日医ニュース
日医ニュース目次 第1193号(平成23年5月20日)

第124回日本医師会定例代議員会
東日本大震災被災地の医療復興に向け総力を結集することで一致

 第124回日本医師会定例代議員会が4月24日,日医会館大講堂で開催された.
 当日は,平成23年度日本医師会予算の件など,4議案の審議が行われ,いずれも可決成立したほか,東日本大震災に対する日医の対応など,代議員からの質問・要望に対して,執行部から回答を行った(関連記事123,詳細は『日医雑誌』6月号別冊参照).

第124回日本医師会定例代議員会/東日本大震災被災地の医療復興に向け総力を結集することで一致(写真) 午前九時三十分,開会に先立ち矢崎義雄第二十八回日本医学会総会会頭らが登壇し,東日本大震災の影響を考慮して,四月に開催を予定していた総会のあり方を大幅に見直すことになったことや,今後の方針等について,説明を行った.
 引き続き,石川育成代議員会議長の開会宣言・あいさつおよび議席の指定,定足数の確認,議事録署名人二名の指名と議事運営委員会委員八名の紹介が行われた後,東日本大震災で亡くなられた方々に黙祷が捧げられた.
 続いて,原中勝征会長があいさつ別記事参照.その後,横倉義武副会長が日医の会務の概要を報告し,議事に移った.
 まず,第一号議案「平成二十二年度日本医師会会費減免申請の件」については,羽生田俊副会長が提案理由を説明.表決が行われ,賛成多数で可決した.
 次に,第二号議案「平成二十三年度日本医師会事業計画の件」,第三号議案「平成二十三年度日本医師会予算の件」,第四号議案「日本医師会会費賦課徴収の件」が一括上程され,二号議案については横倉副会長が,三,四号議案については羽生田副会長が提案理由を説明.さらに,三宅直樹財務委員長からは四月二十三日に開催された財務委員会での審議結果が報告され,いずれも賛成多数で可決した.
 その後,代表質問と個人質問が行われた.

