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令和5年(2023年)11月2日(木) / 「日医君」だより / プレスリリース

令和6年度診療報酬改定について~財政制度等審議会財政制度分科会「社会保障」の議論を受けて~(各論)

 松本吉郎会長は11月2日に記者会見を行い、前日の財政制度等審議会財政制度分科会で社会保障に関する議論が行われたことを受けて、その際に示された資料に対する日本医師会の見解を説明した。

 松本会長は、まず、「高齢化等に伴う事業者の収益増等(全体として年+2~3%)が現場の従事者の処遇改善につながる構造を建築する。」とされたことに対し、10月24日の自民党政調全体会議で「医療も介護も公定価格で賃上げに対応できていない」「見直しではなく、引き上げと書くべきだ」「収益は事業者ごとにばらつきがある」といった意見を踏まえ、「新たな総合経済対策(案)」から、「現場で働く方々の給与に関わる公定価格の見直しを進め、高齢化等による事業者の収益の増加等が処遇改善に構造的につながる仕組みを構築する」という記載が全て削除されたことを紹介し、既に解決済みの問題であるとの認識を述べた。

 その上で、各論として、変革期間における診療報酬改定(総括)において「診療所・病院・調剤の区分毎に経営状況や課題等が異なることを踏まえたメリハリをつけた改定とする。」と記載されていることについて、「診療所と病院は役割分担として違う部分もあるが、治療としては一連のものであり、患者さんの受けている医療に差はない」と指摘。更に、今回の診療報酬改定については、「岸田政権の重要政策である『賃上げ』を、医療・介護就業者数約900万人に対し、公定価格の引き上げを通じていかに成し遂げていくかという大きなチャレンジである。物価高騰への対応を含め、医療・介護業界が一体・一丸となって政権の方向性に進んでいく重要な年であり、他団体とも、診療報酬改定の大きな方向性において、声を一つにして歩んでいくべき」との考えを示した。また、財政審の場で、特定の領域には賃上げへの対応は必要ないといった議論があったことに対しては、到底、受け入れがたいものであり、大変残念であるとした。

 「この3年間の医療関係の特例的な支援」については、特例的な支援は、不眠不休で未知のウイルスに立ち向かい、通常の診療時間外に発熱外来やワクチン接種、自宅・宿泊療養者の健康観察などを行った医療従事者への支援であると説明。「国民と一体となって対応してきたにもかかわらず、その支援の返還を求めるのは、全力を尽くした医療従事者に対してあまりにもひどい意見である」と強く抗議した。

 「医療法人における直近の経営・財務状況(財務省機動的調査結果)」については、経常利益率が15%以上の医療法人には自由診療を行っている医療法人なども含まれている可能性があるとし、「主に自由診療を実施する医療法人の経営利益を含んだ数字を基に公定価格である診療報酬の議論を行うことは不適格」と指摘。「マイナスの程度によっては、最頻値の集団である経常利益率0~5%の医療法人が赤字に陥り、地域医療の崩壊を招きかねないことを想定しているのか」と疑問を呈し、丁寧な精査を求めた。

 「診療所数の推移」に関して、2000~2008年度にかけて診療所数が増加していることに着目していることに対しては、高齢者の増加に応じて対応した結果であり、その後、診療所数の伸びが鈍化しているのは、地域に密着した医療が提供されている証で、そうした診療所が地域包括ケアを推進していると強調。診療所のみによって支えられている地域も多くある中で、そういった医療機関の閉院が相次いで発生していることに懸念を示した。

 更に、診療所の偏在是正のために地域別単価を導入すべきとしていることに関しては、地域別単価については解決済みであると門前払いした上で、診療報酬上の地域ごとの違いは、医業経費における地域差を配慮した入院基本料の地域加算や、医療資源が少ない地域の施設基準を緩和するなどの配慮等、既に対応できるものは実施されていると説明。また、医療資源は都道府県ごとで異なるが、国民皆保険制度の下、平等性を担保する観点から、診療報酬は全国一律の運営を行っており、点数単価や同じ医療技術の評価を変えることは診療報酬になじまないとした。

 「マイナ保険証の利用促進」については、「マイナ保険証は国民に義務化しているものではなく、取得は任意であり、利用促進のためには、国民への呼び掛けが最優先」と強調。また、衆議院予算委員会において、岸田文雄内閣総理大臣がマイナ保険証の利用率の減少について、「ひも付け誤り等に対して不安に感じていることが一つの原因であり、改めて国民の皆さんにマイナ保険証のメリットを丁寧に説明する必要がある」と述べていることにも触れ、「国民の皆さんが不安を感じておられるのが原因であり、医療機関に責任を押し付けるべきではない。低迷しているマイナ保険証の利用率に着目した評価設定は、見当違いも甚だしい」と批判した。

 更に、「リフィル処方箋」については、令和4年度診療報酬改定において解決済みの問題であるとの認識を示した上で、リフィル処方箋の応需実績は、患者の状態によって、医師による定期的な医学管理の下で利用可否を判断した結果であると説明。また、財政審が、リフィル処方箋の導入・活用促進による医療費効率化効果に関して、予算と決算で乖離があると指摘していることに対しては、「診療報酬の改定は、医療費に関する予算と決算の差異について、事細かに結果だけを取り上げて行われてきたわけではなく、医療費全体を見て、総合的に実施されてきたことである」とするとともに、「予算の執行状況でリフィル処方箋を推進しようとするのであれば、医療介護総合確保基金などの執行状況が悪かった場合などをまず先に、要件を緩和すべきである」と強調した。

 その上で、松本会長は、全てに反論していたらキリがないとし、今後については「今回取り上げた問題ばかりでなく、財政審の資料には多々問題があり、今後も中医協や社会保障審議会の医療部会、医療保険部会等を始めとした審議会等で日本医師会の意見を述べていきたい」として、その主張への理解と協力を求めた。

◆会見動画はこちらから(公益社団法人 日本医師会公式YouTubeチャンネル)

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