医療安全推進者は、各医療機関等の組織的安全管理体制の確立を推進することを職務とします。医療安全推進者の職務は、患者の安全を確保する体制の確立と医療機関におけるリスクマネジメントが基本となります。
そして、具体的な職務内容は、大きく次の四点に分けられます。
(1)患者の安全対策プランの策定と推進
医療安全の最大の目的は、患者の安全・安心を確保することにあります。また、同時に医療従事者の安全も守り、医療機関に与える損失を最小限に抑えることが必要です。組織的かつシステム的に事故の予防に取り組み、安全性を向上させるとともに、紛争・訴訟の防止と対応を確立することが中心となります。
そこで、当該医療機関の特性に応じ、事故の発生を未然に防ぐ組織的な安全対策を具体的に組み立て、これを推進する実務を担います。
(2)医療機関におけるリスクマネジメントの実行
不幸にして事故が発生した場合、これが紛争や訴訟に発展することのないよう、医療機関側には適切かつ慎重な対応が求められます。
医療安全推進者は、例えば組織内における「リスクマネジメント委員会」等のキーパーソンとして、弁護士や保険会社等の専門家のサポートを得つつ、紛争・訴訟の予防と対応の牽引者としての役割を担います。
(3)医療機関の説明責任に対応するためのコーディネート
医療に係る紛争・訴訟に際しては、医療機関から患者への診療情報の提供と説明が、適正なプロセスを経て行われることが肝要です。
すなわち、医療機関のアカウンタビリティ(説明責任)を適切に行うことが必要となっています。
そこで、紛争・訴訟に大きな影響を及ぼす診療情報の提供に際して、これが適切に実施されるよう、患者と医療機関との関係を円滑に保つためのコーディネーターとしての役割を担います。
(4)医療安全管理にかかるモニタリング
個々の医療機関が独自に医療安全管理体制を推進しても、その成果の客観的な監視・評価なくしては体制のさらなる強化は望めません。
医療安全推進者は、企業における「監査役」的な客観的な立場から、医療機関の安全管理についてのモニタリングを行い、その結果を的確に把握し、当該医療機関のトップマネジメントに改善策を提言する役割を担います。
以上のような役割は、相当な知識や見識なくしては果たせず、したがって医療安全推進者には幅広い視点からのカリキュラムの提供が必要と考えられます。本講座はこうしたカリキュラムの提供を図るものです。