代表質問

 (一)東日本大震災…復興 未来に向けて 前へ 前向きに
 谷雄三代議員(東北ブロック)の東日本大震災からの復興に向けての質問に対しては,原中会長が回答した.
 同会長は,震災直後の対応の一つとして,日医より,政府に緊急通行車両確認標章の交付を要請し,優先的に給油が行われるような方策を講じたことを報告.今後については,医療関係者のライフラインをつなぐ手段に関しても最優先に取り扱うよう求めていくとした.
 また,今回の震災に関しては,福島第一原発事故の問題が解決されない間は,きちんとした対策が練られないだろうとの考えを示すとともに,福島第一原発事故について,より正確な情報を得るために,国会議員や専門家を招聘し情報提供を受けたことを紹介した.
 今後については,日医としての意見をまとめ,政府に対して,声明を出す意向を示した.
 (二)認知症対策および認知症サポート医に対する日医の対応
 小林博代議員(中部ブロック)の認知症対策および認知症サポート医に対する日医の対応についての質問に,横倉副会長は,まず,認知症サポート医には,地域に密着した連携体制の核としての役割が期待されているとの認識を示した.また,認知症サポート医に係る全国的実態調査については,すでに厚生労働省等において実施され,本会にも報告が行われているとした.
 認知症対応の新たな会内委員会の設置に関しては,「今後の推移を見ながら検討したい」と述べた.
 認知症サポート医の全国連絡組織については,認知症サポート医の先生方を一層つないでいくような試みとして,国立長寿医療研究センターにおいて,「認知症サポート医ネットワーク」を構築中であることを紹介.さらに,日医としても各都道府県医師会と連絡を密に協力しながら,しっかりと連絡組織的なものを考えていく必要があるとした.
 (三)医師の善意がこれ以上廃れないようにするための提言
 加藤智栄代議員(中国四国ブロック)の,医師の善意がこれ以上廃れないようにするための提言に対して,羽生田副会長は,二次救急病院が減少しつつある現状は地域の救急医療の崩壊を招きかねないとして,中小病院が二次救急に参加出来るよう,二次救急全体を押し上げるような政策が必要との考えを示すとともに,日医からの要望で,昨年度,民間の二次救急病院への特別交付税措置が創設されたことに触れ,その活用を要請した.
 救急車の有料化については,患者・家族により多くの負担を求めることには慎重であるべきとしたうえで,日医としては,救急サービスの有料化ではなく,「救急相談,初期救急,二次救急などの充実により,医師や地域の医療機関の善意が報われるような救急医療体制づくりを求めていきたい」と述べた.
 また,いわゆる医療安全調査委員会の設置については,昨年十二月に,会内に「医療事故調査に関する検討委員会」を立ち上げ,近々,「骨子」が示される見通しであると説明.委員会からの報告書に多くの賛同が得られれば,医師会のみならず,医療界全体の共通の目標に据えて進んでいきたいとの考えを示した.
 (四)情報化関連の事業における日医の方針について
 富田雄二代議員(九州ブロック)の(1)ORCAプロジェクトの費用(2)日医認証局(3)テレビ会議システムの活用についての質問には,横倉副会長が回答した.
 (1)については,「日医の戦略は,日医標準レセプトソフトを普及させ,国やメーカーに対して一定の主導権を確保するというもので,一定の成果を挙げてきた」と述べ,今後は日レセユーザーのみがORCA事業のメリットを享受するのではなく,全会員に資する事業となるよう,会内委員会にて経費などの詳細な費用分析を依頼しており,その検討結果を踏まえ,今後の結論を得たいとした.
 (2)については,今後,医療の情報化において不可欠な「鍵」となり,医療のIT化において一定のプレゼンスを発揮出来ることは間違いないが,議論の多いところであるので委員会等でも整理するとともに,日本歯科医師会や日本薬剤師会と共同で運営することも協議していると報告した.
 (3)については,今後もテレビ会議システムの利用を積極的に推進していく考えを示した.
 (五)国民とともに皆保険制度を守り,医療への営利企業参入を阻止すべき
