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令和5年(2023年)10月20日(金) / 日医ニュース

電子処方箋の導入と実績について

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電子処方箋の導入と実績について

電子処方箋の導入と実績について

これから進む医療DX

 現在、国の進める医療DXが飛躍的に進化しつつある。既に多くの医療機関で導入されているオンライン資格確認、そして今年1月より全国で運用が開始された「電子処方箋(せん)」、更には全国医療情報プラットフォームへと進展する。
 DXは、デジタル技術によって社会や生活の形・スタイルを変えることであり、医療分野においては、医療の安全確保や効率的で質の高い医療提供が期待されている。医療DXの基盤となるのがオンライン資格確認であり、全国のおおむね全ての医療機関及び薬局が安全なネットワークでつながる。これは1億2000万人を超える規模の国では画期的な取り組みであり、そしてそれを基盤に電子処方箋が動き出した。
 医療DX推進本部が公表した「医療DXの推進に関する工程表」では、おおむね全国の医療機関・薬局に対し2025年3月までに普及させることとなっており、更に「骨太の方針2023」では、電子処方箋の全国的な普及拡大に向けた環境整備が盛り込まれている。

リアルタイムな処方情報共有で、医療安全と業務効率化に貢献

 電子処方箋は、単に紙を電子化しただけと捉えられがちだが、ここから派生するメリットは計り知れない。処方・調剤された内容が電子処方箋管理サービスに登録され、直近100日間のデータが重複投薬・併用禁忌等のチェックに活用される。
 山形県酒田地域の事例になるが、2018年11月から重複投薬・併用禁忌防止を目的に調剤情報共有システムを導入し、8割の薬局が参加している。同意の取れた約1万人の患者データを解析したところ、のように重複投薬の件数が年間4万件以上、併用禁忌も1000件以上あることが判明した。これは医療安全や経済性の面から早急に改善すべき課題であり、当地域が電子処方箋に積極的に取り組んでいる大きな理由である。
 オンライン資格確認では薬剤情報を閲覧することができ、さまざまな場面で医療安全の向上に貢献していることが報告されてきている。その一方、この薬剤情報はレセプト情報であり、リアルタイムな情報ではない。このリアルタイム性というのは医療安全と業務効率化の視点では極めて重要であり、これは電子処方箋によって初めて実現可能となる。
 電子処方箋の導入には、対応版ソフトウエアの適用や電子署名に必要なHPKIカードの取得が必要である。更に、医薬品マスターに関して医薬品標準コードや統一医薬品名を、用法に関しては電子処方箋専用のコードを実装し、規定の用法コードで足りないところは用法補足レコードで補うことになる。
 山形県酒田地域では2病院、3診療所、30調剤薬局で運用しており、日本海総合病院での電子処方箋発行件数は8月末時点で2万3412件である。小さな初期トラブルはあったもののすぐに解消し、現在まで安定稼働し、安心して利用できている。
 電子処方箋による重複投薬や併用禁忌のアラート件数はまだ少ないが、有用だった具体例を提示する。
 お薬手帳を確認した上でアムロジピンを処方しようとしたところ、手帳の記入漏れが重複チェックで判明し、重複投薬を避けることができた。また、ロスバスタチンを処方しようとしたところ、シクロスポリン内服中であることが分かり、処方内容を変更した事例があった。
 今後、電子処方箋対応の医療機関・薬局が増えてくれば、更にその真価が発揮されることになるであろう。

表.調剤情報共有システムにおける重複投薬・併用禁忌の発生頻度(山形県酒田地域)
調剤情報共有システム 年間データ分析結果

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本領を発揮するためには面での対応が重要

 電子処方箋の大きな意義は三つある。(1)医療安全、(2)業務の効率化、(3)災害やパンデミックでの活用―である。
 (1)では、リアルタイムな情報反映により重複投薬や併用禁忌のチェックが瞬時に行われ、安全で無駄のない処方が可能になる。(2)では、常用薬の把握が正確でスピーディーになり、救急を含めたさまざまな現場で活用できる。
 ただし、地域で電子処方箋が活用されるためには、点や線ではなく地域という面で導入されることが条件であり、多くの医療機関や薬局で導入される必要がある。今後、地域や全国であまねく普及するためには、国の更なる導入費用サポート、診療報酬上でのインセンティブ、そして周知活動などが望まれる。

電子処方箋の活用と今後の展望

 電子処方箋の処方・調剤情報はほぼ即時にマイナポータルに反映される。患者はそこから処方・調剤情報を、マイナンバーカードを用いて手軽にかつ安全に取得することができる。パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)でその処方・調剤情報を取り込み、医療機関、薬局、介護施設などに提示して活用できれば、現場では大幅な負担軽減になる。
 また、電子処方箋はオンライン診療との親和性が高く、地域薬局のオンライン服薬指導と配送までの一連のフローが確立すれば患者にとっても利便性が向上する。
 最後に、電子処方箋はやっと緒に就いたばかりである。地域や国全体で電子処方箋を活用し、医療安全の向上、業務の効率化を実現して、一人でも多くの方が安全で質の高い医療を享受できることを願うばかりである。

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