前に一般的な社会的規範を大きく逸脱しており、決して看過できるものではない」と指摘。
 患者が長期にわたる闘病の中で、死を選ぶ道を探し求めたとすれば悲しむべきことであるとし、「死を選ばなければいけないような社会ではなく、生きることを支える社会をつくるため、例えば、治療法の確立を目指した研究開発、心のケア、介助や支援制度の拡充並びに患者や障害を持った方がよりよく社会で生きていくことができるような技術の開発や普及等、医師会がやるべきことは何かを追求していきたい」と述べた。
 その上で、これまで日医が、「医の倫理綱領」「医師の職業倫理指針」を策定して医の倫理の高揚に努めてきた他、人生の最終段階の医療・ケアについては、主に会内の生命倫理懇談会で検討し、ALSをもって直ちに人生の最終段階になるわけではないという認識の下で、人生の最終段階における本人の意思決定支援の仕組みとプロセス(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)などを課題としていることを概説。
 中川会長は、「日医は今後も、適切な医の倫理の下で、患者のニーズに応じた医療・ケア並びにさまざまな支援が十分に行われるよう、必要な取り組みを推進していくとともにこのような事件が二度と起きることのないよう、患者さんに寄り添い、尊厳ある生き方を実現していくことのできる社会を目指す」との方針を示した。

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