 国民と共に皆保険制度を守り,医療への営利企業の参入を阻止すべきとの茂松茂人代議員(近畿ブロック)からの要望には,中川俊男副会長が,まず,政府が閣議決定した「規制・制度改革に係る方針」について,「多くの被災地では今も十分な医療を受けることが出来ないなかで,国民皆保険制度を揺るがす方針を打ち出しており,まさに言語道断だ」と指摘.特に,「営利法人の役員が医療法人の役員になれるようにすること」「一般社団法人・一般財団法人の医療への参入」を問題視し,これらのことが営利企業の医療への参入の突破口とならぬよう,法律や規定の堅持と強化を厚労省に求めていくとした.
 そのうえで,社会的共通資本としての医療への営利企業の参入を阻止することは,日本の復興の大きな要のひとつであり,まさに復興対策として,全精力を挙げて取り組む意向を表明.また,復興の混乱に紛れて,さまざまな問題のある政策が水面下で密かに進められている恐れがあるとして,注意を呼び掛けた.
 (六)医師の養成制度と医師供給体制について
 畑俊一代議員(北海道ブロック)の(1)適正な医師数の基準(2)出身大学のある都道府県での研修について(3)地域偏在,診療科偏在の解消に向けての女性医師の現状と対策に関する質問には,羽生田副会長が回答した.
 (1)については,勤務医の過重労働を緩和し,あるべき医療を提供していくための必要医師数について,今後継続的に検討し,見直していくと説明.
 (2)に関しては,「医師養成についての日本医師会の提案」について,各都道府県医師会等の意見を基に見直しを行い,「初期臨床研修制度は,出身大学に軸足を置きつつも,研修希望者の意向を勘案し,出身大学の都道府県以外も含めて研修先を決定する」と変更したことを報告した.
 (3)については,女性医師の診療科別医師数比率が,外科系や救急医療などの診療科では低い傾向にあるが,医師不足や偏在は,長年の医療費抑制策が主因であるため,これからも医師の勤務環境の改善に全力で取り組んでいくとした.
 (七)医療保険・介護保険同時改定に対する基本方針と対策について,(八)次期診療報酬改定に向けて
 道永麻里代議員(東京ブロック)および金井忠男代議員(関東甲信越ブロック)の,次期診療報酬・介護報酬同時改定に関する質問に対しては,原中会長と中川副会長が回答した.
 道永代議員の質問に対し,原中会長は,次期改定では地域医療を守る中小病院,診療所の診療報酬を上げることが一番重要であるとしながらも,まずは東日本大震災の被災地の医療環境の復興に向けて,政府も日医もすべての力を投入すべきであると主張.各種の実態調査等に力を削ぐべきではないとして,平成二十四年度の診療報酬・介護報酬の同時改定の見送りを政府に提案したいとの考えを示した.
 次いで,金井代議員への答弁に立った中川副会長は,まず,前回の診療報酬改定を振り返って,十年ぶりのプラス改定ではあったものの,全く承服出来る内容ではなく,不十分な改定であったと総括.そのため,次回改定では中小病院,診療所に手厚く配分するとともに,救急,急性期を始め,慢性期医療・在宅医療,外来医療まで,充実した医療を提供出来るように大幅な引き上げを求めるべく,戦略の具体化を進めてきたが,今回の震災の影響を考えれば,一刻も早く被災地の医療を再生させ,国民皆保険制度のフリーアクセスを取り戻すことこそが日医の使命であると考え,今回同時改定見送りの提案をすることとしたと説明.
 具体的には,(1)通常ではない処方環境で得た不正確なデータは,医療現場を苦しめることになるため,医療経済実態調査,薬価調査・保険医療材料価格調査の中止を申し入れる(2)改定の年に見直される介護保険料については,報酬改定を見送っても決定出来るよう必要なことは行う(3)不合理な診療報酬については,留意事項通知や施設基準要件の見直しなどを強く求めていく―とした.
 同副会長は,「大変つらい状況にある医療機関に一層の我慢をお願いすることは,心から申し訳ない」としたうえで,「日本の医療界を代表する日医として,これが現時点で取るべき道であると信じている」と述べ,理解と支援を求めた.
 なお,個人質問に移る前に,金井代議員が十二名の代議員と共に診療報酬・介護報酬の同時改定を行わないこと等を含めた「東日本大震災に関する決議(案)」を提出.正式な議案として,代議員会で議論が行われたが,さまざまな意見が出されたため,決議案は取り下げとなり,同時改定への対応は執行部に一任することとなった.

