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令和6年(2024年)3月20日(水) / 日医ニュース

「産婦人科・小児科・精神科の顔の見える有機的な連携」をテーマに開催

「産婦人科・小児科・精神科の顔の見える有機的な連携」をテーマに開催

「産婦人科・小児科・精神科の顔の見える有機的な連携」をテーマに開催

 令和5年度母子保健講習会が2月18日、「産婦人科・小児科・精神科の顔の見える有機的な連携」をテーマとして日本医師会館大講堂で開催され、妊産婦のメンタルヘルスに関するスクリーニングや支援のあり方についての取り組みなどが語られた。

 濵口欣也常任理事の司会で開会。冒頭、ビデオメッセージであいさつした松本吉郎会長は、令和6年能登半島地震の被災者にお見舞いを述べるとともに、特に妊産婦、乳幼児に対しては、健康管理に配慮した継続的な支援が必要であるとして、引き続きの支援を求めた。
 その上で、岸田政権が進める「異次元の少子化対策」によって出産育児一時金の増額や、伴走型相談支援、経済支援などが実現されたものの、必要な施策が必ずしも十分に進んでいない状況にあることから、少子化対策の推進や財源確保に向け「子ども・子育て支援金制度」の創設が示されたことを挙げ、日本医師会としても、母子保健の更なる改善に向けて今後も積極的な政策提言を行っていく意向を示した。
 シンポジウムでは、福田稠熊本県医師会長/日本医師会母子保健検討委員会委員長、三牧正和帝京大学医学部小児科講座主任教授/同委員会副委員長が座長を務め、5名の講師による講演が行われた。

(1)地域における連携体制の取り組み

 産婦人科の立場から講演した相良洋子日本産婦人科医会常務理事/さがらレディスクリニック院長は、『令和5年版自殺対策白書』を基に妊産婦死亡の原因として最も多いのは自殺であることを説明。その恐れのある人も数十倍いると予想されることから、妊産婦のメンタルヘルスに対する取り組みにおいては、自殺予防対策も重点的に考えていく必要があるとした。
 その上で、全ての産科医療機関で妊産婦のメンタルヘルススクリーニングを行うための研修として、日本産婦人科医会で「母と子のメンタルヘルスケア研修会」を実施していることを報告。「生活面も含めて多職種で妊産婦支援を行うべきだ」とするとともに、「その際には支援の内容をコーディネートしていく存在が重要である」と述べた。
 小児科の立場から講演した小枝達也国立成育医療研究センター副院長・小児内科系専門診療部統括部長は、多職種連携に当たってはカンファレンスで患者情報の共有を図るだけでなく、正式な診察の依頼をすることが大切だとし、その結果をフィードバックすべきだと強調。また、出産後に、育児中の孤立感などで受診が必要となる場合もあるとして、1カ月健診で経済的ゆとりや興味の創出、睡眠不足などについても確認可能な、保護者のメンタルヘルスに関する問診票を紹介した。
 加えて、「健やか子育てガイド」では、5歳までの健診において、生活習慣、メディアリテラシー、育てにくさなどを聞き取る問診票を掲載しているとして、その活用を求めた他、小児科医療機関は、各段階の健診において子どもの身体診察のみならず、保護者のメンタルヘルスの状況についても把握していく必要があるとした。
 精神科の立場から講演した菊地紗耶東北大学病院精神科医師は、周産期メンタルヘルスのケアにおいては、「産科小児科とのリエゾン・コンサルテーション等を行える総合病院・大学病院」と「主治医との信頼関係の強い精神科診療所・精神科病院」の両者の強みを生かして役割分担をすることが望ましいと説明。その好事例として、ソーシャルワーカーをコーディネーターとし、基幹病院を軸にした精神科・産科・小児科の医療機関等が連携を図る体制を挙げた。
 その上で、スクリーニングで陽性となった場合、すぐ精神科へ紹介するのではなく、心理支援に特化した助産師を中心にケアの体制を整備することも可能だとして、東北大学病院の助産師による精神支援外来の取り組みを紹介。更に、専門外来として設置した周産期メンタルケア外来では、妊産婦のメンタルヘルスだけでなく、夫婦関係や家族関係、養育環境や子どもの成長にも目を向けた予防的介入の視点に立って治療を行っているとした。

(2)母子保健情報のデジタル化

 小林徹国立成育医療研究センター臨床研究センターデータサイエンス部門長は、母子保健情報のデジタル化のボトルネックとして、妊婦健診と医療(自費診療・保険診療)とが混在していることや、乳幼児健診は自治体ごとのバリエーションが豊富であることなどを指摘。近年では健診や予防接種の情報を入力するに当たり、母子手帳アプリが活用され始めているとし、自治体と協力して行ったPHR実装調査の結果を報告した。
 また、母子保健情報利活用に関するサンプル調査では、母子保健情報をデジタル化したメリットとして、①自治体と医療機関の間で母子保健関連情報が共有されることによる支援の質向上②個別乳幼児健診・妊婦健診の遅れや未受診の検知③里帰り出産・転出入による母子保健情報連携の円滑化―などが挙げられる一方、デメリットとしては、個人情報の漏洩(ろうえい)とデジタル化に対応できない利用者への対応があったとした。

(3)最近の母子保健行政の動き

 木庭愛こども家庭庁成育局母子保健課長は、まず、令和5年4月に発足したこども家庭庁と、同年施行されたこども基本法などについて概説。産後ケア事業に関しては、「今、国会に提出している子ども・子育て支援法一括法案の中で、産後ケア事業を地域子ども・子育て支援法支援事業に位置付け、都道府県市町村の役割を明確化して提供体制の整備を図るとされており、産後ケア事業の量的な拡充だけでなく、メンタルヘルスへの対応、ケアの質の向上なども期待される」と述べた。
 また、令和5年度の補正予算で、妊産婦のメンタルヘルスに関するネットワーク構築事業を盛り込んだことに触れ、「本事業は都道府県において、妊産婦のメンタルヘルスの診療に係る中核的な精神科医療機関(拠点病院)等に、妊産婦等のメンタルヘルス支援に関するコーディネーターを配置し、各精神科医療機関や産婦人科医療機関、地域の関係機関と連携したネットワーク体制の構築を図るものである」と説明した。
 その後の討議では、シンポジストと参加者との間で、個人情報の扱いや精神科との連携の仕方などをめぐり活発な質疑応答が行われ、講習会は終了となった。

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