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令和5年(2023年)10月25日(水) / 「日医君」だより / プレスリリース

令和6年度診療報酬改定について~第212回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説等を受けて~

 松本吉郎会長は10月25日、定例記者会見を行い、10月23日の第212回国会における岸田文雄内閣総理大臣の所信表明演説を受けて、令和6年度診療報酬改定に対する日本医師会の考えを改めて説明。自民党政調全体会議では「医療も介護も公定価格で賃上げに対応できていない」「見直しではなく、引き上げと書くべきだ」といった意見があったとのことも踏まえ、岸田総理の演説内の言葉を用いて、「『変化の流れをつかみ取る』ためには、ここで医療・介護従事者の賃上げが必要である」と主張した。

 松本会長はまず、昨今の光熱費、食材料費等の物価高騰対策において、10月5日に武見敬三厚生労働大臣に要望書を提出したことに触れ、新たな対応として入院患者等への食事療養等に対する補助金での財政支援を、継続的な対応として医療機関・介護事業所等における光熱費等の物価高騰に対する交付金での財政支援を要望していると説明。

 次に、次年度の診療報酬改定に向けて、直近8年間における医療費の対前年伸び率の平均を基に、医療費の損失額を推計すると、令和2、3年度で合計3.2兆円のマイナスが見込まれ、「オミクロン株の流行によるコロナ患者数の急拡大などのコロナ対応により、医療費が増えた側面もあるが、その分、感染対策経費の増加、追加的人員の確保など、患者数拡大に対応できる体制を築くためのコストも上昇している」と指摘した上で、「地域によって大きな差があり、地域の中でも医療機関によって差がある」と主張した。併せて、地域の医療機関の閉院または閉院予定の報道等があることにも言及し、「地域医療を支えてきた医療機関の閉院により、地域から医療がなくなってしまうと、そこには人が住めなくなってしまう」と強い危機感を示した。

 財務省財政審等において、コロナ補助金等による内部留保の積み上がりを賃上げ原資等として活用するような主張も一部にあるが、コロナ補助金等は従来の目的である感染症対策にしっかりと活用しなければならないと主張した。

 加えて、令和6年4月以降、恒常的な感染症への対応がなされることについては、協定を結んだ医療機関による次の流行に備えた体制整備や、コロナ禍で指摘されている電子カルテの整備やサイバーセキュリティ等、医療DXへの活用が必要だとするとともに、「しっかりと推進するため、医師会も役割を果たしていく」との姿勢を示した。

 また、医療・介護従事者の賃上げについては、2023年の春闘や人事院勧告、さらには10月19日に公表された2024春季生活闘争基本構想の内容にも触れ、令和4年度診療報酬改定における看護職員の処遇改善を端緒とした、「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」の直近の上昇率を例に、「就業者数の13.5%を占める医療・介護従事者約900万人の賃金を上げることで、わが国全体の賃金上昇と地方の成長の実現により経済の活性化が見込める」と説明。これにより、岸田総理が所信表明演説で述べられた、持続的で構造的な賃上げが実現するばかりでなく、官民連携による投資が積極化され、更に経済が活性化されるとの考えを示した。

 最後に松本会長は、賃上げはフローで行うべきであり、あくまでもコロナ禍という特殊な状況で生まれて感染対策に使うためのストックは、賃上げの原資とするものではないと、これまでの主張を繰り返すとともに、「賃上げは従来の改定に加え、診療報酬改定の中において別枠で行う必要がある」と改めて強調した。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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