個人質問

 (一)日本医師会は国民のために具体的な行動を
 岩動孝代議員(岩手県)の,東日本大震災で被災した会員や国民への日医の対応に関する質問には,今村聡常任理事が回答した.
 まず,本人や医療機関の被災により診療出来なくなった会員について,当面二十三年度一年間を目途として日医会費の減免措置を講じる方向で検討中であり,その後の取り扱いは,復興状況等により検討したいとの考えを示した.
 また,日医は国民の健康,医療を守ることでその存在感を高め,医療という社会的インフラを再構築することで復興に貢献しなければならないと主張.国民のための具体的対応として,JMAT(日本医師会災害医療チーム)の活動や日医を中心に官民および国を超えた協力を得て実施された,被災各県への医薬品の搬送等を挙げた.
 被災会員の医療活動再開支援については,特別交付税等の財政措置,無利子・低利子による公的融資,優遇税制,債務免除・軽減等を求めるとともに,医師や職員の流出を防ぐため,一時的に職員を雇用する医療機関やマッチング・システムヘの支援等も要求していきたいとして,今後の支援継続を約束した.
 (二)被災地の早期復興のために
 嘉数研二代議員(宮城県)の被災地の早期復興に向けた要望に関しては,葉梨之紀常任理事が回答.
 同常任理事は,廃院・閉院もやむなしとする医療機関の援助については,債務の免除,清算手続きの柔軟化を求め,医師や看護職員,事務職員等の再就業支援を行うとともに,被災地での診療所や病院の開設に関して支援策を要求するとした.
 地域医療再生臨時特例交付金等からの医療復興支援金の捻出については,「地域医療再生基金だけではなく,中長期的な視点に立った,大規模な予算措置を求めていく」と強調.日医が地域医療再生基金の被災地復興のための活用を厚労省に求めた結果,四月十五日付の同省通知により,被災三県への交付額は上限である百二十億円まで確保され,提出期限も十一月十六日までと六カ月延長されたことを報告した.
 また,医師会立看護学校等の存続のために,再建,修繕費,損壊した教材の購入費などについても予算要望し,福祉医療機構に,医師会立看護学校等の建設資金を災害復旧資金の対象とするよう求めるとの姿勢を示した.
 (三)東日本大震災とそれに伴う原発事故に係る医療に関する要望
 木田光一代議員(福島県)の東日本大震災とそれに伴う原発事故に係る医療に関する要望については,保坂シゲリ常任理事が回答.
 福島第一原発事故による放射線被害対策のための事業休止に対する休業補償については,漁業や農業と同様に補償の対象とすべきとの観点から,粘り強く交渉しているとし,「避難所等において無償で診療に当たっている医師や,共同で仮設診療所を立ち上げている医師への支援も検討していく」と述べた.
 地域医療再生基金などの補助金については,阪神淡路大震災の時に公的病院などに認められた建物再建への補助金を,すべての民間医療機関に拡大することなどを求めていくとの考えを示すとともに,税金対策の支援についても,既に阪神淡路大震災時の特例措置以上の措置の実現を政府に強く要望していることを説明.平成二十二年度の納税の考慮等については,今後の税制改正で実現の見通しであるとし,「日医として,被災された医療機関や医療者への支援を通じて,被災されたすべての方々を,力の限り支えていく」と強調した.
 続いて,嘉数代議員と木田代議員からの特別融資と雇用調整助成金に関する質問について,三上裕司常任理事が回答.
 福祉医療機構が,三月十五日に発表した「災害復旧資金の実施」は,内容が不十分であったことから,拡充を求める要望書を提出したことを明らかにしたうえで,既存の借入について返済期間延長および低利子の借り換えについての交渉を進めているとした.
 長期運転資金については,十年の償還が認められる見通しだとする一方,無利子,無担保についての要望は実現困難とし,「限りなく低率の利子での融資が可能となるよう,また,既存借入の残存担保価値にかかわらず,担保として認めるよう強く申し入れている」と説明.
 債務免除については,福祉医療機構の裁量を超えた問題であることから,国会議員等に働き掛けていくとした.
 雇用調整助成金については,震災に伴う特例として,対象地域に所在する事業所の場合は,最近一カ月の生産量,売上高等が,その直前の一カ月または前年同期と比べ五%以上減少していれば対象となること,本来は事前に届け出る必要のある計画届について,六月十六日まではハローワークへの事後提出が認められることなどを紹介した.
 (四)日本医師会災害医療チーム(JMAT)の都道府県チーム派遣について
 佐藤充男代議員(島根県)の,JMATの都道府県チーム派遣についての要望には,石井正三常任理事が回答.
 同常任理事は,まず,全国からの協力に謝意を示したうえで,平成二十二年三月の「日本医師会救急災害医療対策委員会報告書」で提案されたばかりのJMATが,今回の震災で被災された方々に対する健康のサポート体制をいち早く提供し,十分に役目を果たすことが出来たと総括.
 活動を妨げる問題が生じた要因は,日医が政府の中央防災会議に参画出来ていなかったことにあるとして,今回の実績を基に実現させたいとし,「日医救急災害医療対策委員会でもJMATの課題を検証して,今後の方向付けをしていく」と述べた.
 なお,災害救助法におけるJMATの費用の取り扱いについては,被災県医師会を窓口として,県の対策本部に人件費等の費用を請求する方向で厚労省と既に協議していることを説明した.
 (五)JMATの活動について
 久野梧郎代議員(愛媛県)のJMATの活動に関する質問に対しては,石川広己常任理事が回答.
 同常任理事は,JMATに係る傷害保険について,三月十五日開催の第十三回理事会で,チームの構成員すべてに保険を掛けることが承認され,すべての医師が一つになり,被災者のために医療を行うとの趣旨で,会員・非会員も含めての活動となったと説明.派遣された医師千二百四十四名のうち,会員七百三十七名,非会員五百七名であり,非会員は,会員である病院長からの要請を受けての派遣が中心との認識を示した.さらに,傷害保険の費用については,日医が全額負担しており,一人当たり三千円で,現在三千五百四十五名分の契約を行っていると説明した.
 同常任理事は,JMATの派遣についても,情報の共有が必要であり,連日「情報提供」に努めていると説明.今回,浮き彫りとなった多くの課題については,日医救急災害医療対策委員会で検証し,対応していきたいとした.
 (六)診療報酬・介護報酬同時改定について
 野田剛稔代議員(長崎県)の診療報酬・介護報酬同時改定に対する日医の見解を問う質問には,三上常任理事が,代表質問での原中会長,中川副会長からの「改定見送りの方針」の答弁の後,代議員から提出された決議案に関連する議論の最中であることから,結論は決議案の議論に委ねると回答.
 医療政策の継続的な広報については,厚生労働記者会,厚生日比谷クラブ,日医プレスクラブ加盟社を対象として定例記者会見をほぼ毎週開催し,担当役員が日医の活動や医療政策への提言を解説していると説明.毎回二十〜三十社ほどのメディアが取材に訪れ,報道を通じて日医の考えが国民に届けられているだけでなく,日医からも,「日医白クマ通信」「日医ニュース」への掲載,ホームページメンバーズルーム上での記者会見動画の配信を行っているとした.
 そのうえで,同常任理事は,「医療提供者を代表し,国民皆保険制度を擁護する立場から,活動を強化し,国民に対する説明責任を果たしていきたい」と述べた.
 (七)地域医療支援病院について
 中田康信代議員(北海道)の地域医療支援病院に関する質問については,高杉敬久常任理事が回答.
 同常任理事は,「地域医療支援病院には,地域連携を点ではなく面でとらえる考え方を徹底しなければならない」と述べるとともに,(1)国公立や公的病院等は,紹介外来制を原則とし,地域の医療機関との役割分担を明確にすること(2)民間の地域医療支援病院には,特定のグループによるネットワークではなく,地域全体を視野に入れた,紹介・逆紹介―が求められるとした.
 そのうえで,「日医としては,『地域医療支援病院の新規承認』『既に承認を受けた病院のチェック機能の強化』を主張していきたい」と述べた.
 さらに,同常任理事は,救急患者の取り扱いも含めた見直しや診療報酬のあり方など,地域医療支援病院のあるべき姿について,社会保障審議会医療部会などの公の場で議論するよう求めており,その際には,各都道府県がそれぞれの地域特性に応じた,独自の承認基準を設けられるよう提案することも意義があるとの考えを示した.
 (八)医師養成と初期臨床研修制度の見直し案について
 紺谷一浩代議員(石川県)からの日医が一月十九日に公表した「医師養成についての日本医師会の提案」に対する以下の三つ((1)医学教育におけるリベラルアーツの重要性(2)初期臨床研修を出身大学の存在する都道府県で行うことの問題点(3)会内委員会における議論との整合性)の指摘に対しては,三上常任理事が回答を行った.
 (1)については,リベラルアーツを学ぶことの重要性に鑑み,当初の案を「一般教養科目のあり方を見直し,大学六年間を通じたリベラルアーツ教育により,医師としての資質を涵養する」という内容の教育カリキュラムに変更したことを報告.
 また,(2)に関しても,研修希望者は,母校に軸足を置きつつも,一定の地域に縛られず,希望する研修機関で体系的な研修を受けられる内容の提案に変更したとした.
 (3)については,当初の案は,これまでのグランドデザインや日医総研の案を基に作成していたため,会内委員会での議論と整合性が取れていなかったと説明.「公表後に,都道府県医師会,四病院団体協議会等の意見を反映して見直しを行い,改めて,都道府県医師会に配布したので,意見を聞かせて欲しい」と述べた.
 (九)患者窓口負担の軽減について
 松家治道代議員(北海道)からの経済不況などによる現在の受診抑制の改善のため,日医のリーダーシップの下,患者窓口負担を軽減すべきとの提案に対しては,鈴木邦彦常任理事が回答した.
 同常任理事は,わが国の医療の優れた点が国民に実感されない理由の一つとして,自己負担が先進諸国と比較して極めて高い点があることを挙げ,そのことがわが国の医療の大きな課題となっていると説明.その改善策として,日医では昨年七月に発表した,今年度の予算要望のなかで,患者負担軽減のための財源確保を掲げているとした.
 そのうえで,同常任理事は,「今回の東日本大震災と原発事故によりさらなる悪化が懸念される経済状況のなかでも,国民医療を守るため,財源を確保したうえで医療をセーフティーネットの中核として充実させることを要望していかなくてはならない」と強調し,支援と協力を求めた.


 なお,審議時間が大幅に超過したため,七つの個人質問については,石川代議員会議長名で都道府県医師会長に書面を送付するとともに,『日医雑誌』六月号別冊で誌上回答することになった.
・今後の産業保健関係事業について(寺下浩彰代議員・和歌山県)
・TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について(澤井博司代議員・神奈川県)
・医事法制や医療保険制度等教育の必須化について(竹村恵史代議員・奈良県)
・消費税についてのお願い(杉田洋一代議員・愛知県)
・救急医療での精神科医の融通の利く関与体制の構築を望む(小池哲雄代議員・新潟県)
・柔道整復師の療養費受療委任払いの廃止について(高橋洋代議員・熊本県)
・診療報酬適正化連絡協議会の設置について(田中義代議員・群馬県)

定例総会

 代議員会終了後,第六十九回日本医師会定例総会が開催された.
 原中会長が議長となって,(一)庶務及び会計の概況に関する事項,(二)事業の概況に関する事項,(三)代議員会において議決した主要な決議に関する事項─を報告し,終了した.

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